軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

74話: はちゃめちゃ

ある日、学校の中、告白の現場に、出会った。

「それは……それは……お前の事が、好きだからだよ!!」

チーナが職員室に行っている間暇だからと校内をぶらぶらしていたところ、別館への渡り廊下で細井と宮本が話している所を偶然見かけた俺。

そこで、思慮浅い男女が言い合いをした挙句、お互い取り返しのつかないことになっていた。

久しぶりに散歩しようかなとか思った5分前の自分をぶん殴りたい!!!!

盗み聞きするつもりなんてしたくないのに!なんでよりによって告白ジャストのタイミングで耳に入ってしまったのか!

「好き……って、え、どういう……」

「ちゃんとライクじゃなくて、ラブの方だぞ」

「えっと、その……」

勢いで告ってしまった手前引くに引けず、とりあえずゴリ押している細井。

まずい、さすがにこれ以上聞いてしまう訳には行かない!

とりあえず2人の名誉の為にも、ここは何も見なかったことにして立ち去ろう。

細井が報告してきたら知らなかったフリして……

「えっと、私。いおりんが好きだから!ごめん!」

「ちょ、まって宮本!」

ダッダッダッ。

やめろみやもとおおおぉ!

こっちに走ってくるなあああぁ!

盛大に細井を振った宮本は、渡り廊下の伸びる2方向のうち、正確に俺のいる方を選んで走り出した。

このままだと鉢合わせる、どこかに隠れないと!

頼む某スニーキングのプロ!俺に力を貸してくれ!

数秒後、走って来た宮本が渡り廊下を抜け本校舎に足を踏み入れた瞬間、

「あれ、いおりん?なんでダンボールかぶろうとしてるの?」

「!」

「もしかして、聞いてた?」

「……クライマックスだけ」

スネーーーーー〇ーーク!!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「宮本、何飲みたい?買ってやるぞ」

「いちごジュース」

「ありそうで無いのやめろ」

あれから5分後。

なんとなく放っておく訳にも行かないので、ひとまず人気のない中庭の休憩所に移動した俺たち。

木のテーブルを挟んで向かい合う形でベンチに座る。

宮本はあれからほとんど口を開かず、随分沈んでいる様子。

俺たちの間には、大変気まずい雰囲気が流れていた。

こういう時、相手の心の整理がつくまで待ってあげるのがいいと聞いたことがある気がする。

だが、俺は何かしていた方が心の整理がつくと思っているので、あえて踏み込む事にした。

「えっと、すまん。盗み聞きするつもりは無かったんだが、たまたま耳に入ってしまった」

「大丈夫、わざとじゃないのは分かってるよ。いおりんいつも運が悪いから……」

「冗談じゃないだけ心に来るんだが」

そうだね、割と運も間も悪いことが多いね。マーフィーの法則ばんざい。

「まあ聞いちまった手前、何か言わないといけないと思うんだ」

「……うん」

聞いてしまったというのは、細井の告白云々ではなくむしろ宮本の気持ちの方。

正直、宮本が俺に好意を持ってくれているのは薄々気づいていた。

しかし、俺が気づいているというだけで勝手に返事はできない。

だがはっきりと聞いてしまった今、これにはきちんと答える必要があるだろう。

オレンジ色の西日が、緊張する宮本の表情を照らす。

「俺はチーナのことが好きだ。だから、宮本の気持ちに応えることはできない」

「うん……そうだよね。でも……」

「別れるつもりもないし、これはチーナにも言っていないが、結婚まで考えてるつもりだ」

俺の答えは、流石の宮本でも予想していたことだろう。

だがそれでも、諦めず食い下がって来そうなそぶりがあった。

でも宮本には、俺に囚われていて欲しくない。諦めて、次の一歩を踏み出して欲しい。

だから俺は、あえてはっきりとした言葉を選んだ。

「いおりんのことはキッパリ諦めて、慎二くんを好きになった方がいいってこと?」

だが傷心した宮本は、少し過剰な受け取り方をしてしまったようだ。

「別に、細井のフォローのために今話してる訳じゃないよ。それに、細井を勧めて上手くいかなかったりしたら、俺責任取れねえし。今こうして話してるのは、単純に俺のけじめをつけるためだよ」

「じゃあ……じゃあ……」

俺の真意を理解するに連れて、次第に宮本の目が潤んでいく。

「私がいくら頑張っても、待っても、いおりんは振り向いてくれないってこと?」

「そういうことだ」

宮本の目から、ポロポロと滴が流れ始める。

だが俺は、ごめんと謝ることはしない。誰も、悪くないのだから。

「そっか、そうだよね。チーナちゃん、可愛いもんね」

「確かにチーナは可愛いけど、それだけで好きになったりはしない。俺のために俺の望まない決断をしてくれるとことか、意外と俗なノリについてこれるとことか、いたずら好きなとことか、新しい事に物怖じしないとことか」

「うん……そうだね」

「でも宮本にだって、みんなに無いいいところがたくさんある」

「そうなの?」

俺の言葉を聞いて、宮本は少し顔を上げる。

「お前の明るさには元気をもらうし、何にでも全力なとこ見ると、自分も頑張らないとって思える。それにちっちゃいのだって、人によっては何にも替え難い魅力なんだぞ」

「それってたまに聞く、合法ロr……」

「それ以上はいけない」

いろいろとセンシティブな部分に引っかかるんでやめてください。ていうか高校生は普通に違法です。

「俺の口から、他の男を好きになってくれって言うのもいろいろと失礼だと思う。でもどうか、宮本には俺に囚われ無いで欲しい。悪目立ちする俺が目に入るのはわかるけど、案外ビッグな奴っていっぱいいるんだぜ?」

「いおりんはかなりビッグだと思うけど……」

そして宮本は少しだけ唇の端を上げると、ポツポツと言葉を紡ぎ始めた。

「いおりんとチーナちゃんはお似合いのカップルだって、私も思ってるんだよ?それにチーナちゃんだって大事な友達だから、別れて欲しいなんて思ってない」

「ああ、分かってる」

「でも、何となく、諦められなくって」

「理屈じゃ無いって、言うもんな」

「だから、最後に1つだけ聞かせて!」

「何だ?」

最後の希望に縋り付くような、未練を断ち切るような。そんな切実な表情を浮かべる宮本。

宮本が前に進む助けになるのなら、何だって答えてやるさ。

「一夫多妻制の国に引っ越したりできない?」

「え…………。ふ、ははは!何だよそれ!」

「こっちは真面目なんだよ!?」

「悪い悪い。やっと宮本らしい言葉が聞けて、安心しちまって」

うん、これが宮本のいいところだ。

「でもすまん。俺の夢は米海軍に入ることだ。それはできない」

「うう、そうだった……。じゃあ、最後にいっこだけお願い!」

「2個目な気がするけど、何だ?」

「右手出して」

「こうか?」

せめて思い出にと、手でも繋ぎたいのだろうか。まあそのくらいならいいか。

言われた通り差し出した俺の右手に、宮本の右手が近づいてくる。

そして……

「いおりんの、ばかああああぁ!」

「痛って!何で叩くんだよ」

パチン!っと軽い音が響き、俺の右手が軽く揺れた。

宮本の頬にはもう、乾いた涙の跡しか残っていなかった。

「よし、すっきりした!ありがとね、いおりん!」

「お、おう」

「慎二くんとのことは気にしないで大丈夫だから!じゃあね!」

そうして小さな元気の塊は、俺を残して騒がしく帰って行った。