軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34話: トリック&トリート

お菓子交換が開始され、俺達も移動を開始………出来なかった。

「あの子がクリスティーナか!か、可愛い!」

「キャーなに!おっきいリスだ!え……リスじゃん」

「ぎゃはははは!なんだよ鏡!きもぉ!」

俺たちが目立ちすぎて、移動せずとも沢山の班が集まって来たからだ。

やっぱり、チーナが1番人気だな。

彼女の前には長蛇の列ができ、用意していたお菓子はあっという間に底をつきそうだ。

チーナが持ってきたのは、小分け包装されたお菓子のアソート。

ちなみに、彼女の姿が尊すぎてチーナまでたどり着けず崩れ落ちていた者も多数いた。

そして何気に人気だったのが宮本。

そのクオリティの高さ?に対して、主に女子がわらわらと集まっている。

"大きい"リスと連呼され、ご満悦なみやもっさん。鼻高々にお菓子を配る姿はとてもちっこい。

まぁ、それで楽しいならいいんすけどね。

そして俺はと言うと、主に男子からの笑いのタネになっていた。

やれ紙兎〇ペだラビ〇ツだと好き勝手形容しては、爆笑の渦が起こる。

だがお前ら、スーパーバニ〇マンだけはやめろ。せめてティ○ピーにしてくれ。

だがこんな風に笑いの中心になることは新鮮で、正直悪くない。

3分の1程度が詩織ファンクラブの見下した笑いで無ければ、もっと楽しかっただろう。

「ははははは!いいぞ伊織。過去一で輝いてる」

「やめろ総司。いいカメラで録画するな」

悪魔の様な笑みを浮かべながら、俺の黒歴史をきっちり保存しようとするのはもちろん総司。

そのハンディカメラ、絶対暗所対応してるだろやめろ。

ちなみに総司は、赤い血糊がこびり付いた服に、同じく血みどろの鉄パイプを片手に携えていた。

うわぁ、似合うう。

秋本達がゾンビっぽいコスプレをしているから、それに立ち向かう民間人って感じの設定か。

見ると石田や佐々木も、総司と同様に死線をくぐり抜けてそうな格好をしていた。

男女逆にしてやれよ…可哀想に。

そして広場には、俺たちの集団の他にもう1つ、同じくらい大きな人だかりが出来ていた。

学年全員がほぼ二分された群勢のもう1つの中心は、おそらく詩織。

聞こえた話によると、かなりクオリティの高いメイド服を着ているらしい。

ま、信者共を引き付けてくれてるって言う点では感謝だな。

おかげでこっちは過ごしやすい。

そうやってしばらく渦の中心にいると、先生が再度拡声器で指示を出してきた。

班行動の前半が終了、今からは広場内に限りバラバラに動いてもいいとの事だ。

せっかくテーマを統一しているのである程度は班行動させるが、仲の良い人と記念写真を撮ったりなど出来るよう、配慮もしてくれているらしい。

ちなみに今気づいたのだが、先生達の中でも何人か仮装をしている。

我らが橘先生は、怪獣?ワニ?の着ぐるみを着ていた。うん、マスコット感が出てていいと思う。

そしてその頃には群衆もある程度分散し、チーナもやっと開放される。

ヘトヘトになったチーナの足元には、貢がれたお菓子が山と入った大きな袋。

『ヨリ〜!疲れたぁ』

その袋をえっちらおっちら運びながら、俺の方に向かってくるチーナ。

こんな駄々っ子みたいな声を出すのは珍しい、相当疲れたんだろうな。

「お疲れ。少し休もう」

とりあえず袋を持ってやり、2人で木の根元に腰掛けて休憩する。

俺も久しぶりに人に囲まれたので、ちょっと疲れた。

ほっと一息ついて、未だにはしゃいでいる生徒たちを眺めながら雑談を始める。

『今日は楽しかったね』

『なあに言ってんだ。本番は明日のスカイダイビングだろ』

『ヨリ、スカイダイビング好きすぎでしょ』

『チーナはやったことあるのか?ロシアだとインドアスカイダイビングが有名だったと思うが』

『インドアだけね。私もそれしかやった事ないから、楽しみ』

『怖くないのか?』

『あ、そだ!トリックオアトリート!』

『急に!?』

適当なやり取りをしている途中、突如トリトリしてきたチーナさん。

やれやれ気ままだなあ。ネコだけに。

『まったく……ほれ』

そして俺は、最後まで残しておいたお菓子を手渡した。

それは、チーナの為に特別に用意した物。

『これ……ゼフィールだ』

両手にちょこんと乗せて、まじまじと見つめるチーナ。

そう、チーナに用意したのはロシアの人気菓子。

マシュマロに似た甘い菓子だ。

『昨日アンテナショップに行ってきたんだ。他にもいくつか買ってきたから家で……ってもう食うんかい』

『うん、甘い』

俺が説明してる最中に、既に袋を開けて頬張るチーナ。

やっぱり女の子は甘いものが好きなのか、とても幸せそうだ。

まあ、喜んで貰えて何よりだな。

『そだ、これはお返し。私も特別に用意したんだよ』

『お、サンキュ』

渡されたのはクッキー。

半透明な柄付きの小袋に入れて針金入のリボンで留めてあり、皆に配っていた既製品とは明らかに違う。

『これもしかして…手作りか?』

『うん。ユキの家で作った』

『いつの間に?』

『昨日だよ。たまたまヨリがいなかったから、気づかなかったのかも』

確かに、昨日のアンテナショップは少し遠出になってしまったし、帰りに美味そうな焼肉屋を見つけてしまったため珍しく寄り道してしまった。

家に着いた時にはまたチーナが俺のベッドで寝落ちしていたので、全く気付かなかったな。

図らずも、お互いサプライズを考えていたわけか。

『早く感想ちょうだい』

『お前料理出来るんだから、普通に美味いだろ』

そう言いつつも、袋を開けて手に取る。

中にはネコとウサギの型の2つのクッキーが入っていた。

ネコの方を手に取り、一口で食べる。

『うん、あまーい』

『真似しない!』

『すまんすまん。美味しいよ、ありがとな』

ちょっと茶化してやると、ペシペシと肩を叩かれる。

でも、本当に美味しい。やっぱりチーナは器用だな。

「みなさーん、お菓子交換はここまででーす。帰って歯をしっかり磨いて、早く寝てくださいね!」

もう1つのクッキーも頂いてまた少し雑談をしていると、イベント終了の指示が響いた。

これから自分のコテージに移動して、必要な人はもう一度風呂に入って就寝となる。

『それじゃチーナ、ちゃんと宮本達と帰れよ。1人にならないようにな』

『分かってる』

そう返事をしたチーナは、俺に向かって腕を広げてきた。

"また明日"のチークキスだろう。

俺ももうすっかり慣れたし、周りの視線も感じないからいいか。

まず俺からチーナの肩を引き寄せ、右頬を擦り寄せながらキス音を奏でる。

もう失敗しないぜ?ドヤっ

そして、今度はチーナの方から俺に身を寄せて、顔を近づけチークキス。

ちゅっ

だが今回は、いつもとは違うピンポイントな柔らかさが俺の頬に当たった。

え、今のって………リップ?

顔を離してチーナを見ると、彼女は暗がりでも分かるくらいに赤面していた。

間違いない。チークでキスじゃなく、チークにキスしたのだ。

『ちょ、え?チーナ、え?』

『ふふ……いたずら!じゃあまた明日ね!』

そう言ってチーナはいたずらっぽくペロッと舌先を覗かせると、宮本達と合流すべく駆け足で離れていった。

残された俺は、頬を撫でながら呆然とその姿を見つめる。

唇を付けるのはたしか、家族か恋人に対して………くらいじゃなかったか?