軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

酒池肉林、いえ、肉肉林です!

野営車両(モーターハウス) のキッチンに置いておいたお肉は、程よい温度になっていた。ドリップも出てはいないし、良い状態だと思う。

さっそくご飯の準備に取り掛かるわけなんだけど、肝心なことをみんなに聞くのを忘れてたよ!

良いお肉は手に入ったんだけど、そのお肉はどう焼きましょうかね? リスクはあるけど早く食べられる方を選ぶか、時間はかかるけど確実な方法をとるか……。

……ふむ……ここはリーダーに決めてもらいましょうか!

「……ヴィルさん。お肉なんですが、高温で短時間と低温でじっくり……どっちの加熱方法がお好きですか?」

「その焼き方で、何か違いが出るのか?」

「高温で焼く方法だと、短時間で済むのですぐ食べられます。ただ、加減を間違えるとお肉がパサつきやすいです。低温で火を通す方法だと、時間がかかりますがジューシーで美味しいお肉になりますよ」

「せっかくの極上肉だ。多少時間はかかっても、少しでも美味い方が良いな!」

うん。流石は 食いしん坊仲間(たましいのきょうだい) ! 少しでも美味しく食べる方法を選ぶんじゃないかな、って思ったよ!

とはいえ、ある程度は妥協しつつ、美味しさと速さを両立できるよう考えていこうと思います。

まずやることは、程よく蕩けた脂で艶めかしく照り輝いている塊肉の先細りしている両端を大胆に切り落とすことかな。

調理するお肉に太い細いとバラツキがあると、火が均一に通らないんだよね……。

その後、下味が染みやすいようにザクザクとフォークを突き刺していく。この作業を私の元住んでいたアパートの台所でやると、ドスドスと台所が揺れたもんだけど、 野営車両(モーターハウス) の台所でやると一向に揺れる気配がない。

建物でやると揺れるのに、車でやると揺れないとはこれ如何に……??

なお、何度も何度も物言わぬ肉塊に鋭利なモノを執拗に滅多刺しする私の横では、ヴィルさんが「ミニトライデントで攻撃してるみたいだな」と笑いながら玉ねぎの皮を剥いてくれておりますよ。

あー。この塊肉相手なら、『かいしんのいちげき』を連発できるよかんがありますわー。

あ。そろそろ玉ねぎが終わるかな? そしたら、ジャガイモ洗ってもらおう……!

「……で、まんべんなく穴が空いたら、塩・胡椒をすり込んでちょっと置いておきます」

「すぐに焼くわけではないのか……」

「多分、ある程度味を染み込ませるのに必要なんだと思います。……えーと……お肉休ませてる間に野菜の処理しちゃうか」

「リン、この芋を洗えばいいのか?」

「お願いします! 洗ったら 私(こっち) に回してください。皮剥いちゃうんで」

たっぷりめに塩と胡椒をすり込んだ塊肉をバットに乗せて、ちょっと脇によけておく。下味を付けてる間に、付け合わせになる予定のジャガイモとか玉ねぎとかの処理をしちゃおうかな。

今日のご飯はローストビーフとステーキ……主食は白いご飯とフライパンちぎりパンにしようと思うよ!

ローストビーフはフライパンで焼いてからオーブンで追加加熱、ステーキはフライパンオンリーにすれば、余ったコンロでパンが作れるな……。

段取りを考えながら芋の皮を剥いてるんだけど、野菜の皮剥きとか、海老の殻剥きとか、無心になれるから好きなんだよね。ただひたすら目の前のものと向き合う時間って、大事よな。

「この芋はどんな料理になるんだ?」

「お肉と一緒に焼いちゃう予定です。今日は多分お肉の面倒見るので手いっぱいで、付け合わせまでは手が回せないと思うんです……すみません」

「つまり、今日は肉がメインになるわけか……! 最高じゃないか! 誰も文句は言わないさ!」

「ええ、肉です! 今日は肉祭りです!!」

下味をつけられてる最中の塊肉と、出番を待っている厚切り肉に視線を走らせたヴィルさんが、それはもう嬉しそうに拳を握り締めた。

ええ。今日のご飯は肉メインですとも! 後口をさっぱりさせるように野菜も出すつもりだけど、せいぜいスライストマトとかオニオンスライス程度になると思うな……。

皮を剥いてひと口大に切ったジャガイモを水に浸けておいて、玉ねぎもスライスして……。

「……さて……お楽しみの時間ですよ!!」

「おお! ついに焼くのか!!」

「楽しみですねぇ。私はレアめが好きですよ」

「あ、セノンさん。お帰りなさい! 魔物とかは大丈夫でしたか?」

「セノン……帰ってきたのか……」

「お若い方々の邪魔をしてしまってすみませんねぇ。車の周囲には特に危険はなさそうだったので、早々に引き上げてきましたよ」

オーブンの予熱を始めつつ、放置しておいた塊肉を調理台にドンと乗せる。途端にヴィルさんの顔がパァっと輝いた。うむ。実に肉食系男子らしい反応ですな。

それと時を同じくして、何とも涼やかな声がシレっと焼き加減の希望を述べる声が耳に飛び込んできた。

振り返ってみれば、片手に杖を携えたセノンさんが 野営車両(モーターハウス) のステップを登ってくるところだった。怪我もないどころか服も汚れてすらいないし、周囲は安全だったんだろうなぁ。

無事のお帰りで何よりです!

なんか男同士でメンチ切り合ってる気もするけど、個人的にはコロッケが好きですよ、ええ。

じゃれ合ってる男性陣は放っておいて、塊のお肉を焼いていきましょうかね! ヒュー! エキサイティン!!

熱したフライパンに切り取っておいた脂身を入れて油を出したら、まずは端っこを焼いてしまいましょうか。

ジュワァァァァ!! と陽気に脂が跳ね踊り、フライパンに接する部分のお肉がきゅっと締まった。ぶわぁっと何とも香ばしい匂いが周囲に立ち込める。

流石にこのありがたい匂いと景気のいい音には、仲良く喧嘩していた男共も逆らえなかったようだ。そそくさと近づいてきたかと思うとフライパンの中を覗き込んでくる。

「…………58、59、60! 反対!」

「何数えてるんだ、リン?」

「今の段階ではあんまり中まで火を通したくないので、焼き色だけ付けてるんですよ。レシピを見ると1分っていうのが多いので、そうしてるんです」

1分ほど焼いたら今度は逆サイドの端も焼いていく。1分とは言ったものの、そこまで厳密にする必要はない……と、思う。

両端が焼けたら今度は肉塊を横たわらせて、焼けたら回転させ焼けたら回転させ……と、全体に焼き色だけを付けていくわけだ。

「あ、セノンさん。そこの天板取ってください! お肉載せます!」

「ああ、これですね。実に楽しみです」

テーブルの上に置きっぱなしだったクッキングシートを敷いた天板をセノンさんに取ってもらい、その上に焼いた塊肉とジャガイモを乗せたらそのままオーブンに突っ込んで、100度と低温でじっくりゆっくり火を通していく。

低温でやると、お肉がしっとりキメ細かく仕上がるんだよねぇ……!

せっかくなんで、この肉汁が滲んだフライパンで玉ねぎを炒めて、お醤油とレモン汁とを入れてソースにしちゃいましょうかね!

お肉をオーブンにお任せできたとはいえ、肉祭りの開催に向けてやることは山積みだ。

兎にも角にも、時間がかかることを今のうちに片づけていかなくちゃ……!

ブゥゥゥンと低音を響かせるオーブンに群がる男子二人を横目に、今日のお米を研ぐことにした。