軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第3-26話 伏兵と魔術師

「わっ。冷たい!」

サラが海に足を入れて驚いた声を上げる。

確かに季節的には初夏。まだ海の水は冷たい時期だ。

「ははっ。気を付けて入れよ」

「ここら辺はモンスターが出ない海域だからね。もうちょっと夏になると、凄い人気なんだよ」

ミコちゃん先輩とミル会長が2人して喋った。

「もうちょっとで夏ですか。夏になると暑いでしょうね」

「あ、夏にも生徒会の合宿はあるよ。イグニ君、参加する?」

「はい! 予定空けておきます!」

とはいっても、入る予定なんて何もないのだが。

「……あれ? そういえばヴァリア先輩は?」

「ヴァリアちゃんはあそこ」

ミルが指さした先にいたのはビーチパラソルの下に入って涼むヴァリア先輩。

「ヴァリア先輩! 泳ぎましょうよ!」

「失礼。 私(わたくし) は肌が弱いので今回は遠慮させていただきますわ」

「またまた~。身体見せるのが恥ずかしいって言えばいいのに」

にゅっ、とイグニの横から顔を出したミル会長がヴァリア先輩に言う。

「な、何を!」

「だってほら、前言ってたじゃん? 呪いを貯めてる期間はお腹が空くから、普段よりも食べ過ぎちゃうって」

「あー! あー!! ダメですわ! 何も聞こえませんわ!!」

耳をふさいでのたうち回るヴァリア先輩。

ここに来て子供らしいところを見せられたので、イグニにはぐっと来た。

ヴァリア先輩、可愛いじゃん……。

基本的にイグニはチョロいのである。

「おっ? 何だ? お前ら揃いも揃って泳げねえのか?」

そんな時、海からミコちゃん先輩の声。

「え、エルフは森の中で暮らすから泳ぐ必要が無いんです!」

「川とかで泳がねえの?」

「うっ……」

リリィの顔が歪む。

ははぁ。アレは多分、嘘をついた顔だな。

と、イグニは遠目で見ながら思った。

「んで、ユーリも泳げないのか?」

「は、はい。村には……海が無かったので」

「川遊びは?」

「……いえ、それも」

ユーリの顔が歪む。

「ねえ、イグニ君」

「はい?」

ミコちゃん先輩の周りをぷかぷかと浮き続けるサラを見ていると、ミル会長が話しかけてきた。

「ユーリ君の村ってさ。不思議じゃない?」

「何がです?」

「私、ちょっと気になって調べたの」

「ユーリのことをですか?」

「ううん。入ってくれた1年生全員を。変なことしてたら嫌でしょ?」

「それもそうですね」

イグニはミル会長の瞳を見ながら話す。

本当はそのちょっと下にあるおっぱいに視線を落としたいのだが、そんなことをする男がモテるはずないのでイグニの首は不動を保っていた。

「でね、ユーリ君なんだけど、おかしいの」

「男なのに女っぽいところがですか?」

「うーん。まあ、それもそうなんだけど……」

「ユーリ君の髪の毛って白いじゃない」

「気にしたことも無かったですけど、確かにユーリの髪の毛は白いですね」

ミコちゃん先輩に特訓を受けながら泳ぎの練習をしているユーリをイグニは見た。

「あのね。アンテム王国に、髪の毛が白い人種っていないんだよ」

「じゃあ突然変異とかなんじゃないです? 俺の髪の毛だって、父親とか弟とかと違いますよ?」

イグニはそう言って自分の赤髪を指さした。

自分が 特別変異(スペル・ワン) であることに自信を持っているイグニからすると、恥ずかしいことでも何でもないので、純粋な疑問としてイグニは呈したのだが。

「私もそう思ったの。生まれつき色素が薄いか、それとも後天的にああなったか」

「後天的に」

「イグニ君、詳しいこと知らない?」

「さぁ……。あんまりユーリは自分のことを喋らないので」

イグニもユーリから聞かれるまで、自分のことを喋らなかった。

男同士の友人というのはそういうものなのかも知れない。

男同士……。

イグニはその言葉に少し引っかかった。

「で、ヴァリアちゃん」

「は、はい!」

「今完全に話題からそれたと思ったでしょ」

「……思いましたわ」

「本当に泳がないの?」

「……泳げないんですの」

「じゃあミコちゃんに教えてもらえば良いじゃん。あ、イグニ君って泳げるの?」

「泳げます!」

2年前に祖父から『魔王領』にある滝壺に叩き落とされるという特訓をしたときに泳げるようになった。というか、泳げないとガチで死ぬので何とかしたのだ。

「じゃあ、イグニ君に教われば良いじゃん!」

「あ、でも俺の泳ぎって服着てることが前提ですよ?」

「……なんで?」

服を着たまま滝壺に落とされていたからである。

「とにかく、ヴァリアちゃんも水着に着替えてきてね。これは会長命令」

「うぅ……。どうしても、泳がなければいけませんの?」

「うん。1年生と親交を深めるのが目的だからね。こんなところに居たら深まらないでしょ」

「それは……そうですが」

「どうせ持ってきてるんでしょ? 水着」

こくり、とヴァリア先輩は頷いた。

「それなら、行ってらっしゃい」

「……はい」

半ば強制的に送り出されたヴァリア先輩の後ろ姿を見守りながら、イグニとミルは海に向かった。

「よし、イグニ君。飛び込めっ!」

「行きます!!」

ミル会長の言葉で地面を蹴って数メートル先まで飛ぶと、そのまま飛び込んだ。

どっぼーん! と、水しぶきが上がると、その後を追いかける様にして飛び込んだミルが2つ目の水しぶきを上げた。

「うひゃあ! まだ冷たいや!」

「気持ちいいですね。会長」

イグニが地面に足をつけて、立ち上がるとそこにサラが泳いでやって来た。

どうやらサラは泳げるみたいだ。

「どうした?」

「おんぶ」

「お、おう」

イグニはサラに言われるままにおんぶする。

「イグニ。あそこまでおよいで!」

「よし、任せろ!」

イグニはサラを背中に乗せたまま、サラの指さす方向に向かって泳ぎ始めた。

「わぁ!」

それにサラは大喜び。

きゃっきゃと声を上げて楽しんでいる。

「うーん。随分と平和ねぇ」

それを見ながらミルがぽつりとつぶやいた。

イグニはサラが指さした岩礁まで泳いで手を触れるとUターン。

そのままの速度で再びみんながいる砂浜に向かって泳いで戻った。

「会長。着てきましたわ」

「うん。似合ってるじゃない。ヴァリアちゃん」

「速かったですね。ヴァリア……先輩…………」

イグニはサラが海に落ちないように抱えながら立ち上がった瞬間、脅威の胸囲が目に入った。

ば、馬鹿な……ッ!

生徒会最強はミル会長じゃないのか……ッ!!

あやうくサラを落としそうになって、イグニは慌ててサラを再び持ち上げる。

そこに居たのは思わぬ伏兵。隠れ潜んでいた暗殺者。

油断からの不意打ちで殺されそうになったイグニは何とか心を正常におちち……じゃなくて、落ち着かせる。

どこがスタイルに自信がないのだ……!

どこが呪いを貯める期間で太っただ……!!

真っ赤な大嘘じゃないか!!!

ともすればミル会長よりもデカい!

巨乳を超えて爆乳に両足を突っ込んでフィニッシュポーズを決めているかのような圧倒的なおっぱい……!

どうしてそれが今の今まで隠されていたというのか……!

全身包帯姿の時も、制服姿の時も分からなかったというのに……!!

これはロルモッド魔術学校の7不思議の1つにカウントしても良いんじゃないか……ッ!?

「むー」

「ちょ、サラ。痛い」

「むー!!」

イグニはサラに頬っぺたを引っ張られながら、神に感謝した。