軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第6-10話 対抗戦と魔術師

開始の合図とともに、イグニたちは『荒野』の中を駆け出した。

「イグニ。これで良いの?」

「撹乱だ。向こうもこっちもお互いに初戦。なら、速度で上回ってしまえば有利に動く!」

イグニは『 装焔機動(アクセル・ブート) 』で、アリシアは箒で、イリスは地面の上を氷のように滑りながらB組の 旗(フラッグ) 、その中心を狙う。

上空には巨大な 画面(モニター) が浮かび上がり、そこには生徒たちの姿が写っている。

それは【光】属性魔術による投影である。

これによって、幅広いフィールドで戦う学生たちの活躍を観客に見せるのだ。

とは言っても、まだ一日目なので観客もそこまで多くはないのだが。

「アリシア、イリス。見えてきたぞ!」

フィールドは全長500mの円で構成されている。

それくらいの距離など、イグニたちは簡単に踏破する。

凄まじい速度でフィールドを駆け抜けてきたイグニたちの姿にB組の面々が気がつくと、慌てたように魔術を詠唱。

「『 大地は隔てて(テツラ・ディバイド) 』」

ぐん! と、地面が隆起して土壁になる。

「イグニ様! ここは任せてください!!」

だが、ここでイリスが前に出た。

そして、彼女が魔力を熾す。

「『 岩よ穿て(テツラ・フォロ) 』ッ!!」

イリスの詠唱によって、生み出された巨大な岩石の塊が凄まじい速度で撃ち出されると壁に激突!

凄まじい音を立てて壁を貫いた!!

「イグニ様! アリシア!!」

空いた穴の中に、イグニは飛び込んだ瞬間。

ふとした 風(・) の(・) 流(・) れ(・) を見た。

「アリシアッ!」

「分かってる!!」

B組の中で風が流れているということは、既に魔術が行使された後に他ならない。

だが、イグニがそれを捕らえられるのはアリシアとの間に 道(パス) が通っているから。

無論、彼女も同じように 見(・) え(・) て(・) い(・) る(・) 。

「『 風よ(ヴェントス) 』」

アリシアの詠唱で、ぶわりと風が巻き上がる。

イグニが上を見上げると、そこには大きな炎が燃え上がっている。

恐らく、大規模魔術に該当する『ファイア・エスクプロシオン』の魔術。

まっすぐ地面に落ちてそのまま爆発するだけの単純な魔術だが、その分魔術の威力は高い。

「『 貫いて(トルクエント) 』ッ!!」

アリシアの詠唱とともに、風で作られた不可視の槍がまっすぐ天に飛んでいくと、今まさに落下中だった『ファイア・エクスプロシオン』のど真ん中に激突!

そして、ぐるりと風を巻き起こして内側から魔術を 食(・) い(・) 破(・) っ(・) た(・) 。

「イグニ!」

「ああ」

当然、その間にイグニは動いている。

恐らく彼らの計画では土の壁によってイグニたちの視界を奪い、壁を突破して旗に向かって走るイグニたちの上から大規模魔術を落とすことで戦闘不能にしようという魂胆だったのだろう。

だから、旗の周りには誰も居なかった。

「……取ったッ!」

イグニが、荒野に突き立てられた白い旗を地面から引き抜いた瞬間、空中に表示されているディスプレイにその旨が表記される。

「まず1つ!」

イグニがそう旗を掲げた瞬間、『ザ……』と音を立てて通信魔道具が機動。

『防御担当班。東側の 旗(フラッグ) が集中的に狙われている。動かせるメンバーをそれぞれ2人ずつ派遣してほしい! 攻撃班はそのまま西側の旗を狙ってくれ! ……いま旗を取ったのはイグニたちか?』

「そうだ」

イグニは耳元に指を当てて、エドワードに報告する。

『俺たちが中心の旗を奪った。攻撃班がB組の西側に向かってるなら、東側に向かった方が良いか?』

『いや、それは任せる。この短時間で1つ先制できたのは大きいからな。自由に動いてくれ』

『分かった』

イグニは通信を切ると、旗を地面に置いた。

一度旗を地面から抜くと、それを魔術で検知して監督官である教師たちに知らせるギミックがついているのだ。

「エドワードはなんだって?」

「自由に動けだってさ」

「どうする? いったん戻る?」

「いや、俺たちはこのまま東側を狙いに行こう。西は攻撃班が向かってるらしい。最初の狙い通り、電撃戦で終わらせれば……」

イグニがそこまで言った時、再び耳元の通信魔導具の音が鳴った。

『おい! イグニ!! お前らが落とした旗の防衛人数は何人だった!?』

『3、4人くらいだ』

『……やられたッ!』

エドワードが短く呻く。

そういえば旗の防衛に関しては人数が少ないと思った。

だが、それは自分たちと作戦形態が違うからだと思っていたのだ。

イグニが所属するD組はイグニを最も動きやすいようにして、かなりの裁量が与えられている。

だからこそ、旗の防衛に人数を避けるのだ。

だが、B組にはイグニのように突出した人間はいない。

だから、防衛側にも攻撃側にも同じ数だけ割かないと行けないため、防御側の人数が少ないものだと思っていたのだ。

『クソ! 東側は陽動だ!! 全員、元の持ち場に戻れ! 旗を取られるぞ!!』

エドワードがそう叫んだ瞬間、上空にD組の旗が1本奪われたという表示がでかでかと映し出された。

『西側の旗が取られた! 西側の連中は急いで中心に戻ってこい! 守りを固めるぞ!! 東側のやつは持ちこたえられそうか!?』

魔導具(インカム) の向こうからは、エドワードの焦った声が響き渡る。

「いっ、イグニ様! どうします!?」

「いや、このまま行く。東側を狙うぞ」

「分かったわ」

アリシアはイグニの判断にうなずいた。

B組の中で、一体どれだけのメンバーが旗を狙いに行ったのかは分からないが、攻撃に人手を割けば守りは薄くなる。それは、このルールの必然だ。

「急ぐぞ! 残りの旗が取られないうちに!」

イグニはそう叫ぶやいなや『 装焔機動(アクセル・ブート) 』を発動。

まっすぐ東側の旗に向かって飛んでいく。

遅れてアリシアとイリスがその後ろを追従した。

「イグニ。このまま行って。私たちはここから支援する!!」

だが、ある程度進むとアリシアがそういってイリスとその場で止まった。

「分かった! 任せる!!」

彼女たちにも何か考えがあるのだろう。

イグニはそう判断して真正面を向いた瞬間、背後から凄まじい轟音。

刹那、イグニの真後ろから飛んできた巨大な岩石がまっすぐB組の西側に飛んでいくと、旗の周りに築かれた防壁を粉々に吹き飛ばした。

「……なるほど。砲撃ってことか」

イグニは笑うとアリシアたちが開けた穴に飛び込んだ。

中では急な砲撃で混乱し続けるB組のメンバーがいて、

「これで2本目ッ!」

そして、イグニは旗を引き抜いた。

わずかに遅れて、ディスプレイにそれが記される。

「よし、このまま3本目も……ッ!」

イグニがそう言おうとした瞬間、ディスプレイにはB組最後の1本が奪われた表示。

そして、試合終了を知らせる合図が鳴った。

「……勝った」

かくてD組の初戦は勝利で飾られた。