軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

624話:動き出す夏4

今日は午前に、皇子として王城に向かった。

テスタもいるけど神妙な顔をしてる。

「お話ししたとおり、こちらがナイラから聞き取った天才の仲間の名簿になります」

軽く聖女教会からマクスに近づいた一件を話し、そこから聖女の件は伏せて、ウォレンシウムに錬金術の痕跡があったことを語った。

だから、過去の頃のウォレンシウムについてナイラに聞いたというところまではルキウサリア国王もなんともない顔。

ただ、ウォレンス王族の存在から他の仲間についてもナイラが知ってる限りを聞き取ったという話になると、テスタと同じような神妙な表情になった。

今まで封印図書館に関しては、天才一人に焦点を当てていた。

黒犬病の治療で多く死んだという話もあったし、他は全員そのせいで亡くなったんだとさえ思っていたところに、生き残りの存在だ。

「名簿…………」

ルキウサリア国王が警戒するように呟くと、受け取った文官に頷かれて手に取る。

内容を見てほっとしたのは、十五人程度だからだろう。

これは黒犬病の後も、生きてるとナイラが知ってる人がその数だった。

「八百年前には錬金術師とその見習い、助手などが百人はいたそうですが。生きて離れた者だけに限定して書きとりました」

「そうか、うむ…………この名は…………」

ルキウサリア国王は僕の説明を聞きながら、名簿に視線を据えて考える。

書いてあるのは八百年前の古い国名だから、今の何処か考えてるのかな。

それとも姓を持つ人はそれだけで特定できたのかもしれない。

社交も考古学もやってるテスタ曰く、今も存在する氏姓が書いてあるという。

逆にナイラが知ってる限りだから、出身国さえわからない者もいる。

「それで、これをこちらに回したということは…………」

「調べられますか?」

ルキウサリア国王が言う前に聞けば、予想してただろうに悩む様子がある。

「一番気になるのは、この国の出身者なのですが」

実は、技師の大親方と関わる人の名前があるらしいんだよね。

そっちはルキウサリア国王を煩わせず僕が、直接聞いてる。

というか、技師としてルキウサリアに残ったって、ナイラから言質も取れてるし。

ルキウサリアの技師の初代らしいと直接大親方に聞いたんだ。

他にも、貴族として名前が残ってる家や、氏族名があるから、辿ることできそう。

ただし、八百年も昔を探るには相応の伝手が必要になる。

「テスタの考古学を理由にしようとも思いましたが。そのためには、国外にも出なければいけないこともあるかもしれません」

今日はその許可取りもあって来たんだけど、すぐにルキウサリア国王は首を横に振る。

「いや、これはこちらで引き受けよう。殿下が動かれる必要はない」

「それではお願いします」

素直に応じたのに、なんでそこで疑わしそうなの?

外交問題になりそうだから持ち込んだのになぁ。

テスタ色々手を出してて逆に、国内の社交疎かで国外に出せないのもわかってるから、まずお伺い立てたのに。

それに僕は一年もなく去る身の上だ。

だったら、後を引き継ぐルキウサリアに回すのは変なことじゃないはずでしょ。

「わしとて第一皇子殿下のお役に…………」

「駄目だ」

「…………だって」

テスタが欲出すのを、ルキウサリア国王が即座に拒否。

僕も逆らわずルキウサリア国王に追従すると、テスタは渋面だ。

そんな全力で止められるなんて、本当どれだけ疎かにしたんだか。

いや、これは数年かかる調査を引き受けることで、僕に報告名目で接触の機会残そうとしてるな?

相変わらずだけど、僕のほうも手を出し過ぎて忙しいから、変なことしないでね。

「それでは本日の予定を…………」

ルキウサリア国王との面会は終わり、テスタだけが不満に口角を下げた。

けど僕はまだ王城でやることあるから、偏屈老人は放置だ。

予定を告げに来たのは、情報技官の所の上司。

そっちからの報告や提案、相談事で、もう時間を用意されての面会になる。

その後は、皇子として青いアイアンゴーレム調べる態で人払いをして足を運んだ。

セフィラにこっそり、工房に籠るジョーやステファノ先輩の様子見をさせることもした。

すごい数の青いアイアンゴーレムのスケッチが散乱して、ジョーがキリル先輩の名前口にしてたらしいけど、頑張ってほしい。

僕は知らないふりをして王城を後にすると、午後になって学園へと登校した。

「私は残るわ」

お昼休みも終わる頃に行くと、教室でイルメがそう宣言してた。

机を拳で打って、雄々しいイルメ。

囲むクラスメイトたちは、それぞれ感嘆符らしき声を漏らしている。

そんなところに来た僕に、イルメは聞く前に答えた。

「私は就活生として、一年残るわ。精霊さまについても、マクスの件についても、一年では無理よ」

イルメはそもそも精霊を知りたくて、この錬金術科に入学してる。

そしてここには精霊が実在することも知ったし、離れるには確かに早い。

意思疎通もままならない状況で、一番対話できてるの、エフィだけど。

僕はセフィラっていう手段があるけど、イルメは喋らない青トカゲや人魚に苦戦してる。

ただセフィラも、場当たり的な返答を読み取るだけ。

わかったことと言えば、セフィラほど自分たちの存在に疑問も探求もないことくらい。

そして求めれば理屈はなしに、答えだけをよこしてくる存在だってこと。

まるで検索ワードを入れると、該当するだろう情報だけポンと表示する検索エンジンのように感じる。

答えを得るには簡単だけど、それで理解や応用が利くかというと別の話だ。

「ラトラスとネヴロフは、帰るの変わらない?」

聞いてみると、思わぬ答えがラトラスから返る。

「それが、トリエラ先輩の腕気に入ったモリーさんが、帝都に一緒に連れ帰れって。説得するために一年就活生で残ってもいいって言うんだ」

「俺は貴人の人たちから、村で温泉新設するための資金援助か物資輸送の伝手をもっと募るべきだから、一年そのために就活生名目で残ったほうがいいって言われた」

けっこう九尾の貴人がまともなアドバイスしてる。

流れで、僕はウー・ヤーとエフィにも目を向けた。

「自分は残るには学費がな。ただこの国から移動するにも旅費を貯める必要があるから、大親方の下で一年金策するかもしれない」

「卒業後は一度話し合いのため国に帰る必要があるな。その後はたぶん、帝都のほうへ回される。そっちでどんな就職口があるかは未定だが」

ウー・ヤーのほうはさりげなく、技師の大親方が錬金術師としてキープしてそうな雰囲気。

エフィは家の立場と故国の関係があるから、まだ宙に浮いてるようだ。

なんて考えてたら、イルメに肩を掴まれた。

「私は一年延長のためにも、一度国に帰ってそのことを話さなければいけないの」

「う、うん。えっと、それは在学中? あ、つまり今年中にってこと?」

驚きつつ応じると、イルメは大いに頷いて眼力を強める。

「そのことをヴィー先生に相談した際に、聞いていたネクロン先生から、アズがとても良い伝手があって、エルフの国にも行く用事があると聞いたわ」

ちょっと、ネクロン先生?

何言ってるの?

あ、これもしかして、船乗りエルフ使ってエルフの国に行って、調べて来いってことか。

力技すぎる!

そしてイルメとしても、資金や伝手の関係で徒歩での帰国になる。

でも僕の伝手なら船で快適って話なんだろう。

「けど、伝手のある船乗りとまだ連絡取れてないんだ」

「船…………海か…………」

なんかウー・ヤーが遠い目するのを気にせず、ネヴロフが耳を立てる。

「海って話聞くばっかりで、どんなか想像もつかねぇよな。すげぇ興味ある」

「俺も知らないけど、しょっぱいらしいよ。あと見渡す限り水だって」

そんなふんわりした認識に、エフィが貴族らしく応じる。

「昔一度ハドリアーヌ王国に行ったことはあるぞ。臭いがすごかった」

「うーん、海路を考えるなら、今はハドリアーヌやトライアンより、南を考えるべきじゃないかな?」

そこの国、継承争いや犯罪者摘発で国が落ち着かないし。

それなら、卒業生のロクン先輩やイア先輩が行き来する、南のリビウスを頼ったほうがいい気がする。

わいわい話が盛り上がり出すと、イルメがクラスメイトを巻き込みにかかった。

「もうみんな来る? 歓迎するわ。けどそうなると、早い内に卒業要件は満たさないといけないの。授業はほぼ終わっているし、後は錬金術の成果の発表よね」

共通の基礎はアクラー校と、ネクロン先生が増えたことで授業として終えてる。

その他錬金術科としての教科は、登校拒否してた先輩たちも卒業できた実績もあり有名無実。

だからこそ、錬金術を修めましたと、ヴラディル先生に卒業制作を提出するだけ。

それが錬金術科の卒業要件だった。