軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8話 鬼火の試練

アンナが街を去ってからも俺は一人で努力を続けた。

魔力を増やし、魔法を学んでいた。

《英知》は知識や情報を手に入れることが出来るだけであって、あとは自分で理解しなければならない。

強くなるために魔法は欠かせないものだ。

簡単な魔法は覚えることが出来たが、まだまだ実用性は無い。

やはり自分で理解するのには限界がある。

誰かに教えてもらうことも視野に入れなければならないな。

そして今日は──。

「リヴェル、待たせたな。今日から修行開始だ」

以前、父さんにお願いしていた修行の準備が整ったみたいだ。

「まずはお前に《鬼人化》というスキルを身につけてもらう」

「鬼人化?」

なんとなく強そうな名前だ。

だが《英知》を使って調べてみるが何も出てこない。

「このスキルは、魔界にいる鬼と同様の力を得るものだ。お前の身体能力を飛躍的に高めてくれるだろう」

「魔界にいる鬼と同様の力……このスキル、《英知》を使っても何も分からなかったのにどうして父さんは知ってるんだ?」

「どうしてって、そりゃ俺が編み出したスキルだからな」

「スキルって編み出せるのか……」

「まあな。とりあえず場所を変えるぞ」

父さんに案内されたのは街の外れにある一軒の小屋だった。

木造の小屋は外観が綺麗で新しいものだと分かる。

「父さん、これって……」

「ああ。この一週間、俺は小屋を建てていた」

「あ、ありがとう父さん」

俺が《模倣》を取得するのに約3日使ってくれたことを考えるとよく完成したなーと思う。

でも小屋を建てる必要があったのか? と問われると……。

「なんで小屋を建てたのかって顔してるな」

「まあ少しは」

「《鬼人化》を取得するためだ。中に入るぞ」

小屋の中は窓一つ無い。

父さんがドアを閉めると真っ暗になった。

……一体これから何をするんだ?

そう思っていると、少し部屋が明るくなった。

青く光る炎が浮いていた。

「父さんなにこれ」

「鬼火だ。これが何のためにあるのかすぐに分かる」

「へー、まぁ《鬼人化》を取得するためだよね」

「そうだな。で、肝心の修行だが、ここで瞑想してもらう」

「……それだけ?」

「それだけだ」

瞑想か……。

これからメンタル面でのトレーニングを行うようだ。

拍子抜けというかこんなので良かったのか? と思う。

座禅を組み、目を閉じる。

──しばらくすると、急に胸が苦しくなった。

呼吸が出来ない。

それと同時に鬼火は少し大きくなったように感じた。

「──っく、あ、は」

必死に息を吸い込もうと試みるが上手くいかない。

なぜだ。

「この鬼火は魔素と酸素を燃焼している。つまりこの部屋に含まれる魔力と酸素の濃度はかなり低い」

だからか。

じゃあどうやって呼吸をすればいい?

頭が回らない。

思考がまとまらない。

「──かっ、く」

「だが、それだけで終わるにはぬるすぎる。だから俺はある改良を加えた。その結果、鬼火はお前の体内に宿る魔力までも奪っていく」

「──があああああああアアアアアァァァ」

魔力の枯渇状態に陥り、とてつもない頭痛が俺を襲った。

魔素が少ないのでは、自然に回復する魔力の量も少なくなってしまう。

ダメだ……。

意識が朦朧とする。

頭痛が分からないほどギリギリのところで踏みとどまっていた。

………………あれ。

だからこそ気付けた。

無意識のうちに違和感になっていたもの。

それが何なのか、浮かび上がってきた。

なぜ、父さんはこの部屋にいても平然としていられるんだ?

最初に話していたとき、既にこの部屋の空気は薄くなっていた。

俺は呼吸できずに苦しんでいたのにも関わらず、父さんはそんな素振りを一切見せずに言葉を発していた。

なにかがあるに違いない。

それを《英知》を用いて知ることが俺には出来る。

だが闇雲に使用しても答えを知ることは出来ない。

父さんにはこの試練を俺に与えた理由があるはずだ。

考えろ……。

……ダメだ、もう限界だ。

意識がもたない。

それに魔力まで奪われているのだ。

限界だ。

……魔力?

──そうか! 魔力か!

呼吸と魔力が密接に関係していると仮定すれば、この試練はかなり有効なものになる。

なにせどちらも極限まで少ない状況にしているのだ。

俺はほぼこの仮定は間違いないと思った。

そして身体ってのは、不思議なもので希望を見出した瞬間に元気が湧いてきた。

まだいける。

こんなところで諦めていたら到底世界最強なんてなれるはずがない。

今の俺は魔力枯渇状態だが《魔力超回復》で回復している分だけ瞬間的に魔力を保持している。

だからそれだけを使って、この状況を打破する。

俺の取得していたスキル《魔力操作》を軸に考えるのが一番良いかもしれない。

……ん、待てよ。

それから派生するスキルに《魔力循環》というものがあった。

《模倣》の取得に夢中になっていた俺は《魔力循環》の存在をすっかりと忘れていた。

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〇スキル《魔力循環》

このスキルを取得することによって、いつでも魔力が体内を循環するようになる。魔力が体内を循環することにより、身体機能が向上し、魔力の消費を抑えることが出来る。魔法使いはこれを取得しておくと、魔法を撃てる総数が増える。

〇取得条件

《魔力操作》を用いて、体内に魔力を循環させる。

────────────────────

注目すべきは身体機能が向上することと魔力の消費を抑えることができること。

身体機能が向上すれば、この状況下でも呼吸が行えるのでは?

安易すぎる考えだが、他にアイデアがあるわけでもない。

やるしかない。

取得条件を達成するため、少ない魔力を体内で循環させようとする。

しかし、全身に巡らせるには魔力が足りていない。

だったら……魔力の濃度を薄くしてやればいい。

やっていることは鬼火と同じだ。

鬼火に魔力を奪われる際、保有する魔力の濃度を薄くなるようにイメージする。

そうすることによって、魔力の量を相対的に増やすことに成功。

そして《魔力操作》により、魔力が体内に循環する。

[スキル《魔力循環》を取得しました]

よし、これでいつでも魔力が体内を循環するようになった。

「──かはっ」

少しだけ呼吸をすることが出来た。

だが、まだ足りない。

「……ほぉ。なかなかやるな」

なぜだ。

なにが足りない。

少しだけ呼吸は出来るようになった。

だけど、これじゃ瞑想なんて不可能だ。

耐えているだけがやっとだ。

なにか、まだあるはずだ。

「呼吸によって取り入れた少ない酸素を身体全体に巡らせろ」

父さんの声が聞こえた。

と、同時にこの修行の目的が分かった。

答えは循環だ。

全身をいかに意識できるか。

少ないもので大きな成果を得るためには、要領よく使う必要がある。

そのすべを学ぶための試練。

「……はぁ……ふぅ……ふ」

気付けば呼吸は整っていた。

心は驚くほど落ち着いている。

自分が今この空間と一体化しているかのような感覚に陥った。

今まで経験したことのないほどの集中力。

神経が研ぎ済まされているのを感じる。

[スキル《鬼人化》を取得しました]