軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第3-06話 少女を守護れ!

イグニたちは少女を目の前にして、しばらく固まっていたが最初に沈黙を破ったのはアリシアだった。

「と、とりあえず『棺』に入れましょ」

「あ、ああ」

イグニもアリシアも困惑したまま黒い棺に少女の身体を入れる。その瞬間、呼吸もしづらいほどの魔力が急速に封じ込められる。

それを肌で感じた3人は心の底から理解した。

「……やっぱり、『魔王領』の魔力はこの娘が」

この娘が、全ての原因なのだ。

「閉めるわよ」

アリシアが棺を閉じる。

刹那、今まで溢れていた魔力が急速に減り始めた。

いや、減っているのではない。溢れていた魔力が封じ込められたことによって、魔力がこれ以上部屋の中に増えなくなっただけだ。

「ど、どうするの。イグニ」

「……少し考えさせてくれ」

イグニの想定では魔力を出しているのは『魔王』の死体のはずだった。だから、死体を回収した後は帝国の研究部に全ての処理を任せるつもりだったのだ。

現にアリシアも『喜んで受け取ってくれると思うわ』と、言っていたので何も問題はない……はずだった。

「イグニ君、アリシアちゃん。その娘はロルモッド魔術学校で保護します」

初めて聞くミラの真面目な声。

「学校で……保護、ですか」

「その娘は魔王じゃないからね。殺す必要は無いけど……身体から『魔王』の魔力が溢れている現状、どこにも行かせられないじゃん? けど……その娘がもし、『大戦』の 被(・) 害(・) 者(・) なら、保護しなきゃ。でしょ?」

「学校で保護……。大丈夫ですか?」

「あったりまえだよ! 私たちを信じて。それに、どうしてこうなったのかって……この娘にちゃんと話を聞かないといけないしね」

「確かに……このままだと、意味が分かりませんしね」

『魔王』は死んだ。それは誰もが知っている。

『魔王領』の異常な魔力は死んだ『魔王』のせいだと言われている。

だが、現実は……。

「とりあえず、戻ろうか」

「ですね」

イグニは棺を担ぐと、

「『 転移(ひらけ) 』」

ミラが帰り道を開く。

行きの魔術陣に帰りのパスが書かれていたのだろう。イグニたちの目の前が真っ白になって……気が付くと、ロルモッド魔術学校の屋上に立っていた。

「とりあえず、こっち来て」

すぐさま、ミラが歩き始める。

イグニとアリシアは顔を見合わせて……ミラに続いた。

「ロルモッド魔術学校はね、もともとは『魔法』の研究のために作られた研究施設だったんだ」

奥に奥に、校舎の最奥へと向かいながらミラが言う。

「今でもその名残があるから私たちは魔術の研究をしながら教師をしてるんだよ」

「そうだったんですね」

「うん。まあ、こんな話はちょっと学校の歴史に詳しい人なら分かること。でもね、どうして『魔法』の研究を始めたんだと思う?」

ミラの問いかけにイグニは少しだけ考えて……。

「他の国と戦うためですか?」

と、答えた。

「ううん。違うよ。でもね、イグニ君の考えはよく分かるんだ。確かに今の王国民にとって一番の敵は周囲の国だからね~」

ミラが笑う。

「でもね。私たちのように『大戦』を生き延びた人類にとって一番の敵は……『魔王』なんだよ」

「…………」

「だからね、そんな『魔王』に対抗するために無数の魔術が開発された。攻撃魔術、防御魔術……そして、封印魔術」

校舎の最奥。

生徒たちの立ち入りが禁止された場所に、それがある。

「ここから、降りれるから」

「これは…… 自動昇降機(エレベーター) ですか?」

アリシアが尋ねる。

え、何それ……。

何も知らないイグニは首をかしげると、

「そうだよ。アリシアちゃんはよく知ってるね」

「はい。去年か一昨年あたりに……ウチに出来たんです」

「そういえば帝国のお城に導入されたってニュースあったね~」

何の説明もないまま、イグニは 自動昇降機(エレベーター) に足を踏み入れて、

「降りるよ」

くん、と身体に不思議な感覚が襲った。

「おおお……っ! 何これ……!!」

「自動で上に行ったり下に行ったりできる魔導具だよ。教員の魔力に反応して動くように改良されてるやつだね~」

そして、3人が降りていくのは……ロルモッド魔術学校の地下深く。

「それでさっきの続きなんだけど……『魔法』の研究をする過程で絶対に必要だったものがある。何だか分かる?」

「研究する過程で……」

イグニは少しの間考えて、

「場所、ですか?」

「正解! 魔法なんてとんでも無いものを研究するには、魔法が撃てる場所が必要だったんだよ!! だから、ロルモッド魔術学校の地下にはね。あるんだ」

ガコン、と音を立てて3人が地下深くにたどり着く。

「最高の耐魔防護壁を備えた部屋がね!」

「ここは……?」

たどり着いた先にあったのは真っ赤に染まった部屋。

「『クリムゾン・クリスタル』……こんなに……」

アリシアが目を丸くしたまま、その部屋の内装を見つめた。

そこにあったのは全て 最(・) 高(・) の(・) 耐(・) 魔(・) 素(・) 材(・) で覆われた部屋っ!

「『クリムゾン・クリスタル』……? 『クリムゾン・クリスタル』ってドラゴンのブレスも防げるっていう……あの??」

「そうだよ! イグニ君もアリシアちゃんもよく知ってるね!」

1グラムあたり数百金貨という馬鹿みたいな価格で取引される素材だ。

一掴みもあれば一生遊んで暮らせるとも言われている。

「そんな素材を……部屋一面に……」

「凄いでしょ? 世界中どこを探してもここにしかない特別な部屋だよ」

ミラが手でイグニを部屋の中心に招く。

「さ。ここで棺から出してあげよう」

イグニは背負っていた棺を降ろすと、蓋を……開く。

轟!!

凄まじい魔力が渦巻いて、部屋の中に『魔王領』の魔力が溢れるが……『クリムゾン・クリスタル』によって無効化されていく。

いや、無効化しているのではない。

完全に封じ込めているのだ。

「先生、まだ眠っているみたいです」

「そっか。じゃあ、起きるまで……」

待とうか、とミラが続ける前に、ぱちりと少女が目を開いた。

「……ッ!」

イグニと 目(・) が(・) 合(・) う(・) 。

(……綺麗な、目だ)

透き通るような、紫色の瞳。

イグニの視線と交じり合う。

だが、交じり合った瞬間、少女の瞳が不可思議に揺らめいた。

(……不思議な目だな。まるで、じいちゃんの『鑑定』みたいな)

「隱ー縺ェ縺ョ?」

そして、少女が口を開いた。

「繝代ヱ縺ッ縺ゥ縺難シ」

何を言っているのか分からない言葉で……続ける。

「……言葉が」

「あ、私なら分かるかも」

そういってミラが前に出た瞬間、

「繧ィ繝ォ繝包シ!!」

バン!! と、音を立てて少女が棺から飛び出してイグニの後ろに隠れた。

「……えーっと?」

ミラが首を傾げる。

困惑したまま、アリシアも近づこうとしたが、

「蟶ス蟄!」

と、言ってイグニの身体を引っ張って壁際まで後退した。

「……せ、先生もアリシアもとりあえずそこで待ってください」

「う、うん」

訳も分からないまま2人は首を傾げる。

そうだ。2人は分からない。

それは仕方ないのないことだ。

だが、服を掴まれているイグニには……少女の手の震えが痛いほどに伝わっていた。

(……頑張れ俺! 何としてでもこの子を安心させるぞ……っ!!)

だからイグニは自分を鼓舞する。

(安心させられる男はモテるんだッ!!)