軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

94:寝ている間にあった事

「っ!」

ワタシは王城のベッドの上で目を覚ました。

どうやらここは……以前のジャーレンの時に搬送されたのと同じ部屋のようだ。

「目覚めましたか」

「ヘルムス様」

ワタシが目を覚ましたことに気づいたのか、ベッドの脇に置かれた椅子に腰かけていたヘルムス様が声をかけてきた。

「すみません。状況を教えてもらっても良いですか?」

「勿論です。まず今はノスタが討伐されてから半日。もうじき日暮れと言う頃になります」

「はい」

どうやらワタシはぐっすりと眠ってしまっていたらしい。

そんなワタシにヘルムス様が今現在の状況を教えてくれる。

曰く、ノスタの魔道具によって生み出された魔物は、その殆どが既に討伐された。

今現在は人の目がない、手が入っていない場所に潜んでいる魔物が居ないのかを、兵士や騎士が集団になって捜索している最中。

ただし、もうじき日が暮れてしまう事から、一度捜索を切り上げて、避難所となっている場所で防衛に専念する事になるだろう。との事だった。

「そういう訳ですので、ミーメ嬢が焦って動かなければならないような状況にはなっていません。ご安心ください」

「そうですか。良かったです」

なんにせよ、一先ずの話として大勢は決したようだ。

無事に王都が守られたようで何よりである。

残りの魔物にしても、肉体を取り戻していない魔物は、ノスタの魔道具の効力によって存在出来ているだけ。

これらの魔物は魔道具の効果が切れれば、そのまま活動を停止する事になるはずなので、いずれは動きを止める事になるだろう。

そして、体を取り戻してしまった魔物はそこまで多くないはずなので……後日、確実に対処していけば、それで済む事だろう。

「ヘルムス様。被害状況についてはどうですか? 分かっている範囲で教えてください」

「まだ完全に状況が終結しているわけではありませんし、被害が集中しているであろう場所がスラム街に寄っている事もあって、正確なところは把握できていません。ただ、死者・行方不明者は合わせて百人以上、負傷者は避難中の転倒などによるものも含めれば数千人以上になることは間違いないでしょう」

「そうですか」

「王都に住んでいる人間の数と、起こされた事件の内容を考えれば、これでもだいぶ少ない方でしょう。事前に少しとは言えノスタの魔道具を回収できていなければ、王都の騒ぎに呼応してグロリベス森林が連鎖的にスタンピードを起こしていたら。最後のドラゴンが出て来るまでもなく、王都が滅んでいたかもしれません。それを考えれば、被害は抑えられた方です」

「はい」

ワタシは王都にどれだけの人間が住んでいるかを知らない。

だがそれでも、今回の事件は個人が起こした事件としては規格外の事件だったと思う。

しかし、それでもヘルムス様にしてみれば、抑えられた方であったらしい。

「……」

「もっと抑えられたのではないか。と言う顔をしていますね」

「そうですね。何かあったのではないかと思ってはいます」

「そうですね。その可能性は否定しません。後で検討し、改良できる点は改めるべきでしょう。ただ、今回の件はもう起きてしまった事です。起きてしまった以上は対処するしかありません。それが我々の仕事ですから」

「はい」

確かに、どうやればもっと抑えられたのかを考えるのは、今ではないか。

それを考えるのは、この後の調べで、今回の事件がどのような物だったのかが、もっとハッキリとしてからだ。

まだ分からない事が多い現状で考えても、碌な事にならない。

「しかし申し訳ありません。途中で倒れてしまって」

後はワタシがぐっすりと眠ってしまっていた事だが……。

それをワタシが口にすると、ヘルムス様の方が申し訳なさそうな顔をする。

「いいえ。ミーメ嬢は何も悪くはありません。そもそもミーメ嬢は『ヨモツシコメ』でしたか。あれほど強力な魔術を長時間維持し続けた後に、『モイライ』と言う規格外の魔術を行使したのです。ミーメ嬢の体格も考えれば、気を失う程度は当然の事です」

「そうでしょうか?」

「そうです。むしろ不甲斐ないのは私たちの方です。今回の事件、ミーメ嬢が居なければ、最後のドラゴンについてはどうしようもありませんでした。ミーメ嬢が気を失ったことが悪いと言うのなら、私の力の無さはもっと悪い事と言う他ありません」

「……」

そう言うヘルムス様の表情は、とても悔しそうなものだった。

もしも自分もトリニティアイであったのなら、そう言いたそうな顔だった。

「ヘルムス様」

「分かっています。と言うより、ミーメ嬢の『モイライ』を見て、改めて理解しました。半端な魔術の制御能力でトリニティアイになってはいけません。トリニティアイになる術も広めてもいけません。あれほどの力が無秩序に広まれば……確実に国が滅びます」

「そうですね。なのでワタシは必要な時が来るまで教える事は出来ません」

だが、そんな思いを断ち切って、ヘルムス様はワタシの……第零属性『魔力』と言う、第三属性を得るにあたって、知っていればその道程を大幅に短縮できる知識を表に出さないと言う方針を肯定してくれた。

ワタシはその事に感謝しつつ、小さく頷く。

「ミーメ嬢」

「はい」

ヘルムス様はワタシの名前を呼ぶと、手を握り、目を見て、それから言葉を繋げる。

「誇ってください。ミーメ嬢、貴方は国を救ったのです。今日のドラゴンの件でも、トリニティアイに関する知識においてもです」

「はい」

ヘルムス様に此処まで言われれば、ワタシとしては頷く他なかった。

陽は……ちょうど落ちたところだった。

「「……」」

それから暫くワタシとヘルムス様は見つめ合って……。

やがてヘルムス様から手を放し、椅子に座り直す。

「さてミーメ嬢。他に何か知りたい事などはありますか?」

「……。王都の被害の状況は先ほど聞きましたが、グレイシア様やジャン様はどうしていますか?」

ちょっと言語化しにくい気持ちを抱えつつも、ワタシは他の人が今どうしているかを尋ねる事にした。

気にはなっていたので。

「ジャンは王都の避難所になっている場所を騎士と魔術師を連れて巡っています。『剛拳の魔術師』殿や『石抱きの魔術師』殿も同じような事をしているはずです」

「なるほど」

「グレイシア嬢も護衛を連れて王都を見回っています。ただ目的としては、倒壊しかけている建物の確認と補強、逃げ遅れた住民が居ないのかの確認ですね。これには、火事場泥棒の類を抑制する意味もあります」

「そうですね。それは必要だと思います。それでヘルムス様は……」

「ミーメ嬢の護衛と説明役です。目覚めた時に周囲に誰も居ないよりは、見知った顔が近くに居る方が良いと判断しましたので」

「それは……はい」

ヘルムス様の言葉にワタシは納得の頷きを返す他ない。

ヘルムス様の説明が無ければ、目覚めると共に『 わたしのぐんぜい(ヨモツシコメ) 』を使うぐらい事はしていただろうから。

なので、必要か否かを問われれば、必要だったとしか返せない。

「その他の宮廷魔術師についても、それぞれの役目に沿って活動している最中です。日が暮れたところで、一度休憩に入るかもしれませんが」

「そうですね。休みはしっかりと取るべきだと思います」

「大きな負傷をしたのは『賭事の魔術師』殿くらいですが、あの方の負傷も既にユフィール様によって治療されているので問題はありません」

「はい」

他の宮廷魔術師……と言っても、二つ名ではない名前まで知っているのはユフィール様くらいなのだけれど、誰も彼も問題なく、それぞれに動いているようだ。

「さて、そういう訳ですので……ミーメ嬢の調子が悪くないのであれば、まずは夕食を食べに行きましょうか。この後に何をするにせよ、食べるものを食べなければ、途中で動けなくなってしまいますので」

「分かりました。一緒に行かせていただきます」

そして、ヘルムス様とワタシは食堂へと赴いた。