軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

桜の国チェリンと七聖剣【百九十】

ローズの住む寮に到着。

俺はみんなを代表して、コンコンコンと扉をノックした。

「――ローズ、俺だ。アレンだ」

「……アレン……? どうした……っと、リアたちも一緒だったのか」

部屋から出てきた普段着のローズ。

その目は、ほんのりと赤く腫れていた。

もしかしたら、一人で泣いていたのかもしれない。

思わず、「大丈夫か?」と口を零してしまいそうになったけれど……無理矢理、喉の奥へ呑み込む。

「みんな集まって、いったいどうしたんだ?」

不思議そうに小首を傾げる彼女へ、バッカスさんのお墓の件を話した。

「――というわけなんだけど、どうかな?」

「……ありがとう。気持ちは嬉しい。だが、少し危険過ぎやしないだろうか……? もしかしたらチェリンにはまだ、ディールやフォンのような奴等が、潜伏しているかもしれない」

「その点については大丈夫だ。今回は、レイア先生が付いて来てくれる」

つい先ほど、千刃学院を出立する直前、偶然ばったりと先生に出くわした。

そこで簡単にこちらの事情を説明したところ、彼女は二つ返事で「同行しよう」と言ってくれたのだ。

リーンガード皇国の国家戦力である『黒拳』レイア=ラスノート。

いろいろとポンコツなところも多いが……。

こと『戦闘』において、彼女ほど頼りになる存在はいない。

先生が一緒に付いて来てくれるのならば、桜の国チェリンへも安心して行くことができる。

「そう、か……みんな、本当にありがとう。お爺様は、とにかく派手なことが好きな人だからな。どうせなら大きくて目立つ、立派なお墓を建ててあげたい。それに――アレンたちが顔を見せに来てくれたら、きっと喜ぶだろう」

こうして俺たちは、再び桜の国チェリンへ向かうことになったのだった。

翌日。

俺・リア・ローズ・会長・リリム先輩・フェリス先輩・レイア先生・十八号さんの八人は、アークストリア家のプライべートジェットに乗って、桜の国チェリンを訪れた。

「……ふむ、さすがにかなり混乱しているようだな」

喧騒に包まれた大通りを歩きながら、レイア先生がポツリと呟き、

「国宝『億年桜』の消失、無理もないことでしょう」

十八号さんが、そこに相槌を入れる。

(……あの美しい桜は、もう二度と見られないんだな……)

バッカスさんが亡くなったためか、ほんの数日前まで満開に咲き誇っていた億年桜は、完全に消えてなくなっていた。

「……お爺様」

ローズは右手を胸にあて、もの悲しそうな表情を浮かべる。

その後、周囲に警戒を払いながら、人混みで溢れた道を右へ左へと進んで行く。

「――っと、あれだな?」

先頭を進むレイア先生が振り返り、俺たちはコクリと頷く。

七聖剣フォン=マスタング・元皇帝直属の四騎士ディール=ラインスタッド、二人の『真装使い』と殺し合った無人島が、目と鼻の先にあった。

あの島は特殊な海流に囲まれているため、海路では辿り着くことはできない。

また空路も整備されていないため、文字通りの『孤島』となっている。

以前は飛空機を使って移動していたのだが……。

今回は可能な限り目立つ行動を避けるため、ゼオンの闇を使って簡易的な橋を架けた。

「ほぅ、闇で足場を……。相変わらず、応用の利く能力だな」

感心した様子の先生に、「ありがとうございます」と返答。

ちなみにこの技は、バッカスさんが億年桜の根で橋を架けていたのを見て閃いたものだ。

無事に島へ辿り着いたところで、レイア先生が十八号さんへ目を向ける。

「十八号。念のため、この島の外周を見張っておけ。怪しい人物が接近してきた場合は、すぐに私へ連絡するんだ」

「即座に交戦状態となった際は、どのような対応をすればよろしいでしょうか?」

「敵に真装使いがいた場合に限り、特別にお前の真装展開を許可する。ただし、『ポータル』は目立つ場所に二か所作成すること、戦闘が長引きそうならば一時撤退すること、そして何より―― 絶対に(・・・) 熱くなって(・・・・・) 『 呑まない(・・・・) 』 こと(・・) 。この三つは死んでも守れ。わかったな?」

「はっ、承知いたしました」

「うむ、では行け」

十八号さんは 恭(うやうや) しく頷き、すぐに仕事へ取り掛かった。

今の会話を聞く限り、レイア先生と十八号さんも『真装使い』のようだ。

さすがというかなんというか……とても心強い。