軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35話 この中に一人◯◯がいる。

4人娘の反応を見る。

全員無表情、無反応。

いや、わざとやってるよね、それ。

この中に一人、第一王女がいる?

誰よ?

ヒント、せめてヒントをちょうだいっ。

「それでは先に身支度を整えて頂きます」

新しく出てきたメイドさん-年配で白い髪が頭頂部でソフトクリームみたいになっている-がドアから入るよう促してくる。

まて、今はそれどころでは……。

「お前はこっちだ」

俺の前には、フルプレートの甲冑を着て剣を腰にさす大男。

行き先は別らしい。一緒で良かったのに。

俺もソフトクリーム食べたい。

汗臭い兵士に混じって水浴びをする。

どうやら、この国は胸毛率が高いようだ。

中には鳥が翼を広げた形や、紋章のような形の胸毛の持ち主もいる。

これが王都の最新ファッションか。

日本のヤクザがライジングドラゴンの刺青するようなものかな。

用意された服に着替える。そのまま持ち帰って良いそうだ。

これから、拘束されて帰してもらえないとかなら、そんな言い方はしないだろう。少しは気が楽になる。

さっきから、露骨に歓迎されてないからなあ。

案内された先には、食堂のような長机。

末席に案内される。

対面にはドレスアップした4人娘。

こっちには目を合わそうともしない。

そんな居心地の悪い空気は熊のような大男の登場で遮られた。

「儂がハンドレッド国王、フィグマイアである」

ヒグマだった。

豪華な服が筋肉で張り裂けんばかりのヒグマは俺を睨み付け-よく睨まれる日だ-視線を返すと満面の笑みになった。

さっきも似たような光景をみたなあ。

「シンシア、よくぞ帰ってきた。パパはもう心配で心配で」

両手を広げて女性陣側に突撃するヒグマをシンディが顔面アイアンクローで押し留める。

「お父様、お客人の前ですわ」

普段とは異なる言葉遣いでそう言ったのはシンディだった。

そうか、お前だったか。

なお、俺の予想が当たっていたかどうかについては、言及しないでおく。それぞれが、心の中に留めておくべきことも世の中にはあるのだから。

まあ、こうしてみればそっくりな父娘だ。シンディは父親似だな。

「それで、土地が欲しいと言うことだったな」

え? 国王直々に話するの?

「ただの言い訳ですよ。話にかこつけて、シンディに会いたかっただけでしょう」

言葉は飾らなくて良い、とのことだったので今は皆普通に話している。

なので、アイリスがそう教えてくれた。

部屋に入ってから一言も喋らなかったのは、礼儀的なものでもあったらしい。

なので、俺も普通に話す。

「いえいえ、無理を言うつもりはなくて、無理なら無理で良いかなと思う次第でありますことでございます」

「普通に話しなさい」

いやユキちゃん、相手はヒグマ、じゃなくて国王よ?

なんでお前ら普通なの。

「ふむ、無理というわけではない。むしろ、役にも立っていない原野が褒美になるなら、金を出すより得と言うものもいる」

このくらいの文化レベルだとそんな評価なのか。地球じゃ海の隅々まで取り合いしてたが。

「しかし、将来的に国家運営に瑕疵を残すことになる、と言う意見もある」

賢いやつもいるようだ。

俺への貸しに土地を下賜、代わりに残す国の瑕疵、YOってな。

駄洒落? オヤジギャグ? ラップと呼んでもらおう。

「故に聞きたい。その土地で何をする?」

いや、特に何も考えてなかったよ?

「なんか、物作ったり、試したりするのに人が居ないそこそこ広い場所があったらいいな、と?」

「ほう、すると、そこにはお前が一人で住むのだな?」

「そのつもりですが?」

よしよし、と機嫌が良くなるヒグマ。なんだこれ。

「では、もうひとつ聞くが、ファーレンの傍を希望した理由はなんだ?」

「今住んでるから、ですかね?」

「では、他の場所でも構わんのだな」

「まあ、物流的に便利でさえあれば? 買い物をする拠点が欲しいだけですんで」

日本でも、スーパーと宅配があれば何も困らない。

お金は、狩った獲物を買い物の際に都度換金できればそれで済むかな。

そうかそうか、と納得するヒグマ。

「では、地図を見せよう」

そういうと、控えていた執事が机の上に大きな紙を広げた。

「大陸地図だ。我が国ハンドレッドは大陸南東部。王都ハンドマウンドがここだ」

細長い棒で地図を指し示す。

「王都から東へゆくとファーレン。さらに東に港町ウィステラソンは判るな」

街道がまっすぐ一本だな。港の名前は初めて聞いた。

「これらの北には、ストンフォレストと呼ばれる山が連なっていて、北の国サウザンドとの国境になっている」

ハンドレッドにサウザンドか。戦争したら負けそうだ。物量で。

戦いは数だよ、ヒグマ。

「ストンフォレストは互いに不可侵地域として扱われている。というより、山は険しく人の身で越えるのは不可能だ。よって、ストンフォレストのどこかであれば個人利用の範囲として認めても良い、という話になった」

他国との国境ギリギリとか、ケチくせえな。まあ、いいけど。

「自分で探索して、良さそうな場所を見つけたら申告するが良い。街から離れた場所が望みなのだろう? 街との距離にも因るが、人の入らない場所であれば1km四方くらいは認めよう」

なんか、すげえ空手形って感じだな。

北の国がちょっかい出してきても、知らないと言いたいんですね。解ります。

戦争になって、万が一そこから進攻してきたときは防波堤にされるんですね。

「ちなみに、そのサウザンドって国との関係は?」

「良好だ。現在はサウザンドの王女が我が国へ留学に来ている、な」

ふーん、なら当面、問題はなさそうか。裏をとるために他国の王女になんて関わる気もないし。

ただ、それよりちょいと気になることがある。

「なあ、大陸の地図って言ってたけど、なんで丸いんだ?」

机に広げられた地図は四角い紙に大きな正円。

日本の国旗みたいだ。

「そうか、世界地図を見るのは初めてか。この大地はこのような形をしておる」

「いや、もっと横方向に潰れた感じだろ? 北も突き出てるはずだし」

アースサーチで確認したときはそんな形だった。

某軟体モンスター型な。

「なんだと?」

いきなり剣呑な雰囲気になる。

ヒグマがそんな顔をすると怖いんだが。

「イーノ=タタークを呼べ」

どこかで聞いた名前だな。