軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

610話:パレード本番5

ソティリオスが現れたけど、僕のクラスメイトは見慣れた顔だ。

後輩たちも一年で、僕との交友は知ってる。

ただ問題は初見の新入生たちだった。

平民や他種族は知らないなら知らないで別にいい。

けど王族のマクスは、どうやらソティリオスの顔に見覚えがあったらしい。

「これは、ユーラシオン公爵のソーさま」

「ウォレンシウムのマクスさま、久しく。しかしここは学び舎。堅苦しいことは互いに控えましょう」

マクスが礼をするのは、ユーラシオン公爵が帝位の継承権持ちだから。

そこらの王族より上扱いだってのをすごくよくわかる感じだ。

帝国出身のシレンとハルマは、名前を聞いてようやくソティリオスが誰かわかった様子。

シレンはじっと様子見で、ハルマはちょっと腰が引けてる。

「まぁ、マクスがかしこまるだなんて。どなたかしら? いえ、聞いたことはあるわ」

「ユーラシオン公爵家のご令息と言えば、帝国か。確かに外交関係で聞いた名だ」

考えるイー・スーに、思い当たる節のあったイー・ソンが答える。

会ったことはないけど名前ならって感じで、それだけ家名の高さが窺えた。

そして帝国出身でその権勢を知ってるハルマは、すごく緊張した顔で僕に聞く。

「アズ先輩、名指しされてましたけど。何をしたんですか?」

「ソーが言ったとおり、学生同士なんだから変に下手に出ないでいいよ」

「そういうことは私のほうから許可をするものだ」

ソティリオスが余計なこと言うなって言ってきた。

「でも僕の後輩なんだから、そういうのを取り持つものじゃない?」

「お前に取り持ちなんてできるのか?」

心底不思議そうに、だいぶ失礼なこと言われた。

けど、公の場では鈍いふりで逃げ回ってること知られてるから、なんとも言えない。

そしたらソティリオスがまた僕を責めるように見る。

「それで、何をしていたんだ。その後輩とやらに随分と人気なようだが?」

「いやぁ…………」

僕が濁そうとすると、ネヴロフが答えてしまった。

「マクスがアズの就職の相談? アズ帝国戻るか戻らないかとかいう話?」

「違うちがう、あれは相談じゃないよ。マクスが発端だけど他も相談とは違うから」

「あれは自らの下へ来いという誘いだな。つまり、帝都に戻らず自国へ来いというものだ」

ラトラスが手と尻尾を横に振ると、ウー・ヤーがはっきり言ってしまう。

それにイルメとエフィも、名乗りを上げた後輩たちを教えた。

「それに乗ってウィーリャもロムルーシに誘うみたいね。あとは同じ派閥らしい、ハルマも乗ったわ」

「ポーがルキウサリアに残ることを誘っていたのはわかったが、クーラは竜人の国まで連れて行く気か?」

ばらされて、僕は睨むような強さのソティリオスから目を逸らす。

僕が損な誘いに乗らないことわかってるんだから、責められる謂れもない気がするんだけどな。

そう思ってたら、ソティリオスから呆れ交じりの言葉が投げられた。

「派手にパレードを成功させたんだ。こんなことだろうと思った」

え、そうかな?

ちょっと今ある錬金術が、ちゃんと錬金術科でできるんだよってことを見せただけでね。

いや、昼のパレードの後に絡まれたのや、新入生が絡まれてたのをあしらったのを聞かれたかな?

うん、すごい責める目だし、ありそうだ。

これは誘われたことを責めてるんじゃない、悪目立ちして皇子だってばれるかもしれない軽率さを責めてるんだ。

「後輩の誘いは受けて、私の誘いを受けない理由はあるんだろうな?」

なんだかソティリオスがすごく今さらな話題を振ってきた。

「そこは普通に無理だってば。え、まさか本当に諦めてないの?」

「家を出て問題ない立場になればいいだけだろう?」

「それ、僕に利点ないって」

「どうしてそう私に対してははっきり断るんだ」

「そこは立場がはっきりしてるからだね」

なんて話してたら、まず皇帝側でユーラシオン公爵の権勢もわかってるハルマが引く。

マクスはちょっと惜しそうだけど、ウィーリャと一緒に引いた。

権力関係よくわかってないポーは、わかってるらしいクーラに掴まれて僕から距離を取る。

「なんだか僕が避けられたみたいだ。権力に物言わせて威圧するのはどうかと思うなぁ」

言ったら周囲に聞こえないよう声を小さくして叱られる。

「現状でどう断るつもりでいたんだ。こちらとしても変なところに縁を繫げられるとやりにくい。後輩だからと気を抜きすぎるな」

ゴーレム関係には、ユーラシオン公爵もルキウサリアとやり取りしてるから、そこは錬金術科の学生なら見える繋がりであり勧誘だ。

だからそれを理由に、家を離れるのは誰かってことを錯覚させて、僕に断る理由くれたのはわかる。

「けどやり方がなぁ」

「おい」

地位に見合った適切な距離の取り方を求められる皇子だろうって、ソティリオスが低い声での呼びかけの中に凝縮してるようだ。

前世庶民の僕からすれば、そういうのには抵抗があるんだよ。

なんて話してたら、勧誘には乗らなかった後輩と新入生が話してる声が聞こえた。

「ラト兄から貴族って聞いてたけど、アズ先輩は偉い人なのぉ?」

「皇帝派閥なんで、偉い人はいないはずだぞ」

平民で疎いナムーに、同じ派閥扱いのはずのシレンがはっきり言っちゃう。

それに同じ帝国出身だけど、別に皇帝派閥じゃないトリキスが知ってることを教える。

「学内で知り合われて親しくされている。ご本人の才能が成した縁だろう」

「あと、社交性がすごい。本当に教養学科に案出してそのまま採用とかされてるし」

真似できないみたいにタッドが言えば、イデスが小首を傾げた。

「それこそ、相手が望み受け入れる案をまとめる才能では?」

「もしや、小雷ランプ作りを見学されていた姫君についても、気づいてらっしゃらない?」

ショウシが今さらな大物との繋がりに驚く様子に、そう言った。

すると噂をすれば影が差すというとおり、ディオラが現れる。

「まぁ、ソーさん。他の方々もいらっしゃいましたか?」

「いや、私だけ先に。錬金術科に教養学科も合流することを伝えようと」

「うん? 合流?」

新入生相手にクラスメイトは、ディオラがルキウサリアの王女って話をしてた。

知ってたのはマクスぐらいだったみたいで、今さら驚いてる。

だからソティリオスとの会話は僕がすることに。

「リーウス校を始め、夜のパレードに参加した者たちで打ち上げをする。それに今回同じく初めての試みをした教養学科も加わることになった」

「あぁ、なんかお鍋するって聞いたけどそれ?」

ソティリオスに言われてディオラに確認すると、楽しげに返事された。

「はい。リーウス校のほうにはすでに許可を取り、交流を楽しみにしております」

「あー、だから用意する飲み物多めにって話だったんだね」

打ち上げの鍋は、リーウス校では夜間の訓練の後は恒例だとかで、今日もその予定を伝えられていた。

その上で、錬金術科としては飲み物を提供するという話になってる。

僕たちは小雷ランプの片づけをして、火を焚いて大きな鍋をかけてる場所へ。

そこはリーウス校の敷地だった。

リーウス校に来たのは初めてだけど、どうやら野外活動用の場所があるそうだ。

そこで火を焚いて、野外用の椅子が並べられ、すでに学生たちが集まってる。

「錬金術科は何をするんだ?」

「錬金術で飲み物を作るそうです」

当たり前のようにソティリオスとディオラが僕らのやることに興味を示す。

それにつられて他の教養学科やリーウス校の学生がちらちら見に来た。

「まぁ、マーケットの練習とでも思えば?」

「なんだ見世物をするのか? こんな風に」

ウー・ヤーが言って、用意しておいた凍らせる薬を、魔法で次々に真上に吹き上げる。

広がる冷感に驚きの声が上がった。

ただ薬が行きつく先は、盥の中だ。

単に飲み物を冷やすためだけだから、大した意味はない。

それでも突然できたよく冷えた飲み物に、受け取った側は驚きもする。

「ほら、エフィ。何かやってみてよ」

「おい、無茶を言うな」

「私たちでは、水の魔法は使えないもの」

ラトラスに無茶振りされたエフィに、イルメが急かす。

「だったら金属のたらいのほうに薬を火ごと入れちゃって」

僕の要望に、エフィは薬液を燃やすと、そのまま操って金盥に入れる。

途端に水蒸気が暗い中でも立ち昇るのが見えた。

金盥の中にあった水が、すぐさまお湯になった証拠だ。

「ほい、こっちは温かいの欲しい奴だな」

ネヴロフは湯気の中にピッチャーを入れて温めるとそう声を上げる。

すると興味を引かれた人が受け取り、ちゃんと温かいとの声がした。

さらには、何をしたのかと聞く者も出て、辺りは賑やかになる。

「エッセンスってあの狩人がたまに騙される詐欺商品?使ったことあるけどこんなにならなかったぞ」

「それが錬金術科が作るとちゃんと効果が出るんだよ。小雷ランプも見ただろ?」

どうやら知ってる人がいたらしく、驚きの声が上がった。

それに、前に小雷ランプ作りを見たリーウス校の学生が取りなすように話す。

今回のことで、少しは錬金術を見直す方向に意識が変わってくれればいいな。