軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21話 モンスターハウス

リヴェル達が快進撃を繰り広げるなか、アギト達はもうすぐで19階層に到達しようとしていた。

「ハァァァッ!」

道中に現れるCランクモンスターをアギトは一掃していく。

豪快な動きだが、アギトの剣術には何度も何度も反復練習を積み重ねることによって生まれる繊細さも兼ね備えていた。

【最上位剣士】ほどの才能を貰ってもアギトは慢心することは無かったのだ。

「……ハァ、ハァ」

しかし、連戦に次ぐ連戦でアギトは息が切れていた。

それもそのはずだ。

アギトはダンジョンに入ってから対峙した敵のほぼ全てを一人で倒しているのだから。

「……本当に大丈夫? そんな様子だと20階層のミノタウロスに負けちゃいそうだけど」

アギトのためにこのクエストを受けたAランク冒険者のカリーナは心配そうに言った。

「何言ってんだ……大丈夫に決まってんだろうが」

「もう、口だけは一丁前なんだから」

「ったりめーだ……これは俺が無理言ってお前に頼んだことだ。だから俺だけが戦う」

「変なところで頑固なんだよねぇ〜」

こういったやり取りは既に何度もされていたが、アギトは一向に考え直すつもりはない。

(これは俺の戦いだ……誰にも邪魔させやしねえ)

アギトはリヴェルに全力で挑んで負けた。

清々しいほどの敗北を経験し、アギトはより一層実力を磨いた。

アギトはただの負けず嫌いではない。

負けをしっかりと受け止め、次は必ず勝つ。

(絶対に負けねぇ……。こんなところで立ち止まってたら父さんを超えるSランク冒険者になんかなれる訳ねぇからな)

「アギトさん、もうすぐで20階層です! 頑張りましょう!」

「応援してるッス!」

残りのパーティメンバーの2人がアギトを励ました。

「ッチ……黙ってろッ!」

「「は、はい!」」

だが、アギトはそんな二人を怒鳴り散らした。

それでも二人は自分よりも年下のアギトを尊敬している。

なぜなら『レッドウルフ』のメンバーはアギトのことをよく理解しているからだ。

アギト達は19階層に辿り着いた。

19階層は広い空間でモンスターの攻撃を避けやすく、通り抜けることが容易だ。

当然それを知っているAランク冒険者のカリーナだったが、何か異変を感じていた。

(モンスターの数が多い……? いや、違う。これは……!)

「みんな、モンスターハウスよ!」

ダンジョン内で魔素が充満すると、大量の魔物が出現するモンスターハウスと化す。

目標である20階層の目前でまさかの緊急事態が発生していた。

「よし、もうすぐで19階層だ!」

「順調に進むことができてよかったね」

「ああ。これもフィーアのおかげだな」

フィーアは遠くの敵が襲いかかってくるまでに攻撃を入れる。

Dランクの魔物は襲いかかってくる前に仕留め、Cランクの魔物は手負いの状態にしてくれるのはかなり大きい。

「……そんなことないです」

常に銃を持っているせいかフィーアはいつもと少し反応は違ったが、どこか照れ臭そうにしていた。

19階層への階段を降りていくと、

「……何か妙だな」

「……そうだね、僕も異変を感じたよ」

「……もしかすると何か良からぬことが起こっているのかもしれないな」

「うん、気をつけて進もう」

「ああ。フィーアも今までの階層とは訳が違うと思って気を引き締めてくれ」

「分かりました。けれど二人は、どのような異変を感じ取っているのですか?」

「僕は何か嫌な気配を感じたよ。この奥から発せられる魔力は不気味だ」

「そうだな。大気中に漂う魔素が19階層に吸い込まれているように思える。こんなこと、今までの階層では一度も起こっていなかった」

「……なんとなく分かりました」

そして、19階層へ進むとアギト達が多くの魔物に取り囲まれて戦っている。

しかもただの魔物ではない。

19階層では発生しないBランクモンスターも含まれている。

「これは……モンスターハウスか!」

「それも凶悪なモンスターハウスね。これだけの魔物の量は中々お目にかかれないし、普通のモンスターハウスと違ってここよりも下の階層で出現する魔物まで出てきているわ!」

カリーナは短剣で魔物と戦いながら言った。

19階層の構造は幅が広く、魔物との戦闘回避し、通り抜けやすいが、これだけの魔物がいるとなれば話は別だ。

100体ぐらいはいてもおかしくないような数だ。

それに今もなお増え続けている。

「リヴェル君! 危ない!」

カリーナが慌てて大きな声を出した。

真横からBランクモンスターのバイコーンが2本の角をこちらに向け、突進してきていた。

──大丈夫、気付いている。

なにせ俺は『ナイトメア』の一件の後も努力し続けているから。

取得予定だったスキルは《料理人》を除き、既に全て取得している。

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○スキル《領域》

自分から一定範囲の球状の空間を自身の魔力で薄く満たす事でその中に侵入したものを瞬時に察知する事が出来る。力量が上がればどんどん大きく出来るようになる。ただし液体には浸透しにくく、固体はほとんど浸透しない。

○取得条件

魔力を自分の周囲に半径10m以上の球状に展開して24時間維持する。

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《領域》は便利なスキルだ。

展開する《領域》が大きければ大きいほど魔力の消費は激しくなるが、その分展開している空間内を目視していなくても手に取るように分かる。

19階層に訪れる際に俺は半径20mの《領域》を展開していたおかげですぐさまバイコーンの攻撃に気付くことが出来た。

「《剛ノ剣》」

バイコーンを一刀両断。

やはりBランク相手なら《剛ノ剣》で十分そうだ。

「……ハハハ、流石はウチのアギトを倒しただけはあるね。要らない心配しちゃったかな」

「いえ、助かりました! 今からそっちに向かいます」

競い合っていた仲だが、この状況ではそうも言っていられない。

共闘してこの窮地を乗り越えなければ。

「……てめぇらの助けなんか要らねえんだよ。とっとと失せろ」

合流すると、アギトは不機嫌そうに言った。

ザッと周りを見渡すと、魔物だらけ。

倒しても一向に減っている気がしないのは、絶えず魔物が出現しているからであろう。

どれだけ出現するかも不明。

最悪の場合、俺たちの体力が無くなるまで魔物が出現し続けるかもしれない。

しかし、このまま20階層に進んでもミノタウロスと魔物の大群に挟まれ、事態は悪化するだろう。

……やれやれ、これは勝ちを譲るしか無さそうだ。

「体力の限界のようにも見えるが、それだけの口を叩けるとは大した根性だな」

「喧嘩売ってんのか、てめぇ」

「……俺の負けだ。だから20階層へ行ってミノタウロスを倒せ」

「は……?」

「その代わり、俺の仲間も連れていけ。ここは俺一人で食い止める」

「リヴェル、本気か? 君でもこの数を相手に一人で挑むなんて無茶だ」

クルトが言った。

「この状況を最も安全に乗り越えるにはこれが一番だ。それに、俺は別にこの魔物共を全部倒すつもりなんてない。あくまでお前達がミノタウロスを倒すまで耐えるだけだからな」

「しかし……」

「ッハ! 勝ちを譲ってもらってるみたいで納得いかねーけどよ、その話乗ってやる」

「それなら、19階層の人数を増やすべきだ。出現しているモンスターにミノタウロスと同等のやつだっている」

クルトはかたくなに俺の考えを認めようとしない。

「いや、それはどうかな。この先に待つミノタウロスは少し特殊かもしれない」

カリーナが険しい表情で言った。

俺も同意見だ。

「俺もそう思います。これだけ異常なまでに19階層へ魔素が充満しているというのに、20階層から魔素が流れ込んできている気配はない。もしかすると、20階層も19階層と同じだけの魔素が充満している可能性がある」

「そうだね。選択を誤れば死人が出かねない」

「はい、だから俺だけを残して──」

そこで俺の言葉は遮られた。

「ふふ、流石にリヴェル君一人を犠牲にするような真似は出来ないなぁ。そういうわけで仕方ないから私も一緒に残らせてもらうよ。残るメンバーでどうにでもなるでしょ」

アギト、クルト、フィーア、そして名前の知らない2人の冒険者。

確かになんとかなりそうな気がする。

「俺一人でも全く問題ねぇよ」

そう言って、アギトは先陣を切るように20階層へ降りて行くと、名前の知らない2人も急いで後を追った。

「……まったく、リヴェルにはいつも驚かされてばかりだ。……ミノタウロスぐらいすぐに片付けてくるよ」

「ああ、頼りにしてる」

「リヴェルさん……どうか死なないでくださいね」

「もちろん、フィーアも死ぬなよ」

完全に納得している様子では無かったが、クルトとフィーアも20階層へ降りて行った。

「さーて、頑張っちゃいましょうかね」

「はい、お互い頑張りましょう」

俺たちを囲むCランクとBランクの魔物達。

何種類もの魔物がこの19階層に出現しており、まさに地獄絵図ってやつだ。

……ハァ、本当は一人でこれだけの数の魔物を相手にしたかったのだが仕方ない。

俺が残ったのはみんなの安全のためという理由も勿論あるが、それは一番の理由ではない。

一番の理由は、このモンスターハウスを利用すれば複数の敵を相手にするときの特訓になるからだ。

俺が今までの相手と戦ってきた状況はほとんどの場合1対1だ。

しかし、これからはそうじゃない場合にも多く出くわすだろう。

言ってしまえば、これはそのための特訓だ。

ふふ……モンスターハウスに出会したのはかなりの幸運だ。

それに魔物のランクも申し分ない。

──さて、学ばせてもらおうか。