軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第4-16話 モンスターと魔術師

互いに自己紹介を終わらせてから、イグニは2人に尋ねた。

「“ 白夜(しろくろ) 姉妹”に聞きたいことがいくつかあるんだが……良いか?」

「何でもきなさーい!」

姉であるラニアの方はイケイケ。なんでそんなに朝からテンション高いんだ……? と、イグニは疑問を浮かべる。

「鉱山で見つけたモンスターの姿を知りたい」

「うん! だと思ったよ!! ちゃんと説明するからしっかり聞いてね!」

「その前に座って良いか?」

そう尋ねたのはエリーナ。話が長くなると思ったのだろう。

ナイスアシストだ。

ラニアは「良いよー」と言って席を指さすと、妹であるニエにお茶を入れる様に指示。最初は話が通じないやばい奴らだと思っていたのだが、どうにもそうでも無いかもしれない。というか、せめて通じて欲しい。

「えっとね。まず、分かってるのは相手が 幽霊(ファントム) 系のモンスターじゃないってこと」

「 幽霊(ファントム) 系じゃない?」

思わずイグニは聞き返してしまった。セッタの話では鉱山に亡霊が出たという話ではなかったか。

「逆にロルモッド魔術学校の生徒たちにちゃんと聞いておきたかったんだけど、『霊視石』に反応しない 幽霊(ファントム) 系のモンスターっているの?」

ニエが差し出したお茶を手に取って、ラニアがそう聞いてくる。

イグニはそう言われて頭の中でモンスターを検索。2年間も『魔王領』で特訓しただけはあって、様々なモンスターと戦ってきたイグニの頭には多種多様なモンスターたちの情報が入っている。

だが、

「いや、いないはずだ」

「イグニの言う通りだな。私も『霊視石』に反応しない 幽霊(ファントム) 系のモンスターは知らない」

イグニと 首席(エリーナ) が同時に首を横に振る。

幽霊(ファントム) 系のモンスターを見つけるための道具である『霊視石』が反応しないモンスターであれば、それは真っ先にイグニたちが教わるはずだ。例外があることを知らなければ、死んでしまうのだから。

「うん。じゃあ、あのモンスターは 幽霊(ファントム) じゃないよ」

「……なら、何なんだ?」

「絵を描いたから見てよ! 君たちならこれがなんのモンスターか知ってるんじゃないの?」

そう言ってラニアが奥の方から木の板を探して持ってきた。

「なんだ。絵があるのか。それなら分かりやすくて助かる……」

ドン! と、イグニたちの前にラニアが描いた絵が置かれる。

そこに書いてあったのは大きな丸と、それにくっついているかろうじて人間の身体と思われるナニか。そして、身体から一本の線がびーんと伸びていた。

「なにこれ」

「モンスターの絵!!」

ドヤ顔で応えるラニア。

イグニは沈黙。これに関しては何も触れない方が良いと判断。

ユーリは困惑。何を言っていいのか分からず沈黙を守った。

エリーナは首を傾げて、このイラストから何のモンスターなのかを考えている。真面目さがうかがえる。

「えーっと……。いくつか聞いても良いか?」

「うん! 何でも聞いて!」

「この……大きい丸は何なんだ?」

「頭だよ!」

「頭……」

頭ならもうちょっと髪の毛とか、目とか鼻とか書いても良いんじゃないだろうか。

何で丸だけなんだ。

「顔も描こうと思ったんだけど、絵が下手だったから描くのやめたんだ! あと、頭に口とか目とかいっぱいあるから」

てへっと、笑うラニア。

「えーっと、じゃあこの身体っぽいのは……」

「身体だよ!」

「……ということは、相手は大きい頭に小さい身体がくっついてるってこと……?」

「うん! そう!!」

じゃあ最初からそう言えば良いじゃん、と言わないのがモテるためのコツである。

「この身体から伸びてる線なに?」

「分かんない!」

「ふーむ」

イグニは腕を組んで考える。こんなモンスターは見たことがない。

特徴はほかのモンスターと比べても明らかで、見つけようと思えば簡単に見つけられると思うのだが。

「どうやって移動してた?」

「浮いてました」

「浮いてる?」

「はい。ぷかぷかと、空中に浮きながら移動してましたよ」

そう言って全員にお茶を渡したニエが、ちょこんとラニアの膝の上に座った。

「空中に浮いてて、頭が大きくて、身体から何かの線が出てるモンスター……」

イグニが特徴を列挙。

ユーリもエリーナも、頭の中でモンスターを探しているのだろうけど中々見つからない。

「……新種かもな」

「新種? モンスターの??」

イグニの独り言に食いついてきたのはラニア。

「……あってるかどうかは置いておいて、その可能性があるってだけだよ」

「新種のモンスターか。ありえるな」

「うん。そうだね。イグニの言う通りかも。今まで見たことあるモンスターの中で似てるモンスター全然いないし」

学生たちが口を合わせてそう言うので、ラニアとニエの2人が互いに見つめあって息を合わせたかのようにイグニを見た。

「イグニ君! 新種のモンスターを見つけたら良い事とかあるの!!?」

「い、良いこと……? まず、モンスターの命名権が与えられるだろ? あとなんかあったっけ」

イグニが他の2人に振る。

「王都の研究者に渡したら報酬が貰えるんじゃなかったか」

「あとはちょっとしたニュースになるから、名前も色んな新聞に出るね」

イグニたちの言葉に目を輝かせてラニアが立ち上がった。

「良いことしかないじゃん! 一気にやる気が出てきたよ!!」

「やりましたね! 姉さま! これで私たちも有名人ですよ!!」

テンションが高い2人。

取らぬ狸のなんとやらである。

「ここにはいられないよ! 今すぐ鉱山にいこう!!」

「良いけど、見つける宛てはあるのか?」

「ないよ!」

「そうか。無いのか。……え、無いの?」

思いっきりラニアが頷くものだから、イグニは一瞬勘違い。

「うん! 鉱山の中を歩き回るしかないよ!!」

「ぜ、前回はどうやって見つけたんだ?」

「鉱山の中を歩いていたら出てきた!!」

ラニアがあまりに元気に言うものだから、緊張感のかけらもありゃしない。

「分かった。鉱山の中を歩き回ろう」

しかしイグニも対案があるわけではないので、根性で何とかするごり押し作戦決行である。

「なぁ、イグニ。これ」

「うん? どうかしたか?」

今の今までずっとラニアが描いたモンスターの絵を見ていたエリーナがイグニの服を引っ張った。

「……いや、私の勘違いかも知れないが」

と、エリーナは一息置いて

「これ、赤ん坊じゃないか?」

そう言った。

「赤ん坊? これが?」

「ああ。頭が大きく、身体は小さい。そして、この身体の形を見てくれ」

エリーナが指さしたのはうにょうにょと線が暴れている場所。

「ちょっと体を丸めているみたいに見えないか?」

「確かに」

「それにこの身体から出てるのは……へその緒だと思うんだ」

「それっぽいな」

言われてみればそう見えてくるのだから不思議である。

「2人とも。これの大きさはどれくらいだったんだ?」

エリーナの問いにラニアとニエが顔を合わせる。

「3mくらい?」

「かなり大きかったですよね。姉さま」

「…………」

エリーナはしばし考えてから、

「鉱山に行こう」

と、だけ言った。