軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

94話:2年目の海の予感

ララバイのシオンは、双子の弟を虐げていた。

そんな噂が、少しづつ流れ始めてる。

人の口に戸は立てられない。

あの日、伊織が明かした私の真実は、徐々にネットに拡散されている。

証拠もなくただアンチが騒いでいるだけのよくあるゴシップとして、今はまだ大事にはなってない。

でもその噂は、信憑性を増しつつある。

テコ入れが必要だ。

離ればなれになった家族との感動の再会。

そのくらい大きなインパクトを、見せつけないといけない。

でも急がないと……。

期限……フレンドシップデーのライブまでにはもう一か月もない。

その間に、伊織が少しは話を聞いてくれるようにならないと。

あの子には絶対に、私のところに来てもらわなければ。

私と家族の本当の姿を、ファンに知られるわけにはいかない。

でも、私自身は何もできない。

あとは、協力者次第だ。

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七月中旬。夏休みを直前に控えたある日。

じりじりと暑いいつもの理科室を避け、多少冷房の効いている教室で昼食を囲む。

「海に行こう!」

そんな中、突然宮本がそんなことを言い出した。

「どうした、 藪(やぶ) から棒に」

「藪じゃなくて海に行こう!」

「いいのか? 受験勉強はどうした」

「疲れた! たまには遊びたい!」

三年の七月ともなると、そこそこ受験ムードがでてきている。

といっても、部活は八月頃まであるし、少ないが就職組もいる。

この時期で既に全く遊ばず勉強一筋、なんて生徒はそうそういないだろう。

ちなみに、総司、細井、宮本は進学志望。秋本は、家の花屋で働くつもりらしい。

俺はもともと米軍志望だが、最近、リリーに言われた通り士官訓練を受けながら大学に通うという選択肢も考え始めた。

「ところで、みんな行くの? 行かないの?」

宮本が皆の意思を確認する。

「まあ、俺はいいけど」←俺

「俺も行くぜ」←細井

「私も絶対行く」←筋肉フェチ

「俺はめんど……」←そうj

「行くよね⁉ 絶対行くよね⁉」←筋肉フェチ

とまあ、おおむね参加の意を示す面々。

「私も、行きたい」

チーナも同じく、海に行きたいようだ。

海水浴……かあ。

「去年はチーナがクラゲに刺されたり、クラスメートに騒がれたりと散々だったからな。今年はリベンジといくか。」

「あの時はありがとね、ヨリ」

「俺も助けてもらったから、お互い様だ」

去年の今頃、チーナはまだほとんど日本語もわからなかった。

それでも大きな声を上げて俺をかばってくれたことは、よく覚えている。

「じゃあ、今週の日曜日でいい?」

「「いいぞ」」

日曜か。なら土曜のうちに水着を新調しておこう。

訓練用のは遊びには向かないデザインだし、去年のはもう小さいだろうからな。

そのとき、

「あ、ナオちゃんだ」

「ナオちゃんこんにちは!」

「久しぶりだねナオちゃん」

教室が妙に騒がしくなったと思ったら、前の扉から平手が入ってきた。

人気アイドルとして活動している彼女は、学校に来ない日のほうが多い。

今日のように、昼から登校することもしばしばだ。

「みんな、おっはよ~! あ、もうそんな時間じゃないか」

「ナオちゃん、来月のフレンドシップデー楽しみにしてるよ」

「私も、絶対見に行くね」

フレンドシップデーとは、例の海軍基地の一般公開イベントだ。

そのイベントでララバイがライブをすることは既に告知されている。

近場で人気アイドルの生ライブが見れるとあって、みんな大いに期待している。

平手は自分の席に荷物を置くと、周りの昼食の誘いを断りつつ、教室の後方へ歩みを進める。

そして、隅に陣取る俺たちのもとへ。

なんだ……またか。今度はいったい何の用だろうか。

「どうした、平手」

「あ、伊織くんじゃなくて、清水くんに用事があるんだけど……」

……かあああぁ。

「俺に?」

「うん、ちょっといいかな?」

「……わかった」

そういって席を立ち、連れだって教室を出ていく二人。

珍しい組み合わせだな。

一応美男美少女ではあるから、意外と絵にはなるが、総司に用っていったい何だろうか。

教室内の生徒たちも、なんだなんだとにわかに騒がしくなる。

そんな中十分程たったところで、二人が教室に戻ってきた。

「みんなおまたせ! さっ、お昼ごはん食べよう!」

「……」

出て行った時と特に変わりのない様子で、自分の席に戻っていく二人。

帰ってきた総司に、細井が声をかける。

「なんの話だったんだ清水」

「今度のフレンドシップデー楽しみだなって話だ」

「ウソだろ」

「わざわざ席を外したんだ、言えるわけないだろう」

細井の問いかけをすげなくあしらう総司。

こうなったこいつは絶対にしゃべらない。

何を言われたか聞きだすのは無理だろう。

「え? 清水くんとは何にもないよ~」

平手のほうも、何も話してはくれなさそうだ。

「それよか、海水浴の話に戻そうや」

露骨に話題をそらしにかかる総司。

「そうだね。じゃあみんな、日曜日の10時に海の家の駐車場集合で!」

だが健気にそれに引っかかる宮本。

そして、ひそかに話を聞いている者がいることに、俺たちは気づかなかった。