軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

たべもののうらみ、こわい

アリアさんの索敵網に引っかかってきた魔力の淀みは五か所。

おそらくそのすべてを潰せばこの幻影と空間の歪みも消えるという仕掛けなのか、その五つの中にある『正解』を探し当てて潰せばいいのか……。

いったいどちらなのかはわからないけれど、今回の探索は調査のため……ということも踏まえて、一通り見ておいた方が良いだろうとなったのだ。

「……いずれにせよ、何らかの罠はあると考えた方が良いだろうな」

「え、そうなんですか? 本命じゃなかったら何もないものだと思ってましたけど……」

「仮にそこが囮の場所だったとして、敵の戦力を削ぐために何らかの手段を仕掛けておかない手はないだろう?」

「あぁー……確かに……」

なんてことのない様子で告げてくるヴィルさんの言葉に、背筋にゾクリと震えた。

……それって、これから行く先々には危険が待ち受けている、ってことじゃないですかヤダー! 一層気を引き締めていかないとヤバいヤツですよね??

……ってか、そういう事を顔色一つ変えずに話せるってことは、そうとう修羅場を潜ってきてるんだろうなぁ……。

改めて周囲を見回してみたけど、幻影とわかっていても脛の辺りをくすぐる草の感触や風が運んでくる土の匂いが妙にリアルに感じられる。魔法っていうのは凄いもんだねぇ。

本当に、こんな精巧なのを初見で見破れる 暴食の卓(ウチのパーティ) って、もしかしてもしかしなくても凄いパーティなんじゃ……!?

今まで見て見ぬふりをしてきた恐ろしい事実を改めて脳内で突き付けられている時、不意に足元からパキンと何かが弾けるような音がした。

「へぁっ!?」

「しまった! 思った以上に範囲が広かった!! リン、逃げろ!!」

「は、はい! …………って、壁、固っ!?」

それと同時に、薄い緑色をした半透明の壁のようなものが周囲を囲む。半径15m、高さは約10m程のドームのような空間に閉じ込められた、と言えば伝わるだろうか?

珍しく焦ったようなヴィルさんの声に思わず壁へと駆け寄ったが、一見薄くてすぐに壊れそうに見えるその壁は、私がどれだけ力いっぱい押したり叩いたりしても一向に揺らぐ様子がなかった。

うん。ここから出るのはちょっと無理そう、かな……? っていうか、別に壁から出ようとしなくても、 野営車両(モーターハウス) を起動させればよかったんだよね。

なまじ壁が透けていて外が見える分、ついつい壁の方へ足が向いちゃった……。

冷静に判断するっていう事も、鍛えていかないと……。

震える息を吐きながら 野営車両(モーターハウス) を起動させようとして……ガシャンガシャリと背後から聞こえる無機質な音に、ダメだと分かっていても背後を振り向いた。

「ろ、ろぼっと??」

「魔導絡繰りか! 面倒なモンを配備してくれたぜ!!」

地面の上で不気味に渦巻く光の中から現れたのは、サイズこそは小さいが――それでも、3m程はあるように見える――ロボットアニメもかくやというフォルムの自律機械だった。

白い機体が1体と、赤い機体が1体。赤い方はご丁寧にモノアイらしく、顔の部分に入った黒いスリットから禍々しい赤い光が一つ、覗いている。

慌てて私が車内に駆け込んだのと同時に、今まで私がいた場所をモノアイから照射されたレーザービームが黒く焼いた。

あ、あ、あ、あっぶねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!

いまの……いまの、なに!? 直撃したら死んじゃうんじゃないの!?!?

……ってか、 あの赤いの(アイツ) ……確実に 暴食の卓(ウチのパーティ) で一番 脆い部分(抜けそうなところ) ……私を狙ってきやがった……!!

キュインキュインと不穏な音を立てながら、赤い機体のモノアイはヴィルさん達には目もくれずに周囲を探るように回旋している。

野営車両(モーターハウス) の隠蔽効果で、私の姿が見えなくなったから探しているんだろう。

……っっ……! 諦めてはくれないのか……!

しつこく私が姿を消した周辺…… 野営車両(モーターハウス) を起動させた辺りに、赤いのがしつこくレーザーを打ち込んでくる。

「テメェ……よくもうちの飯番を狙ってくれたなぁぁぁっっっ!!!!!」

「後悔、させて……やるっっっ!!!!」

「死をもって償いやがれっっっ!!!」

「ヴィル、白い方は近接タイプです。外殻は固いですが、関節部分は柔いようですよ。エド、アリア、赤い方は遠距離型です。距離を取られる前に網で絡めて雷魔法を。我らが食卓の希望を蹂躙する者たちには、相応の報いを差し上げなければなりませんからねぇ」

とにかくこの場を離れなければ……と、慌てて運転席に駆け込もうとした時、聞こえてきたのはみんなの怒号だ。それと同時に、執拗に連射されていたレーザーが止まる。

見れば、抜き放った大剣を軽々と操り白いのの関節を狙って切り刻んでいく ヴィルさん(リーダー) を先頭に、赤いのの機体を糸で雁字搦めにするアリアさんと、その糸に伝わらせるように電撃のような魔法を叩き込むエドさんがいた。

そんな彼らに紅白の弱点を盛り込んだ適切な指示を飛ばすのは、にこやかに微笑んでいるセノンさんで……。

……ってか、ヴィルさんが振るってるその大剣……ツーハンデット仕様の剣ですよね? 何で片手で扱えてるんですかねぇ??

アリアさんも、いま赤いのを拘束してるその糸……『網』通り越して『繭』になってませんか?

エドさんも、雷の魔法……という事らしいですが、相当な高圧電流、ですよね……?? ……高圧・特別高圧電気取扱特別教育とかは大丈夫なんだろうか……??

激昂する3人とは裏腹に、セノンさんだけは語調も表情も柔らかいままなんだけど…………その全身から青白い怒気が見えるのは気のせいかなー??

結論:食べ物の恨みは怖い。

紅白のロボットコンビが瞬く間にスクラップになっていく過程を眺めつつ、私は 暴食の卓(ウチのパーティ) における食事の重要さを改めて痛感することになった……。