軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

38話 神様の手助け

「アンナに命の危機が迫っている……?」

俺は神様の言葉を反芻するように口に出した。

なぜ、そのような事態になっているのか。

俺の頭にはいくつもの疑問が浮かび上がってくる。

「はい。アンナさんは今、英傑学園の課外授業中で魔物の討伐をしています。その地に眠る強力な魔物が目を覚ましました」

「目を覚ました、というのは本当ですか?」

「中々に鋭いところを突いてきますね。リヴェルさんは魔物が目を覚ましたのではなく、誰かの意図により目覚めさせられたのではないかと疑っているのですね」

「その通りです」

この状況を信じるも信じないも俺次第だ。

神様の戯言であることも考慮できるが、その線は否定しておいた方がいい。

もしものことを考え、少しでも多くの情報を手に入れておきたい。

それがアンナのために繋がるのなら尚更だ。

「その答えはノーです。全くの想定外の出来事であり、だからこそ私が貴方と話す機会が生まれたのです」

「どういうことですか?」

神様の含みを持った言い方が気になった。

「単刀直入に言いましょう。私がアンナさんを救う手助けをしてあげます」

神様の申し出は予想外のものだった。

「ありがたいのですが、何故そこまでしてくれるのですか?」

俺は先ほどから胸に抱えていた疑問をぶつけることにした。

ラルとクルトが神の声を聞き、俺と行動を共にしているのも神様が仕向けたことだ。

自惚れではないが、神様は俺のことをかなり気にかけていると考えて間違い無いだろう。

今回のことも俺を気にかけているからこそ、持ちかけられた提案だ。

「私は単純に貴方を好いているのですよ」

「好いている……?」

「はい、だから私は貴方のことを気にかけているのです。既にお気づきでしょうが」

「ま、待ってください。好かれている理由が分かりません」

神様というのは特定の存在を好きになるものなのか?

気にかけられている理由が「好きだから」というので本当に正しいのか?

「私はこの世に存在する全ての存在を平等に愛しています。ですが、それはリヴェルさんを好いているからに過ぎないのです」

「よく分かりません……」

「ええ、今はまだ話すべき時ではないですから」

そう言って、神様は微笑んだ。

全ての運命を見据えているような、そんな雰囲気を感じた。

だったら、俺が集中するべきことはただ一つだ。

神様に好かれているというなら、それを有効に使えばいいだけのこと。

「分かりました。ではアンナを救う手助けの内容を具体的にお聞きしてもいいですか?」

「強力な魔物と対面したアンナさんの前に貴方を転移させます。その後はリヴェルさんの実力で強敵を討ち倒してください。討伐後は貴方が眠っている宿屋の一室に戻します」

あくまでアンナを救うのは俺自身というわけだ。

しかし、その機会を作ってくれるだけでかなりの助けになっている。

「なるほど、ありがたいです」

「ですが良いことばかりではありません。ここからは忠告です」

神様は初めて不安そうな表情を見せた。

「アンナさんを襲う強敵の名はマンティコア。今のリヴェルさんでは到底太刀打ち出来るはずもないレベルの魔物です。アンナさんを救いに行くというのは、自殺行為に等しいと言っても過言ではありません」

マンティコア。

その魔物の名を英知で調べる。

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○マンティコア

全身が赤い体色をした獅子。皮膜の翼、尾に猛毒の針、3列に並ぶ歯を持つ。性格は凶暴で好んで人を捕食することから『人喰らい』の異名を持つほどに恐れられている。冒険者ギルド連盟が指定する危険性を示すランクはS。

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「かなりの強敵みたいですね」

「相手が強敵だということを知った上でアンナさんを救うか、その判断は貴方に任せます」

そんなの決まっている。

考える時間なんて必要ない。

「アンナを救わせてください」

相手が強敵かどうかなんて関係ない。

アンナに危険が迫っているなら俺はそれを排除するだけだ。

「……自分の命を失うことになっても、ですか?」

「はい」

「本当に後悔はありませんか?」

「アンナの命と自分の命を天秤にかけるまでもないですね」

そう言うと神様は再び微笑んだ。

「ええ、貴方はそう言うと思っていました。リヴェルさんはいつだってそうでしたから」

「……知っていて聞いたんですか?」

「勿論です。そうでなければ最初からこのお話を持ちかけたりしませんもの」

「……そうですか」

良い趣味をしている神様がいたものだ。

おかげで俺はめちゃくちゃ恥ずかしい。

「転移の準備はよろしいですか?」

俺は目を閉じて深呼吸をする。

これから自分の実力以上の強敵と戦うことになる。

勝ってアンナを守るには玉砕覚悟で立ち向かわなければならない。

「……はい、いつでも大丈夫です」

「それではいきますよ」

神様がそういうと、俺は光に包まれ、白い空間から消えて行った。

「あの保険では少し心許ないですね……。でもきっとリヴェルさんなら成し遂げてくれるでしょう」

リヴェルが消えた後の白い空間で神様は一人呟くのだった。