軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

589話:春の行事4

ボードゲームの学生大会については、ソティリオスを始めとした教養学科に投げ、僕はそっちには関わらないことを告げた。

もちろん言い出したからには相談には乗る。

その上で、ディオラは王女という立場もあり、夜間のパレード案に手を貸すことになった。

結果、王女効果なのかすんなり夜間パレードは許可。

リーウス校もディオラが入ってきたことに驚き、腕試しの後、音楽科に回された時も大人しめだったけど、今はもっと静かになった。

「あ、光った! アズ先輩! 見て!」

「ポー、揺らすとずれて消え…………たね。固定が甘かったんだ。一度開けてやり直さないと」

後輩のポーが初めての小雷ランプ作りに興奮した途端、中のフィラメントが衝撃でずれて作り直しになる。

しおしおとしてしまうポーを、アシュルが慰め、クーラが小雷ランプを回収すると、解体を始めた。

人間とは違う竜人の手だけど、けっこう器用なクーラは無駄なく作業をする。

他にも新入生で、王族のマクスがはまったようだ。

「はぁ、こんな作業は初めてしたが、中々に面白い。これが錬金術か」

もともと錠前に関心のあるハルマも、器用にこなしながら鼻歌でも歌いそうな顔。

「錬金術でこんなことができるなんて初めて知りました! んふふ、いくらでも作ってたい」

ただ小雷ランプ作りで、一番器用さを発揮したのはフォレストキャットなツィーチャ。

僕は近くにいたウィーリャに聞く。

「ツィーチャ、はんだ付けも初めてやったって言ってたのに、もう合金自分で溶かして棒状に成型するのまでこなしてるね」

「えぇ、魔法が使えない以外の努力をしてきた子ですから」

入学を勧めたウィーリャなりに、やっていけると思ったこそらしい。

僕たちは木の板にはんだ付けで金属の回路を作ってる。

さらに先に作っておいたガラス器具にフィラメントを入れ、そこから真空状態にするのが難しい作業だ。

ただし、今の錬金術科においては、そうでもない。

「おい、次のガラス管は?」

「こちら、全て終わりましたよ」

ヴラディル先生とウェアレルが、真空にするって難しいはずなのにさっさと済ます。

さらには二人がかりで同じ作業をすることで時短した結果、一番難しい作業のはずなのにもう終わってる。

それには、魔法が得意なイルメとエフィもあきれ顔。

「相変わらず簡単そうにやるのだから、立つ瀬がないわ」

「これを見ると、九尾と同輩だった魔法学科出身者に同情しそうだ」

そんなこと言いながら、その二人も魔法による真空管づくりをしてる。

さらに隣では、ラトラスとネヴロフが酸素燃焼による真空管づくりをしてた。

ガラス管の中に火を入れて、空気が入らないように素早く閉じるってやり方だ。

僕はその手伝いで、風が吹かないよう魔法で調整しながら、魔法陣による回路部分を作る後輩の監督もする。

うん、ちょっと魔法のほうはセフィラに頼むっていうズルしながらね。

「あ、タッド。手が空いたならイー・ソンとイー・スーの手伝いに行ってあげて。ともかく一つ、作れるように」

「はいって、あ! 肘! 鏝! 落ち!?」

タッドが声を上げて、熱した鏝の握りを掴んで持ち上げた。

どうやらイー・スーの肘が当たって、熱した鏝が落ちそうになってたらしい。

熱してた部分が当たっても、落ちても床が焦げるため、タッドはナイスプレーだ。

「まぁ、助かりました」

「うん? 円が合わない?」

気にしないイー・スーに、はんだ付けしてるイー・ソンが何処かで魔法陣を間違えたらしく首を捻る。

タッドは危ない道具を片づけてから、間違いを探して指摘し始めた。

さらにはんだ付けやり直しのために、木の板の表面を削ることもしてかいがいしい。

僕がお願いしたけど、タッドは海人の双子の相手でだいぶ忙しそうだな。

「うん? ナムー、なんか焦げ臭いぞ」

「あー、毛が焦げたぁ。俺これ、やらないほうがいいと思うよぉ」

シレンが言うと、いつの間にかはんだ鏝でナムーの毛が焦げてる。

そう言えば、勘は良くても器用じゃないみたいなことをラトラスが言ってた。

「真空管もできてるし、ナムーとシレンは、組み立てやってもらおうか。ウー・ヤー、いけそう?」

僕が促すと、小雷ランプの外装を仕分けして、パーツの調整していたウー・ヤーが応じる。

「あぁ、鉄筒を取り付けて、ねじで固定した。これで持ち手になると思う」

僕たちは小雷ランプを作り、さらにこれまでの街灯としての固定ではなく、パレード用に持ち運びできるように改良してた。

ついでに後輩と新入生に小雷ランプの作り方教えてる感じ。

で、それをディオラが見学したいと言いだしたんだ。

だったら小雷ランプができること信じてなかった、リーウス校も呼ぼうとなってる。

「本当に魔法の理論では説明のつかないものですね。けれど確かに光って、魔法の如く輝いています」

ディオラは嬉しそうに、完成した小雷ランプを眺めた。

同時に、ワイワイやってる後輩たちをちょっとうらやましそうに見てる気もする。

ごめんね、他学科のお姫さまだから参加は駄目ってことになったんだ。

で、錬金術科に足を運んだリーウス校の学生たちはと言えば。

ポーが勇んで光らせた辺りで開いた口がふさがらなくなってた。

「うむ、光を放つは魔法においても奥義。錬金術であればこの手で光を生み出せるのである」

アシュルが竜人の尻尾を床で大きくくねらせながら、小雷ランプに満足げ。

あれは喜んでるでいいんだろうな。

ヴラディル先生は苦笑して、錬金術の実情を明かす。

「冷やしたり熱したりに使ったエッセンスとその薬、そしてこの小雷ランプ。どちらも帝都に残っていた錬金術だ。だから、正直俺も知ったのはここ数年のことなんだがな」

「と言っても、帝都でも錬金術は下火ですから、正しく技術が伝わらず過小評価され続けていることには変わりません。まず、何が残っているのかを現在精査してもいます」

ウェアレルもフォローして、ルキウサリアが国で錬金術を調べてることも添えた。

ディオラは真面目に聞き、リーウス校は口開けたまま聞く。

その間に僕たちは、握りである支柱の上にランプの外装を設置して、その中に小雷ランプを据えた。

簡単な掲げる形の小雷ランプを完成させて、一度危険なものを片づけて場を整える。

「よし、それじゃ点けよう。明かりを消して窓を塞いで。あ、あと重さを確認するためにも手を貸して。はい」

「え、え!?」

リーウス校での腕試しで、指揮官役やってた学生に小雷ランプを押しつける。

両手で支柱を握り込んでどうすべきかを迷ってるから、さっさと行動に移した。

暗くなった室内で、僕はランプ部分に魔力を流して小雷ランプを起動させる。

そして呆然としてるリーウス校の学生に、掲げて持つために腕を動かすよう指示した。

すると、暗い室内で白熱灯程度の明かりが周囲を照らす。

僕としては全然光量が足りない。

前世普及してたLEDからすればずっと暗いんだけど、それでも暗い部屋の中で物の色が判別できる程度に照らす様子に、後輩たちは歓声を上げた。

「まぁ、故郷にもこのようなものがあれば重宝されましょうに」

「夜を歩くには、松明に勝る十分な明るさですね」

黙々と作業してたショウシとイデスが、小雷ランプの実用を語る。

その間に、別の形のランプに小雷ランプを入れて光らせたトリキスが辺りを見渡した。

「これは、ランプの形で照らされる範囲が思いの外影響されるようだ」

ランプは本来火を入れる物をリサイクルしてる。

リサイクル屋さんみたいなところから買ったから、形はまちまちだ。

今二つつけた小雷ランプは、形によって照らす範囲も、広がる光量も違う。

それを見てディオラは、まだ支柱をつけてないランプの外装を見た。

「パレードであれば、形は揃えたいところですね。どのランプが最も適しているかを検証すべきではないでしょうか?」

その声に、錬金術かは次々に外装の中へ入れた小雷ランプを光らせ始める。

結果、付け過ぎてどれがいいかわからなくなって、わちゃわちゃと収拾がつかなくなってしまった。

それを見ながら、リーウス校の学生は未だに僕が握らせた小雷ランプをまじまじと見て信じられない風。

その上で、ヴラディル先生を見た。

「どうして一流の魔法使いが、錬金術など」

僕はそっと寄って行って、聞き飽きた質問に質問を重ねる。

「風の魔法使いなのに、光を作れるなんて、錬金術以外でできると思う? ちなみに、雷も小規模だけど作れるよ、錬金術」

言うと、信じられないような顔をされる。

けど、その口から否定の言葉はない。

すでに目の前に無理だと思った実例があるんだ。

そこを無視するほど考えなしでもないけど、受け入れるには今までの常識が邪魔する。

僕はさらに作業に使ったエッセンスの薬で氷を作って、驚かすことにした。