軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

47:お披露目会の始まり

「さて、そろそろ時間ですね」

「今年はどのようになるのでしょうか?」

「ま、俺っちは此処で高みの見物をさせてもらうわ」

「……」

入団から一年、訓練を終えた騎士と魔術師たちのお披露目会が始まろうとしている。

場所は練兵場。

ただ、今は未だ練兵場の中に居るのは騎士でも魔術師でもない者たちだけだ。

と言うのも、見物人はどうやら三つの集団に分かれているらしく。

一つはワタシが今居る此処。

ヘルムス様、グレイシア様、ジャン様、ワタシの他にも、名前を教えてもらっていない宮廷魔術師の方や、騎士団や魔術師団の隊長クラスと思しき方々、一部には文官も混じっている。

たぶんだが、王城に勤めていて新人の騎士たちの評価や指揮などをする人たちが集まっているのが此処なのだと思う。

そんな集まりだからなのか、練兵場からこの部屋の中は窺えないようになっている。

二つ目は練兵場の隅に組まれた席に腰掛ける、着飾った人たち。

どのような集まりかは分からないが、ヘルムス様の兄であるボースン様の姿も見えるので、各領地の王都駐在官の方はアチラに居るようだ。

ただ、複数の派閥が居るのだろう。お披露目を素直に見に来た人だけでなく、仲間内でこっそりと何か話をしている人も居る。

なので、麦がどうとか、ドラゴンがどうとか、婚約がどうとかと言う声をワタシの耳は拾っている。

三つ目はそこに誰かが居る事は分かるが、それ以上は分からないようにされた上に、厳重な警備を敷かれた部屋。

その部屋に集まっているのは陛下、宮廷魔術師長、他に数人……。

まあ、警備の厳重さと陛下が居る時点で、他のメンバーの地位のほども窺えると言うもの。

つまりはお披露目を見せる方々だ。

なお、ワタシは人数も位置も把握してしまっているわけだが……それは属性の都合なので仕方がない。

気づいている事にバレないよう、気は使っているので、それで許して欲しい。

「ミーメ嬢? どうかされましたか?」

「いいえ。何も。どう進んでいくかを楽しみに待っているだけです」

「ミーメ嬢の実力だとガッカリしそうな気もしますが……いえ、良い機会かもしれませんね。よく見ておいてください。これが我が国の新人騎士や新人魔術師の実力と考えてよいので」

「流石に魔術関係での学びは期待していません」

『それでは只今より、王城の新人騎士、新人魔術師のお披露目を開始する! 行動……開始!!』

と、始まったようだ。

拡声の魔道具によって指揮官の声が練兵場に響くと同時に、待機場から次々と騎士と魔術師たちがつっかえる事なく、けれど勢いよく出て来る。

しかし、その服装は休憩中を想定した軽い物である。

と言うのも、今行われているのは、非戦闘態勢から素早く装備を身に着けた上で、整列すると言う行動のお披露目なので。

「なるほど。この時点で既にその人の人となりが見えますね」

「そうですね。流石に邪魔をする者、もめる者は居ませんが、既に出来る者と出来ない者で評価は割れ始めているでしょう」

騎士と魔術師たちは練兵場の一角に用意された装備を手早く身に着けていく。

自分一人で素早く身に付ける者、仲間を手伝うと共に手伝われる者、いち早く終えると周りに目もくれずに整列しに行く者、緊張からか明らかにもたついている者、持っていく装備を間違えそうになって指摘されている者、周りを軽く励ましつつ動く者。

実に様々だ。

状況とその人の交友関係次第で評価基準も変わるのだろうが、ヘルムス様の言う通り、確かに評価は既に割れ始めていそうだ。

とは言え、お披露目会であり、陛下の御前だからだろう、全員が手早く装備を終えて、指揮官の前で整列した。

「次でございますね」

「懐かしいなぁ。俺っちは此処で一回転んだ」

「ほうほう」

「ミーメ嬢が楽しそうで何よりです」

その後はお披露目会と言うよりは、前世知識でいう所の運動会のような動きが続いた。

初めに一糸乱れぬ行軍を。

次に土属性魔術師たちによる、土で出来た壁を作る魔術の一斉行使で、アスレチックのようなコースを作る光景を。

そうして出来たコースを、パルクールのような動きで以って騎士と魔術師たちは駆け抜けていき、自分たちの行軍能力を見せつけていく。

うん、これらは非常に重要な事だと思う。

一糸乱れぬ行軍が出来る事は戦場へいち早く到達するには必須の技能。

戦場への道程も、戦場そのものも、整った道とは限らないので、悪路走破技術も絶対に必要。

土属性魔術師の建築能力も陣地を築いたり、道を整えたりするのに活用できる。

これらが出来ないのなら、武力を行使する以前の問題なので、本当に大切だろう。

「此処からは模擬戦または演武でございます」

「一応言っておくが、此処で出ているのは素行に問題がない連中な」

それらが終わると、次は模擬戦や演武が始まる。

ただ、模擬戦とは言っても、使われる武器は刃引きされただけで金属製であり、魔術の使用も許可されている本格的な物。

演武についても、見栄えよりも効果の方を優先された実戦的な物となる。

そして、此処からは……ワタシにとっては、少々残念なものを見る気分になるものだった。

「はあっ!」

「せいっ!」

まず行われたのは肉体属性の騎士同士による模擬戦。

お互いに自身へ身体強化の魔術を施した上で、武器を振り回している。

が、彼らが使っている魔術はひたすらにただ魔力を込めただけの代物だ。

要所で込める魔力量を変えるとか、八顕現の付与と強化を合わせるとか、装備品も肉体とみなして強化の範囲に巻き込むとか、八顕現の操作による特殊な挙動の実現だとか……。

ちょっと考えれば思いつくような工夫が何もない、非常に残念な魔術……いやもう、魔術と呼んでいいかもちょっと怪しいものだった。

で、騎士同士の模擬戦はだいたい同じようなノリだったし、ほぼ全員が第一属性が『肉体』の魔術師だった。

うーん、騎士だから仕方がないのだろうが……。

八顕現の強化と付与しか見なかった気がする。

「「「『ファイアボール』!」」」

次に行われたのは火属性魔術師たちの演武。

五人一緒に出てきた彼らは、詠唱のタイミングを合わせて、一斉に魔術を放っている。

お互いの魔術がぶつかり合わないように注意も払っているようで、これについては素直に関心出来た。

問題は使っている魔術か。

数を優先するなら ボール(球) 。放った先に残留させるなら ボルト(矢) 。威力を重視した ランス(槍) 。範囲を重視した ウェーブ(波) 。進路妨害と壁の生成が出来る ウォール(壁) 。着弾地点で小規模な爆発を発生させる ボム(爆弾) 。

これらの使い分けは素晴らしいし、誰が魔術を行使してもだいたいの効果は同じに出来ているのも、運用を考えたら非常に良い事だと思う。

ただ、八顕現で言う所の生成、操作、変形、稀に強化しか、どの魔術師も使っていないようだった。

で、これは他の属性……水、風、土、光でも同様のようだった。

勿論、今回のお披露目では他の形状の魔術を単純に見せていないと言うのもあるだろうが……この分だと、付与を使うと言う考え自体が魔術師たちには無いように思えた。

なお、他の属性……氷、雷、金属、植物は人数の都合で演武にはそもそも参加していないようだったし、精神と闇はそもそも一人も居なかった。

まあ、前者の四属性は生成が難しい属性だったはずだし、後者の二属性はそもそも学びたがらない人間が殆どなので、居ないのは仕方がない。

余談だが、騎士にしても魔術師にしても、男女比は20対1くらいの極端なものである。

こればかりは戦闘を主とした職業なので致し方ないだろう。

「……」

「ミーメ嬢がガッカリしていますね。ですが、これが普通の騎士であり、魔術師なのです」

「そう言えば貴族院では生成、操作、変形、強化、付与の五つしか教えていないと言う話でしたね」

「ええそうです。その上で、騎士はほぼ付与一つだけで、稀に強化に行き着く者が居る程度。魔術師は生成、操作、変形のみで十分と考えるのが大半。肉体属性以外の付与は魔道具職人を想起させると言う事で馬鹿にする者も何故か居ますし」

「……。教育関係の改革が必要では?」

「かもしれませんね。ただその場合には、魔術の悪用を考える者をどうやって弾くか。と言う問題が立ち塞がるのですが」

うんまあ、これは確かにガッカリする。

貴族が学ぶべき事の多さを考えたら、魔術の研鑽に使える時間が足りていないのは分かる。

ワタシのように勝手に学んで育つのが異端で、普通は貴族院で習った以上の物を求めようとしないのも分かる。

だけど……もうちょっと考えて使う気にならないものだろうか?

「うーん……少し考えますか」

「おや? 何か考えている事でもあるのですか?」

流石に少し対策と言うか、魔術はこれだけの事が出来るのだと示した方が良いのではないかと思う。

複数種の強力な魔物が生息しているグロリベス森林の深層と言う魔境だって王都の隣にある事が明らかになったのだし。

「ええ少し」

「では是非とも詳細を……」

「ヘルムス様。出番でございます」

「……」

さて、そんな事を考えている間に、どうやらお披露目会の裏目的……問題児たちを分からせるための模擬戦が始まるようだった。

ヘルムス様の出番が迫り、呼び出し役が部屋にやって来ていた。

「だそうです。頑張ってください、ヘルムス様。ここで応援していますので」

「頑張ってまいります。ミーメ嬢」

とりあえずヘルムス様は気合い満々で部屋の外へと出て行った。

「模擬戦だって分かってんのか、アイツ」

「大丈夫でございます。恐らくは」

「?」

なお、出ていくヘルムス様を見て、ジャン様とグレイシア様は何処か呆れた様子だった。