軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

608話:パレード本番3

レックスの会場である講堂で、主宰側かと思ってたソティリオスは、何やらお髭の貴族と対戦中。

他にもけっこう見学者がいて、ゲームをするスペースには大人たちが集まってる。

聞こえてくる声から、学園のイベントを機に再会した同窓生や、見学に来た親同士らしい。

休憩がてらに座りつつゲームするっていうご夫人方もいる。

「…………あ、外の競技に参加するような体力ない見学者の類か」

「人間ってそう言えばけっこう体力ないもんね」

獣人らしいラトラスの感想に、エフィが人間だけじゃないと訂正した。

「獣人や竜人が他の種族に勝るだけだからな」

ラトラス力は弱いけど、瞬発力や持久力ならエフィより上だ。

たぶん一番体力ないのはクラスメイトではイルメだろう。

そしてその次が僕だけど、たぶんこれは他の学生と比べればイルメでも体力はあるほう。

ウー・ヤーとエフィは生まれた家の方針で、体を鍛えることを日常的に今もしてるから当たり前。

何もしないで一番フィジカル強いネヴロフは、それこそ種族の特徴なんだろう。

「ユーラシオン公爵のご令息に話だろう? どうする、一試合して待つか?」

エフィが僕をそう誘った。

「うーん、僕一回しかやったことないし。誰かがゲームしてるところ見たいかな」

「それじゃ、俺とエフィでやる? って言っても、俺もちょっと教えてもらった程度」

流れで、ラトラスがエフィとやることになる。

大人が多くて人だかりになってるけど、休んでる人以外は社交的におしゃべりしてる感じだから、ゲームスペースは探せば端に空きがあった。

盤を挟んで二人が座り、コマを並べるとエフィが先手を譲る。

ラトラスは無難というか、知ってる定石をなぞる形で進めているようだ。

エフィは知ってる定石が多いし、場面で判断して動けるから、意外な展開もなく終わる。

「わぁ、やっぱり普通に強いね。全然勝てないや」

「リーウス校の学生が言ってたみたいに、レックスは指揮する側に推奨されるからな」

どうやら軍関係の人にはより馴染み深いものらしい。

ラトラスも勝てるとは思ってなかったようで、悔しがる様子もない。

早くに終わった試合は、ちょうど良く先にやってたソティリオスも終わる頃。

大人に囲まれてたソティリオスは、人間の中では目立つラトラスにまず気づく。

そして隣の僕を見て、周囲に断りこっちに来た。

「アズロス、様子を見に来たのか。ちょうどこっちも聞きたいことがあったんだ」

そう言って、僕だけをさらに端へ引っ張っていくソティリオス。

空気を読んだラトラスとエフィは距離を取って待ってる。

他のソティリオスの取り巻きっぽい学生も、手振りだけで命じられて距離を取った。

何かと思ったら、言われたのは忠告だ。

「ここは教養学科関係の父兄が帝国からも来ている」

「あ、はい。すぐに退散します」

つまり、ほぼ宮殿から出たことがなくても、その少ない機会で第一皇子の顔を見た人がいるかもしれないらしい。

そうだよね、ソティリオスとさしで勝負するなんていう貴族がいるんだったら、そういうこともあるよね。

「うん、ここの運営に問題ないなら僕ももう離れるよ」

「まぁ、思いのほか試遊スペースのほうが盛況だというくらいか」

「試遊した人たちを上手く、見学側に流せればいいけどね」

「わかった、やってみよう」

僕たちは短く意見を交換して、その場を去ることにした。

「何か問題があったのか?」

「うーん、帝国のほうで僕の家とよろしくない人がいたかもしれないからって忠告?」

エフィに聞かれてだいぶ婉曲に伝えると、ラトラスは納得する。

「確かにあそこ、お貴族さまですって感じの人多かったもんね」

実はエフィもレクサンデル大公国の人を見たとかで、競技やってるほうへ向かうのには賛成してくれた。

周りを見ておしゃべりしてる人たちよりも、目の前の協議に意識を割いてるほうが絡まれる心配は減るだろう。

そうして向かっていると、歓声とも悲鳴ともつかない声が響き渡る。

僕たちは思い当たることがあって、そっちに足を向けた。

「わはー」

なんか楽しそうな声は、うん、ヨトシペだね。

一緒に肉食獣が吠えるような声が聞こえるのは、もしかしてユキヒョウ先生かな?

しかも二人分聞こえるから、ユキヒョウ先生たちは揃ってヨトシペの相手してるらしい。

声は聞こえるけど、すごい人だかりができてて姿は見えない。

ただ打撃音や衝撃音で、観客が悲鳴染みた歓声を上げるから、相当白熱しているようだ。

ちょっと残念だなんて思ってたら、見過ごせないもの発見した。

僕はもちろん、気づいたラトラスとエフィも足を止める。

「そんなに目立ちたいか! 錬金術科が!」

「荒して道具壊して! 迷惑なんだよ!」

ヨトシペが暴れてるスペースから見える範囲にいるのは、ラトラスの親戚の獣人ナムー、同じく獣人のツィーチャ、そして海人のイー・スー。

言葉から荒らしてるのはヨトシペ他クラスメイトとして、ツィーチャの手には確かに壊れた弓がある。

けど、わざとみたいに怒るのはちょっとどうなのかな。

「はいはい、錬金術科だよ。どうしたの? 道具の破損は不特定多数が扱うこういう催しだと、織り込み済みなんじゃないの?」

僕はそう言って間に入る。

けど何故か睨まれるのは一緒にいたエフィだ。

「レクサンデル大公国の競技大会でも、同じように悪目立ちして。錬金術科ではいったい何を教えているんだ、見苦しい」

どうやらレクサンデル大公国関係の人らしい。

その上で、エフィの競技大会参加を荒らし行為扱い。

で、後輩も同じ荒らし扱いとかひどい言いがかりだ。

「俺に言いたいことがあるなら聞いてやる。その上で、今回とは全く関係のない逆恨みを持ち出すな」

エフィが強気に言い返す間に、ラトラスも新入生から話しを聞いて状況を教えてくれる。

「ナムーが弓の弾き方知らずに弦を切ったのは事故。それを張り直そうとしたツィーチャも許可を取った上で問題ない。足が悪くて転びかけたイー・スーもわざとじゃない。それで弓が折れたのを目立ちたいだとか言いがかりだよね」

どうやら弓を張り直そうとしたツィーチャにイー・スーが転びかけて押す形に。

するとたわませていた弓にそのまま全体重をかけてしまい、結果的にツィーチャが弓を折ったらしい。

「事故で弓を壊した。迷惑は掛かっただろう。けど、それを理由に主宰する側が、参加者を一方的に怒鳴りつけるのはやりすぎだよ」

ここで退けって意味で言ったんだけど、向こうは喧嘩を売られたと思ったようだ。

なんでかなぁ、血の気多すぎない?

思春期怖い。

とか思ったら、エフィが上から見下ろすようにして言った。

「ただ自分より目立つ相手が気に食わないだけの狭量な者もいる。言って聞かないなら黙らせるほうが早い」

ちょっと目を逸らしてるの、昔の自分のこと言ってる?

いや、でもそれで向こうはやる気になっちゃったよ。

一人が先手必勝とばかりにエフィに殴りかかるけど、エフィは動けるほうだから簡単にかわす。

その上、カウンターで同じように拳を食らわせて地面に倒した。

そしてもう一人は僕のほうに来てる。

「えっと、確か」

言いながら僕は、迫る相手の拳を片手で逸らしつつ肘をかち上げた。

そのまま上がった相手の腕を掴んで、大きく回すように引っ張り重心を崩す。

そして前のめりになったところで軽く手首をひねって関節を極めると、相手はそのまま地面に倒れた。

うん、エフィみたいな豪快なカウンターなんて、僕は教わってない。

こういう、攻撃をいなした後の無力化っていう形の護身術を習ったんだ。

最初に受け身教えられたし、ヘルコフって家庭教師としてはけっこう過保護だったのかもしれない。

「まぁ、今の動きはどのような技術なのでしょう?」

「え、全然力入れてないような動きでなさってましたよね?」

イー・スーが興味を示して、ツィーチャも目を瞠る。

それに新入生たち守る位置にいたラトラスが答えた。

「アズって相手に先制されてからの返し技上手いよな」

「今のなら俺でもできそう。どうやるの? 力いらないんだよね?」

ナムーがもっふもふの尻尾で懐いてくるけど、まだ手首押さえてるだけだから離れてー。

「相手の力を利用して倒してるからね。安全に倒せる技だけど、一時的だよ」

「ま、こうして倒されてる内にナイフで首をやられたら終わりだな」

エフィが怖いこと言う。

けど、それで僕に倒された相手も負けたことは理解したらしい。

手を離すと、負け惜しみを言いながら去っていった。

「弓回収してほしいんだけど? …………あと、この尻尾外してほしいな」

何故かナムーと一緒に、ツィ-チャも僕に尻尾を巻きつけて来てる。

そしてイー・スーも寄って来て言った。

「先ほどの技、お見事でございました。どうかお手ほどきをお願いします、先輩?」

どうやら先輩として、後輩に教えることが増えたらしかった。