作品タイトル不明
桜の国チェリンと七聖剣【百三十四】
「――ディール、今すぐ能力を解け」
「あらら、そいつはなんの冗談です? こんなに気持ちのいい悲鳴、どうして絶やすことができやしょう。――それよりせっかくの機会なんですから、アレンの旦那も一緒に楽しみやせんか?」
奴は醜悪な笑みを浮かべながら、吐き気を催すような提案を口にした。
「……もういい」
これ以上、こんなやつと話しても時間の無駄だ。
そう判断した俺は、何もない空間へ右手を伸ばす。
「滅ぼせ――< 暴食の覇鬼(ゼオン) >」
呼び掛けに応じて、空間を引き裂くように真の黒剣が姿を見せた。
かつてないほど静かに魂装を展開した俺は、闇の凝縮された一振りを優しく握り、ゆっくりとへその前へ移動させる。
「ほぅ、ほぅほぅほぅ……! そいつが噂に聞く、『黒剣』というやつですかぃ! これだけ距離が離れているにもかかわらず、とんでもねぇ『圧』を感じやす。こりゃあっしも、ちょいとばかし本腰を入れる必要がありそうだぁ……」
ディールは初めてまともに剣を構え、明確な戦闘態勢を取った。
「――行くぞ」
「えぇ、いつでもどうぞ」
短い応答の後、俺は力強く地面を蹴った。
その瞬間、まるで鉄を踏み抜くような破砕音が響き――。
「なっ、消え……!?」
俺はディールの懐深くへ、必殺の間合いへ踏み入った。
「ま、ず……ッ!?」
奴は慌てて防御体勢へ移行するが――もう遅い。
「六の太刀―― 冥轟(めいごう) ッ!」
漆黒の闇を纏った特大の斬撃が、ゼロ距離にて解き放たれた。