軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

70話: これだから男子は

「校則に、恋愛禁止の条項を加えたいと考えています!」

「「「はああああぁ!?」」」

横手会長のトンデモ発言を受けて、生徒たちが思わず叫び声を上げる。

そりゃそうだ。いきなり恋愛禁止なんて、横暴にも程がある。

あ、後ろの総司から邪のオーラを受信しました。新会長おもちゃ判定待った無し。

「皆さんお静かにお願いします。もちろんですが、これはまだ正式に決定した事ではありません。生徒会からの提案として、これから先生方に審議して頂くことになります」

事の次第を説明し始めた横手新会長。

しかしそれを聞いた生徒たちからは、盛大なブーイングが飛び始める。

「そんな意味不明な校則、提案であっても生徒会が勝手に決めんじゃねぇよ!」

「選挙に勝ってすらねえ代理会長のくせに、偉そうに恋愛禁止なんてふざけんな!」

「そうよ横暴よ!」

だがこの程度の反発は予想の範疇なのか、涼しい顔で「お静かに」と場の収集を促す横手。

そしてある程度落ち着いたところで、さらなる説明を始めた。

「私が恋愛禁止を提言したいと考えたのは、そもそもこの学校の校則が非常にルーズだからです。学生の本分は勉学……それなのに、アルバイトの許可、芸能活動の許可、運転免許の取得許可など、勉学以外の活動を推奨するような校則が多すぎます!」

まあ確かに、この学校の校則は結構緩い。

前任のメガネ会長も言っていたが、自由な校風ってのがこの学校のいいところだからな。

俺が渋々詩織と同じ高校選んだのも、軍関係のいろいろを認めてもらえる事を優先した結果な訳だし。

俺が心中で解説している間にも、横手の演説は続く。

「もう一度言いますが、学生の本分は勉強です。しかし今の生徒たちには、その姿勢とは程遠い物があるように思えます。それを正すためにも、学内活動に不要な要素は排除すべきです!しかし、アルバイトや芸能活動など、すでにある程度の地位を得てしまった方々にとっては、それをすぐに辞めろと言われても難しいことは理解しています。そこでまず、即時施行可能な恋愛禁止という校則を取り入れる……という結論に達しました」

なるほどな……。

まあ筋は通っていなくもないが、学生の本分が勉強ってところが納得いかない。

勉強以外の経験が将来役に立つことだって、必ずあるはずだ。

まあチーナとの仲を裂こうってんなら、どんな建前だろうが受け入れられんが。

新会長の演説がひと段落し、館内に一瞬の静寂が流れる。

だがその静寂は、すぐにまた生徒のクレームで塗り替えられた。

「恋愛できねえ高校生活なんて、認められるか!」

「メガネ会長の政策がよかったから、選挙でもメガネ会長が勝ったんだろ!」

「そうだ!代理なんだから、メガネ会長の方針にしたがってろ!」

メガネ会長大人気。

対して横手会長の反応は……

「わかりました。みなさんがそこまでおっしゃるなら、こちらも譲歩しましょう。全校の意向を汲むのも生徒会の務め……」

あれ、意外と折れてくれる感じか?

「私も明日から、メガネをかけましょう」

「「「何も譲られてねえ!!!!」」」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

放課後……と言っても今日は午前で終わりなので、12時過を少し回った程度の時間。

俺は、横手のクラス……2年4組に来ていた。

細井の猛プッシュにより、ほぼ無理やり同行させられた形だ。

何故か今回の件、細井にとってはいても立っても居られなかったようで、直接横手に抗議すると言って聞かなかったのである。

そして宣言通り、細井は今俺の目の前でバトルしているところだ。

「高校生の恋愛ってのは、今しか出来ないから価値があんだよ!」

人の減った教室の角で熱く語る男、細井。

数名残っている生徒は、俺たちの討論の様子を興味深そうに眺めていた。

「制服デートだって学校で一緒に弁当食べたりだって、今しか出来ないんだ! それを奪う権利なんて、横手会長には無いはずだ!」

おお、いい事言うな……細井。

周りの生徒たちが、そうだそうだと囁く声が耳に入る。

俺も多少文句を言ってやろうかと思っていたが、ここは細井に任せた方がいいかもしれない。

ていうか、何がここまで細井を突き動かしているのだろうか。

今日の細井は、いつになく本気に見える。

腕組みをしつつ壁にもたれかかって、それを聞く横手。

その目は細井に対して冷ややかな視線を放っている。

そして口を開いたその声音にも、同様の冷たさが込められていた。

「高校生活での異性交際に、価値なんてないわよ」

バッサリ言い放つ横手。そのあまりな言い様に、細井の後ろに控えている俺も、少し思うところがあった。

だが俺が口を開く前に細井が声を上げ、そのまま2人の論争が始まってしまう。

「価値なんて無いって、どういうことだよ」

「高校生なんて、まだまだ精神的に未熟。そんな時期の恋愛なんてただの真似事よ。特に男子の精神年齢はすごく低いって有名な話だしね。卒業しても付き合い続けて、そのまま結婚して、生涯を一緒に過ごすなんて……極めて稀なケースよ」

「高校生はガキだから、恋愛しても意味ねえってことかよ」

「別にそこまでは言わないけど、もっと他にやるべきことがあるとは思うわ」

「なっ……」

口論を通してヒートアップしていく細井。

頭に血が上って顔が赤くなってきてる。今にも怒鳴り散らかすんじゃないかってほどだ。

確かに横手の言い方にはトゲがあるし、俺だっていい気はしない。

でも………

「落ち着け細井。ここでやけ起こしたって、きっと逆効果になるぞ」

こんな時、ムキになったって意味がないことを俺はよく知ってる。

俺は細井の肩を後ろから掴んで引き留めつつ、そう言い聞かせた。

「かがみ……」

「“コックス”だろ? 焦って言い直すの忘れてるぞ」

「そうだな、悪い」

ま、半年前の俺ならキレてたかもな。俺も成長したってもんよ。

「さすがは問題児くん。トラブル回避は慣れてるってわけね」

「ぁあ?」

誰が問題児じゃ。ぶっ飛ばすぞコラァ!

「そういえば、林間学校であなたが起こした暴行事件。大きな原因のひとつは異性間のいざこざだったわね。校則の緩さから、実際に問題が起こってしまったのよ。学校側だって、私の主張を無視できないわ」

「あれは俺たちが悪いって言いたいのか? 俺もそうだが、チーナは紛れもなく被害者なんだぞ」

「クルニコワさんが被害者なのは否定しないわ。でも、あなたが6人も怪我人を出したのは事実よ。なんでも暴力で解決って、これだから……」

「それは実際の状況を見てないから言える事だろ。やらなきゃやられてた」

まああの事件だけなら、もっとスマートに解決できたことは否めない。

だがどの道、口で言ってどうこうの範疇では収まらなかったはずだ。

それを横手は分かっていない。いや、ただ難癖付けたいだけなのかもしれないな。

「とにかく、恋愛禁止の提言を取り下げる気はないから。それじゃ、そろそろ生徒会室に行かないといけないし失礼するわ」

話は終わったとばかりに、俺たちを置いて教室を出ていく横手。

その後ろ姿を目で追いながら、俺はボソリと口にした。

「細井……俺、あいつ気に食わねえわ」