軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

54話 帰還前の寄り道。

マイ・ジェットは順調に飛行を続け、進路はすでに北を向いている。

すぐにまた、港町ウィステラソンが見えてくる予定。これで当初の予定はクリアだ。

「まだ、昼過ぎじゃないか。時間が余ってるんじゃないかい?」

シンディはまだ飛び足りないのだろうか?

「旦那がさっき言ってた、褒美にもらう予定の場所ってのを見に行かないか? 帰り道だろ?」

「まあ、大して変わらないか。みんなが大丈夫なら、ちょっと上から確認してもいいか?」

一応全員に確認するが、反対意見はない。

そんなわけで、少し寄り道することになった。

目星をつけていた予定地は、ファーレンからウィステラソンに向かう街道を北に行った場所。

俺が最初この世界に来た森のもっと北の位置になる。

森の北にある訳ではない。

何故かと言うと、森がストンフォレストの絶壁で遮られたその先に、カルデラ地形のように絶壁で囲まれた標高の低い平地になっているからだ。

1km四方と言うほど四角い土地ではないが、東西に伸びているので、面積的には許容範囲だろう、と思う。

マイ・ジェットで山を越えると、そこは灰暗色の岩山の中で一際目立つ緑の平原であった。

「なんとか着陸できそうだ。一度降りるぞ」

東側から侵入して高度を下げる。そのまま草原を端から端まで広く使い着陸。

ミスると衝突事故になるな、これ。

「へえ、いい感じじゃないか」

外に出ると広がっているのは下草に覆われた平原。樹木はあまり生えていないようだ。

地面がぬかるむ様子はなく、しっかりしている。水捌けは十分にあるのだろう。

「大きな生き物も居ないみたいね」

まあ、こんな閉鎖空間では生きようにも困るだろうな。

「樹の恵みは届いているようですわね」

エレメアはしゃがみこんで地面の草を弄っている。

また、妖精さんでも見えるのだろうか?

「条件としては良さそうだな。ここを希望すれば通ると思うか?」

一応シンディに確認だ。

「まあ、大丈夫だとは思うよ。そもそも、完全にストンフォレストの内側ってんじゃ、国から手の出しようがないんじゃないか?」

それもそうだな。

「むしろ、旦那は本当に此処でいいのかい? 道も無いんじゃ、空飛ばないと出入りできなくなるんじゃないか?」

「まだ、周囲の確認はできてないからなあ。もしかしたら抜け道とかあるかもしれないけど、秘密基地っぽくて良くない?」

川を航らないと行けない温泉宿とか、ロマンがあるよね。

殺人事件とか起きそうで。

「わかった。なら、この場所を希望するって伝えるよ。けど、それには必要なものがある」

「え? なに? ただで貰えるんじゃないの?」

「場所を伝えるために、この場所が判る地図が要るって話さ」

ああ、なるほど。

「ってわけで、ちょいと机を出してくれ、旦那」

そう言われたので、1m立方体のストーンウォールを出して机にする。

シンディは荷物から大きな紙を取り出して広げた。

紙は白紙だ。

「取りあえず、大陸の形とストンフォレストの形に、この場所の位置と形が明確に判るように描いておくれ」

アースサーチを使えば簡単に把握できることだな。それをそのままトレースして紙に描き写す。

大陸北はエルフの幻術の姿と食い違うが、まあアースサーチの結果で描くしかないな。変に弄ると線がおかしくなりそうだ。

「王都とファーレン、ウィステラソンの位置も描けるかい? 丸でいいよ」

お安いご用だ。

「ちょっと他が寂しいね。エルフの森と獣人の森の形とか描けないかい?」

「こう、かな」

まあ、木がたくさん生えて、森になっている場所なら判る。

大陸を某軟体モンスターに見立てるならば、左頭部に有名なハムスターのような片側ぶちがある感じだ。

「これだと、ファティマ教国の総本山はどんな感じになるんだい?」

「ああ、それならこの辺だな」

右目にあたる位置から海岸に向けて山地になっているな。

「じゃ、あとは目印になりそうなものがあったら追加で描いてくれるかい?」

川や湖、平地に大きな建造物があればなんとか判る。名前は判らないが。

空白が多くて淋しかった紙も、そこそこ賑やかになったのではないだろうか。

「ありがとよ。じゃこれは親父に送っておくな。正式に認められたら教えるよ」

そう言ってシンディは紙を荷物に戻す。

「それじゃあせっかくですし、ここでお昼にしませんか?」

アイリスの提案に乗っかって、食事の支度に入る。

もうすぐ此処が俺の土地になるのか、と思うと感慨深いものがあるな。思えば大学に進学してから社会人になって以降もずっとアパート暮らしだった。

自分の所有する土地、自由にできる場所。しかも見渡すほどの広さだ。

ストーンウォールを応用してシステムキッチンを作成し、テーブルと椅子の造形にも拘った力作で美味い昼飯を食べるとしよう。