軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

桜の国チェリンと七聖剣【十九】

六個もあった三段重ねのお弁当が全て空になり、お花見は大盛況のうちに幕を閉じた。

「いいお花見だったな」

俺がそんな風に話を振れば、

「えぇ、とってもおいしかったわ!」

「やはり故郷の桜が一番だ」

リアとローズは、とても『らしい』回答を返してくれた。

「ふふっ、みんなに楽しんでもらえて本当によかったわ」

春合宿の主催者である会長は、どこか安心したように柔らかく微笑み、

「いやぁ、食った食った! いつもの三倍はうまく感じたぞ!」

「また来年も、みんなで一緒に来たいんですけど!」

リリム先輩とフェリス先輩は、とても満足気に笑った。

そうして楽しく感想を交換し合い、ほどよい時間となったところで、

「さて、それじゃそろそろ――遊びましょうか!」

会長はレジャーシートの端で 重石(おもし) となっていた袋を開き、フリスビー・バドミントン・バレーボールなど様々な遊び道具を取り出した。

「さ、さすがにここではちょっと難しくないですか?」

辺りはたくさんの花見客で埋まっており、とてもじゃないが遊べるスペースはない。

「それなんだけど……実は『億年桜の裏側』には小さな孤島があってね? せっかくだからそこへ移動して、満開の桜を見ながら遊ぼうと思っているの!」

「へぇ、そんないい場所があるんですか?」

「えぇ、しかも――なんとそこは無人島! どれだけ騒いでも、誰にも迷惑を掛けることはないわ」

「それは最高ですね!」

俺は『人よりも家畜の数が遥かに多い』ゴザ村の出身ということもあって、あまり人混みが得意じゃない。

(最近はオーレストの街で生活しているから、ちょっとずつ耐性は付いてきたんだけど……)

世界的な観光地『桜の国チェリン』レベルの人混みは、さすがにまだちょっとしんどかった。

実際、さっきから少しだけ『人酔い』の症状が出始めている。

このタイミングで無人島へ行けるのは、正直とてもありがたい。

「無人島か……なんだか心が躍る響きだな!」

「シィにしては珍しく、とてもいい案なんですけど……!」

そうしてリリム先輩とフェリス先輩も賛同したところで、リアは「んー……?」と小さな 唸(うな) り声をあげた。

「億年桜の裏側って、とても好立地だと思うんですけど……。どうしてそこは無人島なんですか?」

そんな彼女の疑問には、ローズが答えてくれた。

「この周辺は、特別潮の流れが速くてな。生半可な船では、あの島へ上陸することはかなわない。かつて滑走路を建設して空路を整えることも計画されたが、『そこまでするほどの経済的価値はない』と政府から放置された経緯がある」

「なるほど、ずいぶん詳しいのね……」

「まぁ、一応十歳まではこの国で育ったからな」

そうして一つの問題が解消したところで、ローズは新たな質問を投げ掛けた。

「しかし、どうやってあの島へ移動するつもりなんだ? 海路・空路・陸路、全て使えないはずなんだが……?」

「ふふっ、ちゃんと『秘密兵器』を用意してあるから大丈夫よ。それじゃ早速準備するから、ちょっとだけ待っててね!」

彼女は上機嫌にそう言うと、小型の黒い無線機を起動した。

「――私よ。早速で悪いんだけれど、億年桜の東海岸へ『アレ』を運んでくれるかしら? ……えぇ、そうよ。ちゃんと六人分よろしくね?」

そうしてアークストリア家の使用人へ連絡を入れた会長は、

「さっ、行きましょうか!」

とてもいい笑顔を浮かべて、鼻歌まじりに歩き始めたのだった。