軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

585話:弟の派兵準備5

「だから言ったじゃないですかぁ。呪文作りでもちょっと使ってみただけで問題点見つけるような学生ですよ? そんな子ができるって言って、ただの大口叩くわけないでしょう。何よりあの九尾の超人が連れて来るんですよ? 常識通じるわけないですってぇ」

なんか最後にとんでもないこと言われてない?

僕は研究者の助手の女性にどんな印象持たれてるんだろう?

もう完全にプライド折れてる元上級生は、ここに来てようやく冷静になったようで、すごく後悔した顔になってる。

そもそも卒業前に箔づけのために喧嘩を売っていたのに、すでに卒業もして就職してるんだ。

ここで錬金術科に喧嘩売る必要なんてなかったんだよね。

けどそれで折れないのが、九尾を目の敵にして張り合おうとしてる研究者だ。

「そもそも条件が違っているのがいかん! そちらが道具を使うのであれば、こちらも最上級の杖でも魔力の増強剤でも使うべきだった!」

「そこは最初に段取り決める時に使っていいって言ったのに、ねぇ?」

「用意しなかったそっちの落ち度でしかないでしょ、往生際悪いなぁ」

ユキヒョウ先生たちが雑にあしらう。

ヴラディル先生にいたっては、赤炉のお披露目も兼ねてたからほぼ無視。

作ったネヴロフとウー・ヤーに、錬金炉とどう違うかの説明を聞いて楽しそうだ。

ウェアレルは実際使ったイルメとエフィに、聞き取りみたいなことしてるし。

「魔力の消耗は威力の割に軽微と。それに関して術者としての見解はありますか?」

「私は火を送り出すことをしただけです。最初はそれで消耗もしました。けれどアズの助言で軽微と言える範囲に収まっています」

「あぁ、俺も威力よりも渦を作るというほうに集中したら楽だった。向きは赤炉自体を動かすだけでどうにでもなるしな」

そして手持無沙汰なラトラスは僕に聞く。

「ねぇ、もうこれって、兵器って言わない?」

「ないない。二つの属性持つ魔法使い二人がかりだよ? しかも動かない相手を燃やすだけ。だったら直接燃料と一緒に魔法放ったほうがいいって」

「あ、うん。アズ、けっこう実用具体的に考えてるんだね」

自分で聞いておいて引かないでよ、ラトラス。

けど時期的に、僕も兵器になりそうだとは思ってしまったんだ。

テリーが派兵決まったし、だったら、少しでも力になれるものって考えちゃうよ。

けど赤炉はそうじゃないって言うのが今回のことでもわかった。

「あれ、錬金炉を改造したものなんだよ。つまり、本来の用途は蓋を閉じてこそ真価を発揮するんだ。それを今回無理矢理火炎放射する形にした。つまり、実験した時よりも火力は落ちてる」

「そう言われるとそうかも? けど回転率とか図ってないのによくわかるな?」

聞こえてたらしいネヴロフに、ウー・ヤーも考える。

「感じる熱量の違いじゃないか? あとは内部構造からの推測でも考えられる範囲だ」

それにエフィとイルメも、本来の赤炉の火力に興味を示した。

「想定外の用途に耐える運用ができるのも驚きだが、あの威力でか」

「というか、あちらの呪文がどうとか言うのは何をしているの、アズ?」

イルメに聞かれて、ヨトシペの呪文のことは言ったことなかった気がするかも。

僕がちょこちょこ不在にするのは日常だから、その分聞かれもしなかったから。

「うん、ヨトシペの独特な魔法の使い方、呪文に落とし込むってことを手伝ってね。それで、形になったはずなのに使えないから、どうしてだろうって相談されたことがあったんだ」

「お蔭で使えるようになったんだよな」

ヴラディル先生が研究者を横目に言えば、当の研究者は地団駄を踏む。

それを助手の女性が馬相手にするような声をかけながら宥め始めた。

するとユキヒョウ先生二人が僕のほうへと寄ってくる。

「何? 君魔法にも興味あるの? だったら僕らと道具作りしてみない?」

「兵器作るでもいいし、こんなの作るならなんだか面白い物造れそう」

物騒な教師だね。

もちろん答えはノーだ。

「いえ、そんな面白くなさそうなことはしません」

僕の答えに、ウェアレルが一人明後日の方向見てる。

うん、面白がって軍事転用できる伝声装置作ったけどね、本意じゃないんだよ。

ナイラについてた拳銃っぽいものは説得して外させたし。

ヴィーラにも搭載させずに、対抗手段欲しがられた時には、ウェアレルに威力調整してもらってテーザー銃的な電気ショックにしてもらったし。

「ともかく、ウー・ヤーとネヴロフは赤炉まだ改良するなら、内部でどれだけ熱量をあげられるかを考えたほうがいい。エフィは火力求めるなら、できるだけその他の制御に魔力振り分けないやり方探るとかね」

そんな風に話しながら片づけを始める。

邪魔だから助手の女性と元上級生には、喧嘩売りたがりの研究者を回収して先に帰ってもらった。

「いやー、面白いもの見せてもらった。この的も燃え方に個性出てるね」

「燃焼実験の考察に使おうか。これこっちで回収するよ、いいよね?」

ユキヒョウ先生たちが的人形を台座ごと移動せる。

錬金術科は気にせず赤炉の搬出と、使った場所の整備をしてた。

そうして赤炉を学外、学園都市外の工房に戻して、僕は屋敷へと戻る。

すると、すでにウェアレルが戻っていて、今日あったことをヘルコフとイクトに話した後だった。

「赤炉ってのは、そこまでの? 兵器じゃないなら何に使うんだ、その火力?」

「熱量を上げる方向での改良を示唆されていたとか? 暖を取る、などか?」

僕が何か思って赤炉作らせてると考えてるらしい。

まぁ、違わないけど、そこら辺は長い付き合いでばれる。

けどそもそものことをまずは訂正しよう。

そう考えて、僕は寮に通じる隠し通路から、屋敷の錬金術部屋に戻った。

「僕は兵器作ろうとは思わないよ。テリーの派兵はあるけど、攻撃に関するものってそれだけ、奪われた時にはテリー自身を危険にさらすことにもなるし」

今回の地伏罠は逆だ。

向こうが攻撃手段を得たと思ってるけど、すでにこっちも入手済みで無力化可能。

やり方によっては、敵側に反撃する手段にもできたけど、それはやらない方向。

「できればテリーの補助とか回復のほうを伸ばしたいところだけど」

「錬丹術ですか? それとも不完全エリクサー?」

ウェアレルが僕が手を伸ばせる薬に関してあげる。

最近知った薬特化の錬金術に、封印図書館で研究されてたエリクサーの考察。

確かにそれらを使えば、まだ不自由してた僕でも作れた、不完全エリクサーよりいいものが作れる気はする。

「さすがに夏にってことだし。もう動き出してる。今から研究して送るには遅すぎるよ」

ルキウサリアからひと月かかるけど、それは帝都までの話。

帝都から東に発つテリーは、夏にはもう帝都にいないはずだ。

今から作って完成可能かもわからないなら、それは皮算用でしかない。

「一番役立ちそうなのが、テリー自身が望んだ伝声装置だし。そっちのほうがまだ安全だ。身を守るために、危険のない何か思いつければよかったんだけどね」

今の僕には思いつかない。

「ゴーレムを思うとおりに動かせるならありだけど、あれ、セフィラがいないと無理だし」

ハリオラータ相手に有効だったから、大抵の魔法使いや犯罪者には通用する。

材料になる石材の運搬はまだ許容範囲だけど、起動させてからその場で対応させるために、術式を次々に組み替えて動かすには、人間の頭と魔力では足りない。

僕はロボットアニメやカーアクションを知ってるから、セフィラを補助できた。

けどこの世界しか知らないテリーじゃ、頼るだけ大破の可能性があって危ない。

僕が考え込むとヘルコフが赤い被毛の指を立てる。

「だったら、周り強くする方向に考えちゃどうですかね?」

イクトも頷いて言った。

「弟君の武器の扱いに不安があると言うのであれば、慣れた者任せるのも手でしょう」

言われてみれば、皇子は守られる側だ。

その分周囲が死なないように、動けなくならないように備えればいいのか。

そう考えると、錬金術で作った護身用の何かを身に着け、時によっては使うっていう判断を下す相手に、一人思い当たる人物がいる。

「ユグザールに、ナイラとヴィーラにつけた電撃の術式送ってみようか。ゴーレムで使用に制限かけて、テリーが許可したら使えるみたいに」

ゴーレムは作った者が起動させられるし、作った者しか停止させられない。

つまり小さなゴーレムを仕込むことで、安全装置代わりにできた。

そしてテリー自身が害されるなら止めればいいし、実際使って怪我することも、ユグザールに使わせることで回避できる。

「となると、使い慣れない発射装置よりも、棒状のほうがいいかな? ナイフくらいの長さにして、片手で扱えるくらいで」

前世にあった警棒とか参考にできそうだ。

握り以外を薄い金属の筒にすれば、術を発動することで帯電する。

うん、いいかも。

テリーの騎士ユグザールを強化する方向でちょっと考えて、春の内に送れるよう手配しよう。