軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

569話:ヘルプを要請される4

冬休みに登校しつつ、僕は王城にもちょくちょく顔を出していた。

そんな中、さらに別からも呼び出しを受けることになる。

そのせいで雪に閉ざされたルキウサリアで、今日はちょっと遠出だ。

「なんで、当たり前に中にいるの、クトル?」

「さすがに寒いんで外だと長話もできないし、ですね」

僕が呼び出されたのは、ハリオラータの幹部が収容された元修道院。

なんか半泣きで担当者が屋敷に駆け込んできたんだよ。

何かと思ったら、増えてるとかなんとか言ってて要領を得ない。

で、こうして来てみたら、本当にクトルというハリオラータの頭目が増えてたんだ。

その上で僕は、現状の問題を告げる。

「ここね、入るの簡単でも出るの大変なんだよ?」

「あ、やっぱり? なぁんか皇子さまが守り監修してるにしては温いし、そういう罠っぽいなとは」

クトルも犯罪者として追われてたから、何か感じるものがあったらしい。

こっそり入って出て行くなんてことはせず、堂々と入って居座った上で、罠を仕かけただろう僕が呼ばれるようにしたようだ。

「ついでだから出力のテストでもさせようかな?」

「この後またこの雪山降りるんで、疲れることは嫌なんっすけど?」

よく見れば、裾や袖が濡れてるクトル。

何処を雪中行軍してきたんだか。

しかも先にいたハリオラータは、誰も助け船を出さず、どころかカティとマギナの女の子二人は、僕に期待の目を向けるばかり。

今日はクッキーのアソートだから、甘い焼き菓子の匂いがしてるせいだろう。

ただ今はクトル優先だ。

そこら辺は年長のアルタとイムがわかってるようで、何か言おうとするのは止めてる。

「それで、長話はいい話だと聞く気分にもなるんだけど?」

「そういうわけでもないんですが、実は…………誰も出て行かないって言うんで、もう皇子さまのほうから指名してくれません? あ、ちなみにバッソも早くこっち来たいってうるさいんですけど、爆破するならあいつ外のほうがいいですかね?」

思わずハリオラータたちを見る。

そしたら全員指名されたくなくて、一斉に目を逸らした。

クトルも目を逸らすって、頭目の自覚はないの?

「クトルを主軸に動いてもらうとして」

雪中行軍決定のクトルが、がっくり肩を落とす。

「シャーイー関係の動き教えて。それで適した人材に当たってもらうから」

「はぁい。狙う坑道はいくつか目星はつけました。そのリストと特徴書いたのがこちら」

クトルは腰を落ち着けて話す前提で、資料を取り出す。

確認すれば、けっこう内情が詳しく書かれてた。

産出量と何処に配分されてるか、重要度と守りの評価、あと坑道としての形式。

聞いたら、戦争のために魔法使いの貸し出しとかしてたらしくて、そういう人員から聞き出したものなんだって。

「はい、返す」

「はい、どうも」

セフィラが覚えたから返したら、そのままクトルは魔法で燃やす。

呪文はなし、何か印を結んだ様子もなし。

ただし、セフィラが指輪に魔力通したとのお知らせあり。

「その指輪、焚き火とかに使えそうだね」

「うわぁ、もうちょっと驚いてもいいのに…………」

「似たことできるし」

言ってなんの予備動作もなく指先に火をつける。

やってるのはセフィラだけど、道具を頼って限定的な魔法というか、現象を起こすのは前世の技術がそうだったから驚かないかな。

というか、指輪型の着火装置だと思うと、そのおしゃれさに驚くよ、僕は。

不満げなクトルを急かして、さらに詳細を探る。

「あの地伏罠はどうなったの?」

「はいはい、取引については随分舐められたもんですけど、それが功を奏して全然疑ってなさそうっす。ただ相手方の出方や警戒具合を確定するために、アルタかカティがいたら」

クトルに呼ばれて、アルタは仕方なさそうに目を向ける。

ただカティはそっぽを向いて拒否の姿勢だ。

どれだけお菓子が離れがたいの?

これは餌付けしすぎたかな?

クトルはそんな反抗的な態度を置いておいて、さらに必要人員を上げる。

「で、坑道潰すには、イムかマギナ」

今度はイムがそっぽを向いた。

マギナは泣きそうな顔でクトルを見つめて無言の訴え。

そして当のクトルは、困り顔で僕を見る。

「うん、話を続けよう。東については? 兵乱はどんな感じ?」

「そっちは冬の間はやらないで止まってて、今回の地伏罠の購入も春にまたやるのを見据えての商談でしたよ」

冬の間止まってる東の反乱だけど、春になったら確実に再開するそうだ。

そこにテリーが行くとなると、夏頃かな?

「地伏罠を向こうに渡すのはいつの予定?」

「それが、色々研究施設潰されてるんで、数用意するのにも時間がかかるってことで、こっちである程度は操作できます」

「じゃあ、早くて夏頃がいいね。冬前には終わらせたい」

「えぇ、そうかと思ってましたよ。で、うち潰すための交渉ごとも冬は止まってると思っていいっすか?」

つまり、クトルは名目上、ハリオラータを助けるために金がほしいといって、商談を持ちかけた。

そして追い詰められた状況を装って、シャーイーに近づいてる。

だから冬は準備と称して引き延ばせるし、春にも引っ張るけど、夏までゆっくりするのは状況からシャーイーにも疑われるだろう。

このルキウサリアは冬は雪に閉ざされるから、交渉ごとは必然的に止まる。

「…………春に坑道を潰すことは?」

僕としてはテリーにはしっかり準備してほしい。

そのための時間稼ぎにも、テリーを派兵の名目手に入れられるくらいの戦場と思ってもらうためにも、シャーイーの弱体を狙いたい。

クトルは意味深にハリオラータを見回した。

「つまり、全員いるなら簡単?」

「坑道二つ潰すくらいは」

「もちろん却下だけどね」

「ですよねー」

人質でもあるし、全員を解き放つことはできない。

けどことに当たるには、数いるほうがいいっていうのは確かだろう。

「連絡役として、アルタかマギナにはここに残ってもらう必要がある」

アルタとマギナは驚いたように笑う。

外との連絡役として、二人が力を使ってるのはセフィラがすでに察知してた。

人質としても、ハリオラータの動きを制限する必要がある人員としても、他人を操れるマギナの脅威度は大きいから一番の居残り候補だ。

自ら図ってクトルをはめる意志のあるアルタは、手元に置きやすいって利点がある。

ただ問題は残りたい人はいても、行きたい人がいないこと。

「頭目として説得は?」

「無理」

正直情けない返答だけど、確かに仲間にはめられるような相手だ。

頭目としてリーダーシップはそこまでじゃない。

けど執着の上で、そういうふうに動いたり強制したり動かすことはする。

ただそれ以外では、あまり上下のあるような言動もないから、やっぱりいまいち頼りない。

そうなると、強要するには僕が口を出すしかないか。

「えー、じゃあ…………頑張ってくれた人には、戻ってきた時にとっておきを用意しようか」

途端に、ハリオラータ全員が僕を射抜くように見る。

あまりに強い視線に、イクトが反応して前に出た。

うん、飢えた目って言うか、期待が行き過ぎてる気がする。

というか、うん、これが素なんだろうな。

常人から危険視される淀みの魔法使いだってことを、なんだか思い出した気がするよ。

こうして誘えば欲で動いてくれるのはいいけど、やりすぎも抑制しなくちゃいけないんだろう。

「アルタとマギナは残留」

「「え!?」」

「って、言ったよね?」

しょんぼりしちゃった。

逆にカティとイムが勇んで出て行こうとするのも止める。

「いきなり減ると困るから、こっちも他に知らせてからね。で、クトルはそろそろ出よう」

セフィラのお知らせで、ハリオラータが増えたことに関して説明求める役人が、待ちきれずに突入しようかと相談始めたらしい。

しかも、どうせこのままだと報告するだけで首が飛ぶから、この収容施設の不備を聞き出して死んでやるなんていう、職務に真面目な方向で暴走しようとしてるとか。

クトルにはクッキーのアソートからいくつか取り出してハンカチに包んであげた。

そして防犯機構をいったん止めて外に連れ出し、事情を聞きたい役人から逃げるように人気のない雪の中で足を止める。

匂いを嗅いでクッキーを口に放り込むクトルに、僕は重要なことを質問した。

「それで…………とっておきとして出すのって、魔法と錬金術とお菓子とどれを期待されてると思う?」

クトルは答えようとして、クッキーを見下ろし一度口を閉じる。

僕に目を戻すと、何度も口を開いては閉じて答えに迷ってしまったのだった。