軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

617話:天才の後継2

翌日は、やってきた九尾の貴人がネクロン先生を追うことになった。

教室には来ないけど、それぞれ放課後にやることがあるし気にしない。

けど造ったからには僕も少しの責任を感じるので、ちょっと残ってつき合うことに。

ただネヴロフは、竜人の火の魔法について聞きにアシュルとクーラのいる教室へ向かった不在。

僕は一人、岩盤浴の案を図に起こしながら、一人教室でセフィラと話す。

(まさかネクロン先生、在野の錬金術師から学んでいたなんてね。錬金術、竜人のほうは絶えてると思ってたけど、思わぬところに繋がってたんだなぁ)

(ヘリオガバールからチトス連邦までには相当の距離があります。間の国に別の錬金術が残されている可能性を提言)

(その前に、本当に八百年前の天才から続く技術か確認したいかな)

このルキウサリアで封印図書館を作った八百年前の天才。

黒犬病を造ったことで多くの犠牲を出し、ルキウサリアから錬金術はほぼ消えた。

残ったのは技師のように細々と続けていた人だけ。

学園ができた頃にも何か伝えられていたのか、錬金術科は作られた。

けど今の錬金術科に創設当初の話なんて残ってない。

そして八百年前にルキウサリアを離れた生き残りの錬金術師たちは、黒犬病の犠牲を悔いて贖罪の旅というものを始めた。

それは東の果てのニノホトに、過ぎた錬金術を封じるというもの。

実際その旅は百年ほど前に完遂されていると、ヒノヒメ先輩から確認は取れてる。

(ニノホトに至った北回り。あれはオートマタを作ってて、けっこう封印図書館の技術に忠実だったね)

(比べて牛の魔物を家畜化しようとした錬金術師は、封印図書館との関連は不明)

そう、ニノホトへの旅を果たした錬金術師に、別の錬金術師と合流したっていう伝えはあっても、魔物の家畜化をしたのは在野の錬金術師という可能性もある。

(そこは年代が違っていてなんとも言えないんだよね。近いから、たぶん贖罪の旅を断念したっていうほうの錬金術師の系譜だとは思うんだけど。そう考えると、確実なところ? 南東のチトス連邦で仙人と呼ばれた人だよね)

イー・ソンとイー・スーにより知らされたのは、錬丹術という形で残された錬金術。

東へ贖罪のために向かうという行動も一致してるから、こっちは間違いない。

(再現に難のある畜産錬金術よりも、錬丹術の習得を推奨)

(まだそんな時間取れないでしょ)

セフィラも興味持ってるけど他にもやることはある。

(ロムルーシよりの新入生に、主人が去ったのちに新たな発見が存在しないかを問うべきと提言)

(ツィーチャか。知ってるかな? 錬金術知らないで入って来たし、教えられてないかも)

北は確実、南東も濃厚で、そうなると南の竜人の所にも一時期ルキウサリアの錬金術師はいて、技術も残してる可能性がある。

(セフィラ、帝室図書館で水底図書館と記したあの錬金術師は、どう思う?)

(関係者による伝聞であり、当事者ではありません。その伝聞も、贖罪の言葉がない部分が差異となります)

そう、ルキウサリアよりも大陸中央の帝都にも記述はある。

けどそれが八百年前の天才から派生した枝葉かは、ちょっと怪しい。

(無関係ではないけどね、当事者の記述は残ってない。それでもたぶん枝葉となる人員は辿り着いてる。けど、帝都にはそれ以前からの錬金術があった)

(帝都の醸成は千年前から始まっています。錬金術師を要件とする皇帝の領地、クーファーメル領はそれ以前より存在する領地です)

セフィラが言うとおり、錬金術は帝国創立以前から存在した。

そして帝都を作ったり、宮殿を作るのにはゴーレムが使われたという記述もある。

ただし、錬金術が禁止になって、書籍も残せないとなったことで隠された暗号の中の記述だ。

つまり封印図書館と違って、当時の一次資料は残ってない。

ゴーレムを歩かせたっていう、レールウェイの役割を果たした特殊な錬金術の道は、解体されて再利用されたっていう記述もあるから実物もなし。

(帝都の錬金術は、何処までが八百年前の天才と繋がってるかわからないんだよね)

(封印図書館の蔵書には、帝都から得た錬金術の書籍が存在します。黒犬病後百年で禁止されたことを思えば、現存する書籍は天才以後のものと推察)

封印図書館のような特殊環境じゃない限り、何百年も本が残ることは確かに難しい。

そうなると余計に、何処から何処までが帝都に運ばれた天才たちの技術なのか。

ここら辺を切り離しておかないと、僕としても情報の整理がしにくい。

僕がセフィラと考えてると、教室に人やってきた。

みればウィーリャとツィーチャだ。

「今僕一人だけど、どうしたの?」

「いえ、アズ先輩に御用がありました。ツィーチャに、見つかったゴーレムについて聞いたのですが、どうも教わったものと違うようで」

「あぁ、あれね。うーん、種類が違う感じかな。先輩たちが説明していたのは、単純なゴーレムだ。それ故に長く動いて消費も少ない形なんだよ」

ウィーリャに答えると、ツィーチャが耳と尻尾を立てた。

「アズ先輩は我が国で見つかったゴーレムを作れるのですか? というか何故ご存じで?」

「さすがに作るのは無理だよ。その地下に、大公閣下の案内で見に行ったんだ。ロムルーシへ留学しに行った時にね」

「…………その時、何をされまして?」

ウィーリャがなんか疑いの目で見てくるから、もちろん笑って誤魔化す。

どれくらい話すか、何がわかってるかは、イマム大公への次の手紙で聞いて返事待ちだ。

けど知ってるらしいツィーチャがいるのはちょうどいい。

「ツィーチャ、そのゴーレムを作った人の話とか聞いてない?」

「昔にいた錬金術師だと聞いてます。あ、あと弟子がいたらしいということで捜してます」

そうきたか。

地元で調べてイマム大公も弟子の存在を知ったようだ。

けどその弟子、もう死んでるらしいというのは、弟子が旅だった先で受け入れた一族のヨトシペから僕は聞いていた。

そう考えてたら、また人が来た。

今度は海人の新入生、イー・ソンとイー・スーだ。

「先客か。少々お時間いただければと思ったが」

「今日は占いが休みですので、故郷の話をいたしたいのです」

つまり、時間できたから錬丹術について話したいってことか。

うん、掌熱い。

(催促しても駄目だって)

(同じく枝葉を知る錬金術師。新たな情報を引き出す手として活用すべきです)

僕は考えて、それからウィーリャを見た。

「ウィーリャ、ショウシからニノホトに錬金術が伝わってるとか、聞いたことある?」

「さて、あまり故郷のことは。何かの折に話すことも、文化的な話になりますわね。錬金術についてはあまり」

「どうしたんですか?」

ツィーチャが無邪気に聞いてきた。

「うーん、君たちのロムルーシに、すごく進んだ錬金術の技術を持ち込んだ人間がいた。そしてチトス連邦にも、同じように技術を持ち込んだ錬金術師がいたんだよ」

ウィーリャとツィーチャは初耳という反応だけど、イー・ソンとイー・スーはまさかという顔をした。

どちらも封印図書館については伝わってない。

けどイー・ソンとイー・スーは、贖罪の旅と、別に逃げた仲間の存在が伝え遺されてる。

だから北回りで東を目指す人がいた可能性に気づいたようだ。

「他によく似た事例が残っていた。だから東の国の人間も錬金術がないかと? ツィーチャが言うとおりなら、西にも錬金術を伝えた人間がいるのでしょうか?」

ウィーリャに僕は首を横に振る。

「いや、イルメ曰く、錬金術は禁術として禁忌扱いで残ってないんだって」

「探すのであれば、我がチトス連邦にいらした方がたどった南、竜人の国は?」

イー・スーも興味を持って話に乗ってきた。

「うん、そっちもどうやらいたけど途絶えたって話を最近聞いてね」

「では、ショーシ先輩は東の? 錬金術科に来たなら全く知らぬこともないはず」

期待しちゃったイー・ソンには、ウィーリャが答えた。

「いいえ、ショウシはこちらにいらした故国の姫君を訪ねるために。ですが、年数が違ってすでに帝都の移られた後だとのことで、錬金術は知りませんの」

すっかりショウシって呼び方が上手くなったウィーリャ。

そしてその訪ねた相手はヒノヒメ先輩で、学園とか無視して帝都行ってもいいのに、ショウシは真面目だから、卒業しないと移動しちゃ駄目だと思ってる。

ヒノヒメ先輩にショウシのことは伝えたけど、名前聞いて放って置いていいって言われたんだよね。

なんか、ニノホトに戻ったら結婚させられる宰相の息子の母方の血縁者だろうって。

僕の宮中警護イクトとの結婚を望んでるヒノヒメ先輩からすると、会うメリットはないらしい。

ショウシ自身にお願いされたら繋ぐことはするけど、今のところショウシにその気配はない。

というか、あんまり錬金術も知らないし、普通に学生生活楽しんでる雰囲気がある。

それなら僕も、野暮なことは言わないし、学生生活楽しんでほしい。

「だったら、大陸中央部の中心。帝都には人間の錬金術師が高度な技術遺した形跡はないのか?」

全く別人の声が、僕たちの話に入ってきた。

いつの間にかネクロン先生がいる。

廊下を確認して扉閉める姿は、どうやら貴人たちから逃げて来たようだ。

「まさかとは思っていたが、アズ。お前は継承者なのか?」

「…………いいえ、僕は継承を諦めた人の遺した記録を読んだだけになります」

こっちもまさかだけど、やっぱりネクロン先生は封印図書館の錬金術師を知ってる。

で、僕が東西南北の錬金術師たちが散ったっていう話を聞いて、封印図書館から知識を継ぐ錬金術師だと思ったようだけど、残念ながら僕の知識は異世界産なんだ。