軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

45話: 活動方針

「実家に帰れ」

「どうした総司。大家か?」

昼休み開口一番、俺は悪友からゴーホーム宣告を受けた。

その悪友とは、 清水(しみず) 総司(そうじ) 。長身で性悪、人を煽ることに人生を懸ける世界最悪のイケメン無駄遣い男だ。

「総司くんは大家さんっていうより、看守さんだよね」

その横でニコニコしながら総司を見ているのは 秋本(あきもと) 由紀(ゆき) 。

うちのクラスの委員長で、筋肉大好き天然元気っ子。最近総司との関係が怪しい女子生徒である。

「ったく、藪から棒になんだってんだ総司」

「伊織は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の 王(ママ) を除かなければならぬと決意した………だから王の城に帰れ」

「俺処刑されるじゃん……」

「お前の屍は越えていく。ぜってえ振り返らねぇからよ」

「ただの死体蹴り!?」

オ〇ガさん涙目の暴論に、俺のツッコミが響き渡る。

今は昼休み。俺たちは最近溜まり場にしている理科室で、いつものように昼食を摂りながら作戦会議だ。

"俺たち"と言うのは、今の3人の他にチーナ、宮本、細井を入れた6人だ。

ここを使っているのは俺たちだけなので、心置きなく作戦会議ができる。

「まあおふざけはこのくらいにして。伊織、お前少し実家に帰れ」

「おふざけ終わってねえじゃん」

「はぁ……伊織には政治がわからぬ」

「文学的にディスんじゃねえ!」

そんな俺を見て、やれやれといった様子で総司が説明を始めた。

「実家に帰って虐待の記録や、あわよくばその理由を確保して来い。まさか、今の証拠だけで足りるとは思ってないだろうな?」

うっ、確かに……。

一人暮らしを始めてからは、母と関わることが随分と減った。

父が健在の時は親権喪失なんて考えもしなかったし、その父が亡くなってからはほぼ実家に帰っていない。

そう考えると、物的証拠が足りてるとは言えないかもしれないな……。

「でも……お父さんが、ビデオ……残してたんでしょ?」

「昔偶然撮れたやつはな。何かのために保管してくれてた」

チーナの質問に対して、俺は頷く。

父は、よくある親バカ行動として俺や詩織の成長をたびたび動画に収めていた。

その中には、母が俺に対して辛く当たる様子が映り込んでいたものがある。

そんな動画すらも、父は俺に残していてくれたのだ。

俺が親権喪失を目論むことを予期していたとは思えないが、いざという時のためと考えたのだろう。

ありがたい。

だが総司は、それだけでは足りないと考えているようだ。

「それは、あくまで高校入学以前のものだ。"最近は改善されてる"と向こうに言いくるめられでもしたら、親権停止すら怪しくなるぞ」

「証拠がないと訴えられないの?」

「アホかロリっ子。今どき口だけで動いてくれる公的組織は滅多にねぇよ」

総司の尤もな意見に、無邪気に質問するのは 宮本(みやもと) 明里(あかり) 。チーナより長いロングヘアーに、1部にバカウケしそうなベビーフェイス。身長は脅威の1 ミヤモト(139cm) と、どっからどう見ても完成されたロリっ子だ。

でもな総司、本人は気にしてるんだから言ってやるなよ……。

だが総司の主張が正しいことは理解できるし、必要だと納得もする。

気が乗らないが、俺が実家に帰ることは避けられない道のようだ。

「じゃあ、今週末か来週末に帰ってみるか。面倒だけど、詩織に伝言でも預けて……」

「それはダメだ、無言で帰れ。突然の方が向こうも色々とボロ出すだろうからな」

俺の常識的な判断は、総司に否定された。

こいつ、本当こういうとこ頭回るなあ。

「それと、お前ら4人にも仕事がある」

「えっ、俺たちに?」

そして俺以外の4人にも、総司は役割があると言い出した。

いったいなんだろうか。

「4人で手分けして、ここら辺の産婦人科を回ってくれ。17年前、鏡紗季が入院していなかったか……それを調べて欲しい。当時はダンスミュージシャンとして知名度は高かったはずだから、長いこと勤めてる看護師あたりなら覚えているだろう」

「はいはい!そんなプライベートなこと、教えてくれないと思いま〜す!」

ロリっ子と呼ばれて不機嫌そうなみやもっさんは、反抗だーとばかりに手を挙げて言い返す。

その仕草……まさにロリ。

まあその程度で総司がブレたりはしないのだが。

「教えてくれなくても、心当たりがあるなら顔に出るもんだ。そこにいた可能性があるってだけで、少しは動きやすくなる。今はそれだけでいい」

「病院を特定して、どうするんだ?」

「お前が嫌われている理由を知る手がかりになるかもしれない。お前も実家で母子手帳とか探してこいよ。それがあれば、かなり時間の節約になるからな」

確かに、母子手帳さえあればそこに出生は書いてあるはずだ。

それを元に、病院へ事実確認をしに行けばいい。

「つまり……私たちは、病院を回って、ヨリのお母さんがいたか、聞いてみれば……いいの?」

「そうだ。たぶんお忍びで入院してただろうから、聞く看護師は熟練っぽい人をえらべ。あと外来は開いてないとこもあるだろうから、面会のふりして病棟に入るのがいいだろうな」

チーナが必死に総司の指示を咀嚼して、確認を取る。

他の3人も総司の指示に納得して、こくこくと同意を示す。

だがここで、俺には一つ気になることがあった。

「総司は、どうするんだ?」

病院を回る指示を受けたのは4人だけ。総司がそんな泥臭い作業をするとは思えないし、何か別にやる事があるのだろうか。

その問いにも、俺の悪友は淡々と答えてくれた。

「俺は、クイーンドールズが所属していた事務所を訪ねようと思う。伊織、お前の名前を 騙(かた) ってな」

「母さんの……事務所?」

「お前が虐げられてる理由は、母親の引退と関係がありそうだって言ってただろ?俺もそう思うし、だとしたらマネージャーあたり事情を知ってる人間がいるはずだ」

なるほど。確かにそういった交渉事は総司が一番適任だ。

俺の名前が使われる事にいささかの不安はあるが、サキの息子だと言えば多少話してもらいやすくなるのも事実。

ここは悪友を信じよう。

一通り行動方針を示した所で、総司が作戦会議を締めくくった。

「みんなが問題なければ、今週の土日に一斉に動く。いいな?」

みんなが頷いたのを確認してから、総司は話を打ち切り弁当に顔を向けた。

今日のメニューは里芋の煮っころがし。相変わらず渋いなぁ。