軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11話 おちゃめな老人

「ほぉ~、これは強すぎるのぉ」

観客席でクロエとリヴェルの模擬戦を見学していた学園長は感嘆の息を吐いた。

学園長自らが戦っても勝てるかどうか分からないほどの実力をリヴェルから感じ取っていたのだ。

英傑学園に集まる者に天才は多いが、その中でも抜きんでた才能を持つ本物が存在する。

孫であるクロエもその本物であることは間違いないのだが、リヴェルの前ではまるで赤子のようだった。

「手を抜く……というよりも気遣いが感じられる戦い方じゃな。しかし、最後の最後で実力の片鱗を見せおったわ。まったく、とんでもない逸材を連れてきたのぅ、ルイス」

「ええ。俺もリヴェルがどれだけ成長しているのか気にはなっていたが、あいつは予想を遥かに超えてきた。二年前はまだ常識の範囲内の実力だったが、今はもう底が見えん」

「うむ。しかし、テオリヤの現状を考えればこれは嬉しい誤算じゃな」

「そうだが、リヴェルの扱いについては慎重に頼むぞ」

「分かっておる。ワシもそこまでボケておらん」

「ああ」

「しかしまぁ……あやつの従魔は可愛らしいのぉ」

学園長は視線を上に向ける。

「キュウッ! キュイ!」

そこには空中でリヴェルの活躍を嬉しそうに喜ぶキュウの姿があった。

「名前はキュウだ」

「分かりやすい名前じゃな。鳴き声通りの子じゃ」

「む、そういえば二年経ったというのにキュウの姿はほとんど変わってないな」

『あるじの頭の上に乗りづらいから少し小さくなってるんだよ!』

ルイスの発言を聞いたキュウは《念話》を使って、事情を伝えた。

「む、今のは《念話》じゃな? 小さいのに賢いのぉ」

「リヴェル曰く、出会った頃からキュウは《念話》が使えたそうだ。しかし、大きさまで変えられるとは……飼い主に似てキュウも中々常識では考えられんことをしてくるな」

「キュッ!」

キュウは空中で誇らしげに胸を張って見せるのだった。

「なんとも賢い小竜じゃのぉ……。さて、それではルイスよ。リヴェルと共に再び学園長室にて待機していてくれんか? 今後の方針について伝えておくべきことがあるのでな。お前さんも耳に入れておいた方がいいじゃろう」

「ああ、分かった」

学園長はルイスにそう伝えると、先に闘技場を後にした。

模擬戦を終え、俺達は学園長室に戻ってきた。

ルイス曰く、学園長から今後の方針について聞かせてくれるそうだ。

それを聞いて俺は、もしかしてクロエを泣かせてしまったことが原因で入学の話は取り消しになったのではないか、と少し不安に思った。

「リヴェル、この2年でかなり実力を上げたな」

ルイスは、学園長の椅子に座りながら言った。

何の抵抗も無く座っていて、やはりルイスと学園長は親密な仲なんだろう。

「そうですね、相応の努力はしてきましたから」

「ふっ、お前らしいな」

「……そういえば、どうしてリヴェルは冒険者ギルド連盟長と接点があるの? あの実力を見れば不思議ではないけど、少し気になっていた」

クロエはルイスが冒険者ギルド連盟長を勤めていることは知っているようだ。

たしかにルイスと親しい学園長の孫であるクロエなら知っていてもおかしくはないか。

「俺は二年前までフレイパーラで冒険者をやっていてな。そのときルイスさんから色々世話を焼いてもらったんだ」

「ん、フレイパーラ……二年前なら魔物の大群が押し寄せてきた頃ね。……魔物の大群を相手に一人で飛び込んでとてつもない戦果を上げた少年がいた、と聞いている。もしかして、それがリヴェル?」

自分の活躍を聞かされると何か恥ずかしいな。

「多分……俺だな」

「リヴェルだな」

「本当の話だったんだ……でも二年前にはもう既にとても強かったのね」

「……まあな」

二年前か……。

あのときの思い出は楽しいものばかりだな。

今朝、偶然フィーアと会えた事だし、探せばみんなを見つけられそうな気がするな。

この後、特に用事が無ければみんなを探してみるか。

ガチャリ、とドアノブが回る音がして扉が開いた。

「待たせたのぅ。リヴェルの入学にあたって伝えておかなければいかんことがあってな。ワシの他に副学園長を連れてきた」

「どうもはじめまして、貴方がリヴェル君ですね。私は英傑学園、副学園長のイレーナと申します」

学園長の後ろから現れたのは、女性だった。

紫色の髪を長く伸ばしており、年齢は大体30歳を過ぎたぐらいに見える。

副学園長という立場にしては少し若いようにも見える。

「……実はのぉ、イレーナはあの見た目で歳は53なんじゃよ」

学園長は俺の方に近付いてきて、耳元でこっそりと話した。

あれで53歳?

見えねぇ……。

というより学園長が伝えたかったことってこのことじゃないよな?

「……聞こえてますよ。学園長」

「ほっほっほ、リヴェル君の驚く表情を見れておぬしも悪い気分はせんじゃろ」

「セクハラですよ、それ」

「ムッ! ごほっごほっ! ふぬぅん……歳は取りたくないのぉ。それでは早速リヴェルに本題を伝えようかの」

学園長は大袈裟に咳を吐く素振りをした。

あれで誤魔化したのか……?

そして、学園長は周りの視線を気にせずに平然と続ける。

「リヴェルには学園生活を送るうえでその実力を隠して欲しいのじゃ」

「実力を隠す?」

俺は、全く予想もしていなかったことを告げられたのだった。