軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

37話: 飯から始まるパッパラパー

夕食の時間になり、食堂に集まる。

食事はビュッフェ形式。好きな物を好きなだけ食べられる、素敵なシステムだ。

唐揚げ、サバの塩焼き、カレーライス………。

システムの恩恵にあやかり、好きな料理を皿いっぱいに積んでいると、横から腕が伸びてきて空いてる部分にサラダが盛られた。

「ヨリ。ちゃんと野菜もたべて」

「母ちゃんかよ。まあ俺は言われた事ねえけどな」

俺のトレーに野菜を盛るチーナに苦言を漏らしつつ、2人でテーブルに向かう。

まぁ別に野菜が嫌いな訳ではないのだが、いつの間にか避けてしまうのが育ち盛りの 性(さが) だ。

「お、なんか久しぶりな気がするね。スカイダイビング楽しかった?」

「どうせ楽しんだんだろ。伊織はジャンプ馬鹿だからな」

「楽しかったよ。詩織の悔し顔も見れたしな」

先に席についていた秋本と総司が声をかけて来たので、その正面にチーナと隣合って座りながら、言葉を返す。

「ところでお前ら、今日は2人で星を観るんだろ?」

ここで、総司が声量を少し大きくして問いかけて来た。

「ああ、そうだが」

っと、俺も同様声を大きくして答える。

この距離なら十分以上の声量だが、不自然なほどではない。

そのまま、いつもの俺たちとしては少し大きな声で会話を続けた。

「2人で見るなら、行き帰りも人目を避けないと噂になるぞ」

「そうだな。どこかいいルートはないか?」

「それなら、第2グラウンドの裏手に細道がある。あそこなら誰も通らないだろ」

天体観測は現地に着いた段階で到着報告をするだけなので、行き帰りや観測についても、誰と行動しても構わない。

大人数で集合する事もなく、広いエリアでそれぞれが星を見ることになる。

故に気を付けて行動すれば、教員以外の人目に見つからずイベントの開始から終了まで過ごせると言うわけだ。

おそらく、教員側がカップルの思い出作りに協力しているのだろう。

下世話というか、ノリがいいというか……。

「じゃあ、第2グラウンドの裏から行こうか。チーナ」

「そうだね。そうしよっか」

あえて日本語でチーナに同意をとった後で、俺たちは食事を始める。

ここの食堂は美味い。沢山食べて置かないと損だな。

俺がもりもり食べる姿をみて、秋本が嬉しそうに話しかけてくる。

「鏡くんよく食べるねぇ。いいよいいよ、食べる子は育つ。しっかり筋肉に磨きをかけてくれたまえ」

「野菜母ちゃんの次はタンパク質母ちゃんか?」

「なら残りの五大栄養素母ちゃんが出てくるかもね。ちなみにタンパク質は五天王の中でも最強だよ」

最強なのは拳だけだろ。

ううんそれなら、宮本はミネラル母ちゃんだな。カルシウムを摂るのだ!っとか言ってきそう。

「あ、ビッグないおりんだ!私も一緒していい?」

「まじで来やがったな母ちゃん」

「えぇ!?私いおりん産んだっけ!?」

結局宮本も合流し、わいわいと飯を食べ始める。

数ヶ月までは、友人同士でこんなに賑やかな食事なんて考えられなかったな。

少しずつ、俺も青春し始めてるのかもしれない。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

夜。

女子用コテージの近くでこっそりと落ち合い、俺とチーナは二人で山を登る。

目的はもちろん天体観測。二人並んで夜の小道を歩く。

総司が言っていた通り、この道は人が少ない。ほんと、あいつはこういう情報をどこから仕入れているのだろうか。

道には小さな街灯がポツポツと立っているくらいで、非常に暗い。

こんな道なら襲われても不思議はないな。

そんな事を考えながら歩いていると、自然とチーナが手を繋いできた。

なんとなく心の準備ができていたので、驚く事なくその手を握り返し、歩き続ける。

秋の暗い夜道という環境が、妙に嵐の前の静けさを彷彿とさせる。

木々がガサガサとゆれ、かろうじて見える次の街灯の明かりがとても不気味だ。

そして道程の半ば、ポツンと立った街灯が見えてきた時だった。

ついにその時が来た。

「おい、待て鏡!」

そう呼び止める声が響いて、暗がりから5人の男が出て来て、道を塞ぐように並ぶ。

1人は佐々木、1人は石田。他の3人は確か、詩織ファンクラブのメンバーだった気がする。

そして5人全員、鉄パイプやらバットやら何かしらの凶器を手に持っていた。

それらには一様に、既に血糊がべっとりと塗られている。

なるほど、仮装大会に紛れて持ち込んだのか。

俺をボコすために、人数だけでなく武器も揃えて来たって訳だ。仮装大会をカモフラージュにして。

これは少し………予想外だったな。

そんな事を考えながら俺はズボンのポケットに手を入れる。

そこにあるのはボイスレコーダー。詩織や母の揚げ足をザバーニーヤするために、俺が常に持ち歩いているものだ。

俺は手探りでその電源を入れる。

奴らが何をしに来たかは明白だ。だが俺は情報を記録するために、あえて説明口調で問いかける。

「佐々木に石田、それに他の奴らもどうした?そんな物騒なもの持って」

それを聞いて、石田が口を開いた。

「どうしたかって?そりゃ、自分の胸に手当ててよく考えてみろよ」

「分かんねぇな。そんな怖い顔で睨まないでくれよ」

「流石のお前だって、武器持った俺たちに敵うわけねぇ。この間の怨みは、ここで返させてもらう!」

「待て待て、なんの事か分からない」

そうやって会話を記録しつつ、チーナと手を離して下がらせる。

チーナは少し怯えているが、慌ててはいない。

事前にこうなる可能性は示していたからな。

っとここで、黙って聞いていた佐々木も声を上げて来た。

「鏡、俺はお前がクリスの隣にいることが許せない!俺が無理でも、お前だけは許せない!」

相変わらずのお前は認めない宣言。

安定してあたまパッパラパーだな……。

「ここにいる5人は、皆お前に恨みがある。そのボイスレコーダーでも何でも録音すればいいさ!お前を立ち直れないくらい痛めつけてそれも壊して、二度と間違いが起きないようにしてやる!」

おおっと、 ポケットの中のもの(ボイスレコーダー) に気づいてたのか。これも予想外だ。

誰かさんの入れ知恵か?

俺をボコボコにしてレコーダーを奪って、山に捨てて帰る。

そして後で、俺が崖から落ちたとか適当な理由であいつが助け出す。

加えて、鈍器に付いた血は仮装用の演出として誤魔化す……と。

なるほど。それがお前のシナリオか、詩織。

つまり、証拠を守りきれば俺の勝ち。

5人の暴徒たちが、武器を携えジリジリと距離を詰めてくる。

さて、ここからが本番だな。