軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

コイバナ? なにそれ美味しい??

「え? は?? あ、いや……え? すき????」

「らぶ、てきな、アレ」

「らぶ!?!?!?」

ラブ……ラブって!!!

またいきなりハードル上がったな!!!

え、いや、うん。わかるよ? コイバナなんだろうなー、っていうのはわかってるよ?

でも、私相手にコイバナしなくてもいいんじゃないかな!?

食べ物の蘊蓄だったらいくらでも語れるけど、コイバナとか何を話していいのかもうさっぱりだよ!!!

包丁を持ったまま混乱する私の隣で、アリアさんもまた首を傾げていた。プラチナの長い睫毛に縁どられた氷色の瞳が、好奇心をたっぷりと滲ませてこちらを見つめている。

美人さんからの熱い視線は嬉しいけど、できれば別の話題で視線を浴びせられたかった……!

「ヴィル、きらい?」

「え? いやいやいや! あんないい人嫌えるわけないです! 好きか嫌いかなら、好きですよ!」

「……らぶ……?」

「らぶ、らぶ……? ……んんん~~…………ライク、ですかねぇ……?」

「らいく、かー」

いつまでも押し黙ったままの私に不安になったのか、こちらを窺うように質問を切り出してくるアリアさんに、私はもうドッキドキですよ!

いったい何を聞かれるのかという不安と恐怖にですけどね!!

『好き』か『嫌い』かで言ったらそりゃあもちろん『好き』ですよ? 誤解を恐れずにお伝えするなら、『大好き』と言ってもいいですよ?

ヴィルさん、めっちゃいい人だし、嫌えと言われてもそっちの方が難しいと思いまする。

でも、それが「恋愛感情か?」と聞かれたら、「違う」と答えるよ!

どっちかというと敬愛というか、友愛というか……仲間意識、的な感情が一番近いんじゃないかなぁ……。

うん。よし、解決!! 兎にも角にも鱗剥ぎの作業を再開しよう!

現在絶賛処理中の スズキ(コレ) を 生存戦略(サバイバル) さんで確認してみると、ちゃんと【食用】と表示されていた。

毒はないようだけど、生息場所によっては内臓がヤバいらしい……。

見た感じきれいな海だったけど、街の近くだったし、生活排水の処理具合がどのくらいかわからない以上、念のため内臓は捨ててしまおうそうしよう。

頭を落とすべく包丁を入れると、透明感のある白い身が現れた。鼻を近づけてみても、イヤな匂いはほとんどしない。新鮮な魚の匂いがする程度だ。

……うむ! これだけキレイなら、洗いでもイケそうだな……!

半身は洗いにすべく薄切りに。もう半身はソテーに仕上げるべく皮付きのままぶつ切りに。

物思いにふけりつつも手は止めない私に、アリアさんがものすごーく残念な子を見るような目を向けている。

そんなに!? そんなにですか!?!?

でも、そんな……周りの人と恋愛とか、そっち方面を考えたことないんだよ……。

いや、お年頃の女子なら自分を取り巻く人間関係の中で惚れたの腫れたのがあってしかるべきなんだろうけど、 恋愛に注ぎ込む(その) 分のリソースを趣味やら何やらに優先して注ぎ込んできた結果が 彼氏いない歴=年齢(コレ) だよ!!

だから、今まで人様のコイバナをむふむふしながら聞く機会はあったけど、私のコイバナをする機会なんてなかったというか、何というか……。

「コイバナ苦手ですみません……」

「リンは、そういう話、すきそうって思ってた」

「んんー……人様の恋模様はともかく、私自身は色恋沙汰はあんまり得意じゃなくて……すみません」

……ああ、そうだ。口にして気が付いた。

コイバナがどうこうとか、好きな人がどうこうとかいう以前に、『恋愛』そのものが私から一番遠い所にあるモノだったわ。

意識して近寄らないようにしてた界隈だわ。

氷水にそぎ切りにした身を放り込んで、チリチリと真っ白になった身が弾けてくるまでしばし放置する。

ぶつ切りの方は、温くならないように冷蔵庫に入れておこう。男性陣が戻ってきたら、切り身をソテーして、ナスとトマトも焼きはじめればいいか!

あとは、お米研いで、炊き始めておかないと……主食がなくなってしまう!

色と食となら食の方にリソースが割かれがちな私の脳ミソは、コイバナの最中でも淀みなく動き、目の前の食材を処理しては次の段取りを考え出す。

うん、そうだね。現実逃避とも言うね!!

何か嫌なことがあったときには、 ご飯のことを考え(こうやっ) て乗り切ってたんだ。

別に、アリアさんとのコイバナが嫌、っていうわけじゃなく、コイバナとか私のキャラじゃないから気恥ずかしいというか、何というか……。

それに今は、惚れた腫れたで心を動かしてる暇があったら、生活基盤をしっかりさせる方に注力したいのですよぅ……。

「……これは、手ごわい……」

「え? 何か言いました? ……それより私は、アリアさんとエドさんのなれそめが気になるんですが……?」

「えっ!? え、あ、うん……ふ、ふつう……」

「うそだっ!! これはちょっと洗いざらい喋ってもらわないと……!」

深めの器に揚げ焼きしたナスとスライストマト、たっぷりのチーズを順々に重ねながら振り返ってみれば、難しそうな顔で何かを考えこむアリアさんがいる。

何が手ごわいのかよくわかんないですけど、色恋の引き出しがない人間にコイバナをさせよう、っていう方が無茶ブリなんじゃ…………。

……でも、色恋の話を振る、ってことは、自分のコイバナもしてくれるということですよね?

そう思って話を振ってみれば、ぽぉっと桜色に上気させた頬を押さえたアリアさんがそっぽを向く。

やだ! 美人さんが可愛い!!

私のつまんないコイバナより、熱愛夫婦の出会いとか愛の軌跡を聞いてる方が有意義ですよね!

あとはオーブンのスイッチを入れるだけ……という状態にしておいて。

残りのクッキーを片手に、どうすればアリアさんのコイバナを引き出せるのか考え始めた。