軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2-22話 向かい合う魔術師

「今のは誰だい?」

「エルフの協力者だよ」

『魔族』の少女はマリオネッタの問いに水晶を見ながら返す。

「マリオネッタ。ひどい顔だよ。クエストの方は大丈夫なの?」

「ああ……。なんとか。……アレは効いたね」

「『疑似魔法』のやつでしょ? そりゃあ効くよ。どれだけの恨みと呪いが詰まってると思ってるの」

「いやあ、舐めてたよ」

てへっ、と笑うマリオネッタの顔色は青い。

いつもなら咥えている煙草も、今ばっかりはお休みだ。

「“極点”3人は? って、1人は逃げられたんだっけ」

「不甲斐ないね。でもあと2人はしっかり閉じ込めてる」

「出られないように注意だよ」

「してたんだけどなぁ」

そう言って困ったように笑うマリオネッタ。

「それにしてもさっきの子、可愛いね」

マリオネッタが水晶を覗き込みながら笑う。

そこには悲痛な顔をしていたエルフの少女が先ほどまで映っていた。

「ロリコン?」

「違うよ。初恋に気が付いていない……けど、心の『もやもや』を晴らすためにエルフの“極点”を捕まえるための情報を提供してくれるなんて、いじらしいじゃん?」

「おっさんが『じゃん?』とか言っても可愛くないけど」

「毒舌ぅ」

「ま、恋と呪いは扱いやすいからね」

『魔族』の少女はそう言って肩をすくめた。

「怖いこわい。まるで悪魔だね」

「悪魔だよ」

軽口を叩きあっていると、その部屋にいた3人目が目を覚ました。

「……ここは?」

「やあ、お目覚めだね。『聖女』さま」

「 貴方(あなた) は……マリオネッタ!」

「覚えてくれてたのかい? おじさん嬉しくて泣きそうだよ」

そう言って何とか煙草を取り出すと、マリオネッタは口に咥えた。

「それと…… 貴女(あなた) は」

ローズはそこに座っていた少女を見て、息をのんだ。

「『魔族』……」

「そうだよ」

銀の髪の毛を揺らして、少女はローズを見つめる。

その不思議な瞳に抗うように、ローズは少女を見つめた。

「おっと、自己紹介がまだだった。私はクロ。『魔王』様の復活のために動いているんだ」

「復活……? 『魔王』を? 出来るわけが」

「そう思うのも無理はないけどさ。忘れてないかな。“古の魔術”に『 死霊術(ネクロマンシー) 』があるのを」

「……死者の魂を 弄(もてあそ) ぶ魔術」

「ひどい事いうなぁ。現世に恨みや辛みのある霊魂たちに希望を与えられる素晴らしい魔術じゃん♪」

「『魔王』を復活させて、何がしたいの!」

「『魔族』の復権だよ。私は何もしてないのにさ。私たちは何もしてないのにさ。迫害されるのっておかしくない?」

「だって『魔族』は大戦で『魔王』の側について戦ったから……」

「でもそれって私たちじゃない」

『魔族』らしくクロがローズを嗤う。

「それとも『聖女』さまは犯罪者の子供はみんな犯罪者だっていうの?」

「それは違うわ!」

「でも、人間たちはそうは思わない。人間だけじゃない。獣人だって、エルフだって、ドワーフたちだってそうは思って無い。だから私たちはこうして迫害される」

「………………」

「だから、『魔王』様にお願いするんだ」

クロの言葉にローズはしばらく黙りこんだ。

「 仕(・) 方(・) な(・) い(・) ん(・) だ(・) よ(・) 」

クロが全てを諦めたように笑う。

「私の人生は生まれた時から決まっているの。私は『魔族』だから、どうやっても明るいところは住めないんだ」

「貴女は……」

「『聖女』さまは私と似てるよ」

クロはローズに近寄る。

「人生を決められて、それを受け入れてるところが」

「…………っ」

「だからね。諦めて欲しいんだ。私だって引けないんだからさ」

「イグニが、来るわ」

「?」

「絶対、助けに来るわ。イグニと私は運命で結ばれてるから」

「ああ。来るだろうね」

何でもないようにクロは吐き捨てる。

「でも私たちだって、何の準備もしていないわけじゃないんだよ?」

――――――――――

「イグニ! 次の角を右だ!!」

「分かった!」

「私が先行します」

ユーリが生み出した『闇の塊』の後ろを追いかけて、迷宮のようになっているマリオネッタの『工房』の中を駆け抜ける。

「罠です!」

先行していたフローリアが頭を下げると、一瞬遅れて金属の杭がそこを貫いた。

「ありがとうございます!」

「いえ、“極点”ですから」

曲がり角では『闇の塊』が『こっちだよ』と言わんばかりにとどまっていた。

賢い魔術だなぁ。

俺の『ファイアボール』も賢くならないかなぁ。

イグニの意味のない思考は流れていく。

「一本道?」

「罠……ですかね」

曲がり角を曲がった先にあったのは30mほどの一直線に伸びる廊下だった。

ぼんやりと地面にある灯りが道を指し示している。

「とりあえず、私が駆け抜けます」

「お願いします」

フローリアはそう言って30mの距離を駆けだした瞬間、

ヒュドッ!!!

と、音を立てて天井が落ちてきた!!

「フローリアさん!」

「『 剛水(ハード・ウォーター) 』」

バチン!!!!

と、凄まじい激突音とともに天井が静止。

見れば地面から湧き出した水が柱のようになって天井と地面の間に立っていた。

「今の間にどうぞ。イグニ様」

「あ、ありがとうございます」

しっかりと支えられている間にイグニは30mを駆け抜けた。

「行きましょう」

「はい」

2人は短いやり取り。

ユーリの顔色は恐怖で青ざめているが、まだ大丈夫だろう。彼女……じゃなくて彼も『ロルモッド魔術学校』の学生なのだから。

3人が『闇の塊』の案内に従って走っていると、とある部屋にたどり着いた。

「いやに広い部屋だな」

「模擬戦場みたいだね」

「言われてみれば」

縦横だけで50mはあるだろうか?

高さも30mはありそうだ。

「やあ、待ってたよ」

その中心にいたのはマリオネッタ。

「ローズはどこだっ!」

イグニの問いかけにマリオネッタは煙草の煙を吐いた。

「奥だよ」

次の瞬間、マリオネッタを水の弾が穿った。

「相変わらず、喧嘩っ早いね。“水の極点”」

砕け散ったマリオネッタからこぼれたのは、土くれ。

つまりはゴーレムによる擬態。

「偽物です。通り抜けましょう」

「いや。通さないよ」

マリオネッタの言葉が響くと、どろりと扉の周囲が 蠢(うごめ) いて扉をふさいだ。

「僕に勝つまでは、ここを通すつもりはないよ」

「面倒なことを……!」

フローリアがつぶやく。

「イグニ君、“水の極点”。ここで1つ質問だ」

「「…………」」

「凡人が“極点”に勝てるだろうか?」

マリオネッタの言葉に2人は止まった。

「さあ、僕がここに証明しよう。それは出来ると」

マリオネッタが両手を広げる。

地面からは無数のゴーレムが沸き立つ。

「 出(・) 来(・) る(・) ぞ(・) 」

そのゴーレムに怯むことなく1人の少年がマリオネッタに返した。

「凡人でも、“極点”には勝てるぞ」

「まるで、勝ったことがあるみたいな言い方じゃないか。イグニ君」

「 あ(・) る(・) さ(・) 」

イグニが踏み込む。

「たった1つの魔術しか使えなくても、勝てるさ。それを 極(・) め(・) れ(・) ば(・) 、な」

「…………」

「俺が、そうだ」

そして、戦いの火蓋が切られた。