軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第6-27話 ”咎人”と”極点”

二日目の対抗戦はそのまま中止となり、生徒たちは一旦家へと返された。

イグニたち生徒会と、フレイを除いて。

「それで、イグニ君的にはこの2人は悪くないっていうの〜?」

「悪くない……というよりは、この二人はどうしようもなかったと言った方が近いかも知れません」

イグニはそういってグレゴリーとクレーヌの方を見た。

二人とも、魔術を使えなくする魔導具を腕にはめられ、ミラの前に座らされている。

ミラはそれを見ながら、考え込んだ。

「『魔王』の話ね〜。イグニ君はどう思った?」

「一考の余地はあるかと」

「ふむふむ」

「……どうして俺に聞いたんです?」

「だって、イグニくん。『魔王領』に住んでたんでしょ? だとしたら、この子たちの言ってることが正しいかどうか分かるかなって〜」

「なるほど……」

イグニはその言葉にこくりと頷いた。

確かにイグニは『魔王領』で二年の間修行した。

それはかつてミラにも言ったことがある。

『魔王領』で起きている出来事が本当に異変なのかどうかは、そこに住んでいたものに聞けばいいというのは納得の行く話だ。

「それで、二人はどこの国の出身? なんで“咎人”になったの?」

「…………」

グレゴリーはクレーヌを抱きかかえて何も言わない。

ずっと無言だ。

「当てて見よっか? 二人共、ソーロンド傭兵国の人でしょ」

「どこですか?」

イグニは初めて聞く名前の国に首を傾げると、ミラは続けた。

「えっとね〜。何年前だったかなぁ……。10年だったか、20年だったか忘れたけど……。もう滅亡した国だよ。『魔王領』の近くにあってね〜。ずっと魔物に侵略されてたんだけど、傭兵国って名前がつくくらい国民が強くてね〜。戦場に国民を輸出して、外貨を稼いでたんだ〜」

「どうして滅亡を?」

「んー。段々とジリ貧になってって感じかなぁ。まぁ、どこの国もそうなることは予想してたし、ある程度周りの国で難民を受け入れたりはしたんだけどね。全部が全部、受け入れられるわけじゃないから」

ミラはグレゴリーたちの反応を探るかのようにそう言いながら、じぃっと二人を見た。

「合ってるでしょ」

「……ああ」

「いくら国が滅んだからって、 ロルモッド(うち) に侵入するのは許されるようなことじゃないよ〜」

「だとしても! だとしてもだッ! 正規の手段をとっても、お前たちは動かないだろうッ!」

それが、『魔王』のことを指しているなど誰が聞いても明らかだった。

グレゴリーの言葉は正しい。

王国は、『魔王』の存在すらも知らない。

“咎人”たちがいくら口を合わせて同じことを言っても、狂人の戯言と流されるだけだろう。

イグニは彼らの中から狂気にも似た、使命感を感じたからグレゴリーの言うことを信じた。だからこそ、『魔王』の存在に真実味があると思っている。

だが、周りの人間がどう思うかは別だ。

少なくとも、イグニが2人の処遇に最も話が通じると踏んだミラを連れてきたのはそのためである。

「……んー。ま、それはそうだね。実際に『魔王領』に人を派遣して、どうなってるのかを確かめて、そこから動くって感じになるから……時間はかかるだろうね〜」

「遅いんだッ! もう『魔王』は動き始めてる! この世界が終わるかも知れないんだぞッ!」

「それはさ、その時だよ〜」

ミラは焦ったような、怒ったようなグレゴリーの話を流す。

「でも、ま。うちの国にはとんでもないのがいるからね〜。いざって時には、一瞬で『魔王領』まで行けるんだよ。だからさ、安心してもいいかな」

「……だとしても、それじゃ」

グレゴリーの言葉に、ミラは笑って流した。

「んー。まぁ、これは私たちと“咎人”との差だと思うけどさ。君たち、舐めすぎなんだよね〜」

ミラはへらへらと、いつものように笑顔を絶やさずグレゴリーに指を向ける。

「君たちは、“極点”を舐めすぎ。確かに君たちと同じように、魔法を使える存在だけどね。じゃあ、魔法使いだからって、誰でもそう名のれるわけじゃないんだよ〜」

「……知ってるさ。“極点”の魔術師たちの凄さは」

「ううん。分かってないよ」

グレゴリーの言葉に、ミラは笑う。

「分かってたら、絶対に王国なんて来ない。帝国だって、神聖国にだって、アリリメニアだってそう。来ないよ、絶対に」

ミラの言葉に、何を感じ取ったのかグレゴリーは黙った。

その時、ふっとクレーヌの顔に血の気が戻る。

どうやら、魔術を使った後の後遺症から復帰しつつあるようだ。

「君たち、“極点“って何か分かってる? ”極点“って言うのはね、人の行き着いた極地なんだよ。限界点なの。確かに、魔法ってのは神様の技で人が使える時点で凄いんだけど、でもそれじゃあ人の究極地点までは行けないんだって〜」

ミラは、ロルモッドの中で最も“極点”に近い魔術師と言われている。

それはつまり、人の淵にもっとも近いということ。

「尋常じゃない精神力……それこそ、ずっと何も無い空間で100年でも200年でも自我を保ってられるような忍耐力。無限の底に落とされても、無数の並行世界に落とされても、笑いながらそこで過ごせるような精神力。ただ一つの魔術で大陸を消し飛ばしてしまうような、そんな魔術師たちが“極点”なんだよ。本当に、分かってる?」

ミラの言葉に、グレゴリーが黙り込む。

確かに同じ“魔法使い”である“咎人”たちには“極点”が軽んじられている。

それは、自分も同じ領域に立っているという 驕(おご) りの現れだろうか。

「だからさ、もう少し期待しても良いんじゃないかな。人類の守護者たちに」

「人類の守護者? 誰も俺たちを助けに来なかったのにか!?」

「そりゃ、助けるメリットが無かったからじゃない?」

激昂したグレゴリーを、ミラがただの一言で黙らせた。

「助けたいと思わせたいならさ、それだけのメリットを示さなきゃ。誰も彼も無条件に救ってくれる、そんなヒーローは居ないんだからさ」

「…………」

グレゴリーはただ、何もいわずにじっとミラを見た。

イグニはそれに何かを言おうとしたが、ただ黙った。

ルクスは、イグニを助けた。

だが、10年前に、20年前に起きた国の滅亡は助けなかった。

その事実をイグニは胸に受け入れて、彼らを見守った。

「さ、イグニ君。後処理しよっか」

「2人は?」

「んー。学長にはとりあえず話を通してみるよ〜。あの人も、凄い人だからね〜」

“賢しき”アリア。

ロルモッド初代学長にて、今なお生き残っている“勇者”パーティーの一員である。

「ほい。じゃ、イグニくん。これ」

ミラがそういって渡してきたのは、首の無い死体。

「……これって 吸血鬼(ヴァンパイア) の?」

「燃やしてくれる〜」

「あ、はい……」

イグニはそう言って『ファイアボール』を使った。