軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2-15話 動き始める盤面!

――告白

男から女にする者もいれば、女から男にする者もいるだろう。

そして、それはモテの道を走る者であれば避けては通れぬものである……っ!

「い、イグニ。どうするの……」

「……どうするって」

上機嫌になったまま去っていくローズを見つめながら、アリシアとイグニは目線も合わせず会話する。

クララに関してはイグニを囮にしていたということでローズからの殺意が高まった状態で終わった。アリシアに関しては自分を助け出したこと、かつイグニのクラスメイトという説得で一気に仲良くなった。

いまいちローズを掴み切れず、イグニは唸ったのである。

ちなみにマリオネッタは街の警邏に引き渡した。

「分かってるでしょ。聖女様からの告白よ。まさか受けるんじゃないでしょうね」

「…………」

イグニは黙り込む。

モテの道を究めるということは、女の子から告白される未来を考えていなかったわけではない。

「40年か……」

「生きてたらボクたち50代だね」

イグニのつぶやきにユーリが軽く笑う。

しかし、まさか40年も拘束される告白をされるとは思わなかった。

「50代かぁ……」

イグニが漏らす。今のルクスよりは若いが……というところか。

「だってイグニ。よく考えてみなさいよ! 『聖女』の行動ってほとんど移動時間よ? 馬車で移動するんだから時間はかかるし、今日みたいに『聖女』を狙うやつらからずっと守らないといけないのよ??」

「それは、分かってる」

イグニは頷く。

「イグニは何に迷ってるの? 告白されたこと?」

ユーリの問いかけにイグニは答える。

「……俺は、学校に残りたい」

それは、モテたいという気持ちからだろうか?

それとも、初めてできた友人がいるからだろうか。

「でも、ローズの思いにも答えたい」

「そんなの……2つ同時に達成は出来ないわよ」

「分かってる」

イグニはうめく。

「だから、迷ってるんだ」

「うーん。じゃあ、こうしたらどう? イグニが学校にいる3年間は学校に残って、卒業したら『聖女』さまについていくっていうのは」

「それも……考えてるんだ」

ユーリの問いかけにイグニは静かに答えた。

モテたい。けれど、ローズの思いにも応えたい。

いや、ローズの思いに応えるということがモテるということじゃないのか?

イグニの脳が思考の堂々巡りを始める。

「イグニ、こういう時は誰か頼れる人の話を聞いてみると良いんじゃないかな?」

「頼れる人?」

ユーリにイグニが聞き返す。

「うん。例えば……人生の先輩とか?」

「……あっ」

イグニの思考が煌めいた。

―――――――――

『イグニよ』

『どしたの、じいちゃん』

それは、魔王城の近くで特訓していた時のことだった。

『長く人生をやってると、どうにもならない選択肢を突き付けられることがある』

『……どういうこと?』

あの時は 餓鬼(がき) と呼ばれるゴブリンの上位種族を狩っている時だった。

『うむ。例えば、イグニ。お前が鉱山で働いているとする』

『うん』

『その時、鉱山のトロッコが制御不能になった。このままいけば、5人の鉱夫が死ぬ。しかし、イグニ。お前がトロッコの分岐路を弄れば、お前の友人が1人だけ作業している方向にトロッコが進む。さあ、イグニ。お前は分岐路を弄るか? 弄らんか?』

『え……ッ』

イグニは急に祖父がまじめな話を始めたことに困惑した。

『俺は……1人で作業してる知り合いによる』

『ほう。誰なら分岐路を弄る?』

『父上』

『くはははっ』

ルクスは大きく笑った。

『な、何だよ! こんなの正解なんてないだろ! じいちゃんならどうするんだよ!!』

『ワシか? ワシなら……』

ルクスはニィ、と笑った。

『トロッコを……壊す』

『そ、そんなのずるいよッ!』

『ズルくなどない。それが出来るのが……“極点”じゃよ』

『……ぐぬぬ』

『良いか、イグニ。肝に銘じろ』

『な、何を……』

『迷ったのなら、土台から壊せ』

―――――――――

…………ッ!?

じ、じいちゃんの言ってたことは……そういうことか……っ!?

「ど、どうしたの……イグニ?」

急に黙り込んだイグニを心配するようにユーリがイグニの目を覗き込んだ。

「ユーリ! どうして『魔王領』は大地を侵食する!?」

「えっ、それは……『魔王』の死体が『魔王領』に埋まってて『魔王』の魔力が溢れてるからだよ!」

「ああ、そうだよな。そう言われてるよな」

「ど、どうしたの。イグニ」

イグニは自分の考えが正しいかどうかを確かめるために、アリシアに尋ねる。

「アリシア! どうして、人類は『魔王』の死体を処理しない!? 『魔王』の死体が原因なら、その死体を焼くなり壊すなりして、魔力が出なくすればいい。どうして、それをやらない!?」

「きゅ、急にどうしたの? そんなの 常(・) 識(・) じゃない。『魔王領』の最深部にある『魔王城』までは周りのモンスターたちが強すぎて誰も近寄れないからよ!」

「逆に言えば……近寄れば、どうにかできるってことだな?」

「え!? ……ええ、そうよ。『魔王領』の浸食を食い止める研究は部分的には帝国内部で成功してるわ。でも、『魔王領』と面してる領土が広すぎて実用化出来てないけど……その技術を使えば、『魔王』の魔力は止められるはずよ」

「ありがとう」

イグニは自らの閃きを繰り返す。

「ああ、なんだ。簡単なことじゃないか」

「ど、どうしたの? イグニ」

モテの作法、モテの極意はともに序文と真たる後文の2文によって構成される。

ならばこそ、モテの作法その2。

――“リードする男はモテる”の後文は、

「助け出すぞ」

「え? きゅ、急にどうしたの??」

“強引な男はさらにモテる”。

「縛られた40年。解き放つんだ」

イグニの瞳は燃えている。

答えは、すでに得ていた。

―――――――――

深夜。

皆が寝静まった往来の影で出会う者たちがいた。

「ふうん。ミスったんだ。 依頼(クエスト) 」

「申し訳ない。こう見えても頑張ったんだけど……ね」

「“支配”のマリオネッタ。単体戦闘力は低くても、クエストの達成率は90%を超えてるからさ。そんな君だから、私は君に依頼したんだけど」

「いやあ、工房の入り口に罠を仕掛けてたら……まさか、工房の天井を突き破って入って来るとは思って無かったからさぁ」

「言い訳が聞きたいわけじゃないんだよ」

マリオネッタの言葉をつぶすように、少女が言った。

当たり前のように拘置所から抜け出したマリオネッタは頭を下げる。

それは異形の少女。

捻じれた角と、浅黒い肌。

その肌と対照的な銀色の髪の毛。

到底、人類の姿ではない。

少女は手に持った水晶を見つめる。

「この街に“極点”は 3(・) 人(・) 。“極点”級が5人かぁ。『聖女』を人に奪われるわけにはいかないんだよね」

「“極点”級なら1人はイグニくんだね。もう1人は『聖女』さまかな? あと3人は?」

「1人は私」

「じ、自分も入れてるんだ……」

マリオネッタは困惑。

「よし! ぶつけよう! 全員を1か所でぶつけて。弱ったところで『聖女』をかっさらっていこう!!」

「うへえ。悪魔みたいなこと考えるね。おじさん、ちょっと引いちゃったよ……」

「うん。だって、悪魔だからね」

それは100年以上前の忘れ形見。

「『魔王』さまの復活の邪魔するやつは、皆殺しだよ!」

『魔王』と人類の戦いの際、生きたまま『魔王軍』の傘下に取り込まれた種族がいる。

「『聖女』さまも殺せば?」

「何言ってるの? 『聖女』の属性は研究価値があるでしょ」

「……部外者が口を挟んで悪かったよ」

「うん! 完璧だよ! 完璧!! 私の占い結果は完璧だよっ!」

「……『古の魔術』かい」

魔術が系統立てられるよりも前から魔術を使う者たち。

その種族を、『魔族』といった。