軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

63話 お隣さん事情。

ノスト=グランバード卿。

数年前、王都がストンフォレストから降りてきたはぐれ竜に襲われるという事件があった。

事件というか、もう災害だな。

その時に活躍したのが、当時冒険者だったノスト。最後にはドラゴンの首を一刀のもとに両断し、王都を救った英雄として爵位が与えられた。

現在は領地も継承権もない騎士爵だが、今回街の領主となることで正式に男爵位が授けられるという。

美人の嫁さんを貰って、二児の父だとか。

リア充め。

「始めまして、ヨシツグさん」

目の前に居るのが、そのノストさん。ドラゴンスレイヤーとか言うからどんな熊かと思いきや、見目麗しい優男だった。そりゃモテるわ。

で、なんで顔合わせをしているかというと。

「ヨシツグには、新しく作る街の特産物として、カカオ、サトウキビ、米の生産に協力するように」

と、ヒグマが言い出したから、である。

「どうせ、自分で育てるつもりだったという話ではないか。なら、人手も協力者もこちらで用意してやろうという話だ」

などと言われると、断る理由もなくなってしまう。シンディのおしゃべりめ。

でもって、協力者というのが、エルフの里から植物栽培に長けた人材として送られてきた、アナスタシアという名の女性。

事務の補佐としてサウザンド王国から派遣されたエヴァンゼリンという名の女性。

獣人の国からはクラウディアという黒羽の鳥獣人が連絡役として。

ハンドレッド王国から、地図作成の任を解かれたマーミャさん。

色男の回りには全国から女性メンバーが集まってくるらしい。妻帯者の癖に。

加えて、シンディ達4人娘の総勢10名で、ストンフォレスト内の土地へとやって来た。

「そうだ、旦那。いつまでも名前がないのは不便だからな、旦那の所有地になるんだから、名前を決めてくれないかい?」

シンディがそんなことを言う。

「松田家所有地とかじゃダメなのか?」

「マッターケ? 地名にするにはもう少し長い方がいいかな。意味不明だし」

それじゃ高級食材のキノコだよ。

「名前って、どんな風に決めるの?」

誰に聞いたわけでもないが、ノストが答えてくれる。

「僕が家名を決めた時は、冒険者時代の呼び名からだったね。鳥をよく取って生活していたんだ。それで、グランバード」

「ヨシツグさんはホーンラビットやワイルドボアが多かったですね」

アイリスが指摘してくるが、言うほど長く活動してるわけでもないぞ。

「角や皮でお金を稼いでいると評判がありましてよ?」

へえ、本人が知らなかったよ。

「じゃあ、マッターホルンとかにしておくかい」

それ、別の場所の名前やん? まあ、カッコ良さげではある。

「それでいいなら、それで」

何でもいいよ、もう。

でもって、今は手分けをしてマッターホルン内を調査中。南に抜ける場所がどこかにないかを探している。

最悪、トンネルを掘ることになるな。

ちなみに、所有地として認められるのは東西南に関しては山の峰を境とした内側。北はさらに高い山になっているので、東西の峰を基準にした高さまで。なので崖に囲まれた土地ではあるが、崖の部分も所有地扱いである。

「アースサーチ」

谷になっている部分や抜け道があればこれですぐにわかるのだけれど、見事にぐるりと囲まれているな。峰が低くなっている場所、というのも無い。誤差程度はあるけれども。

「ヨシツグ様、あれを」

マーミャが指差すのは、東の端突き当たりから少し南側の壁。二階くらいの高さに迫り出した箇所があり、洞窟へと続いている。

「アースサーチ」

洞窟の内部を確認すれば、ほぼまっすぐに南へ続いている様子。

「南側に抜けているみたいだな」

なら、ここを出入り口にしようか。

「この洞窟が、我が家の入り口ってことで」

「じゃあ、階段を作らないとですね」

と、言うのが常識担当のアイリスだ。が。

「いらない、いらない。見てな」

俺は北側の壁に沿って斜めに駆け上がる。

そのまま東側の壁でUターン。遠心力で坂を登り続ける。

そのまま勢いを保ったまま、上手いこと洞窟の入り口へ。

「へえ、面白いじゃないか」

続いて同じ様にシンディが。残りのメンバーも危なげなく洞窟まで登った。

クラウディアだけは羽で飛んだけど。

降りるときはそのまま坂を滑り降りれば良い。

「登れるのは判りましたが、荷物運びとかには不便じゃないですか?」

「え、秘密基地みたいで良いじゃん」

常識ばかり大事にするのはアイリスの悪い癖だな。

ほら、ノストとか降りて登ってを繰り返して遊んでるよ。意外と行ける口らしい。

そのまま洞窟を南側へ進む。崖の両側で出口になっているのだし、松明を使っても酸欠の問題はなさそうだけれど、そのうち雷光杖でも回してもらうか。俺はどうせ使えないから、手回し式電灯で照らす。

南側へ抜けた先は同じく2階くらいの高さで壁に開いた穴だった。

洞窟にもさほど傾斜は無かったし、地面の高さは同じくらいってことか。

「では、こちら側に村を作ることにします。洞窟の入り口はどんな感じにしましょうか?」

ノストとしては、俺の意向を聞いてくれるらしい。

「壁沿いに大きめの家でも建てたらどうかな? 領主の館とか公民館とか要るだろ? 家の二階から出入りできるように秘密の扉とか作ってくれたらいい感じ?」

ひなびた地方の村で殺人事件とか起きそうで。

密室トリックだな。

まあ、普段使う通路でもないし、魔獣の被害でも起きたときに避難経路になればいいんではないだろうか。

逆に知らない人が頻繁に来られても困る。

館の奥に開かずの扉、……いいね。