軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

529話:九尾の貴人4

結局、翌日に王城にお邪魔して話し合いになった。

急なことでもルキウサリア国王は会って、まずは貴人が門番振り切ったことを詫びてくれる。

その上で僕が連れ去り直前まで行ったことを詫び、ようやく本題に入った。

「第一皇子殿下は、対処を何かお考えか?」

「今まで学園が対処していたと聞いてましたが、そちらに任せることは?」

「九尾の貴人は自儘な者と聞いている。現れればよくよく祭り騒ぎに発展するとも」

「あぁ、想像はできます。ただ王族ですよね? こちらに挨拶などは?」

「そもそも学園の関係者として扱うことを言ってきたのは向こうであり、そちらでの活動に制限することで騒がぬようにとの暗黙の取り決めをしているのだ」

どうやら九尾の貴人も堅苦しいのが嫌で王城を避けてるらしい。

そのため、やって来ても学園都市でだけしか動かない。

王城は基本、大して対処せずに済んでいたとか。

「まぁ、僕は絡まれることが決定しているので、学園の範囲で動いていいなら楽ですね」

「過去、テスタ老も誘拐未遂にあっているため、重々気をつけられよ」

「あ、テスタと接触させるのは危険かと思ってたんですが、もうやった後なんでしたか」

そう言えば僕が生まれる前から薬術の権威なんだし、九尾の貴人たちだってテスタを国に連れ帰るくらいは考えるし実行してるよね。

あの性格だと。

ただその後にルキウサリア国王が漏らした内容は、僕の予想以上。

どうやらドワーフの血から受け継いだ怪力で、連れ去ろうとする竜人と押し合いへし合い。

二対一と見せかけて、テスタを助けようと学園関係者も参戦で喧嘩祭りのようになったとか。

その上で、最後はヨトシペがグルグルどーんと叫んで終わらせたらしい。

「グルグルどーん?」

「そう、聞いている。実態としては、竜人二人を同時に投げ飛ばしたとか」

僕とルキウサリア国王の間に、妙な沈黙が落ちる。

気を取り直すように、ルキウサリア国王は咳払いを一つ。

「おほん、何をするかを聞こう」

「商人として優秀だと聞きました。であれば、こちらの活動を嗅ぎつけられるのも面倒です」

僕の短い説明に、ルキウサリア国王は頷く。

先ずは魔導伝声装置、さらにハリオラータ関係の最近の魔法に関する諸々。

そして封印図書館。

もっと言えば天の道や転輪馬も今さら口出されても面倒な案件だ。

「現状、青いアイアンゴーレムなら、錬金術科のヴラディル先生を通して介入しようとするでしょう。しかし、実際に見たあの勢いでは、アイアンゴーレムを調べるとなれば口を出しだけでは済まないと思います」

「それと共に学園のほうから不穏な話が聞こえている」

ルキウサリア国王は、昨日の内に届いただろう九尾の貴人の言動を話した。

「実は、学園でハリオラータの襲撃、そして捕縛の顛末を聞いたらしい。そこからハリオラータを見たいと言い出している」

ピンポイントで駄目なところついて来るなぁ。

これが商人としての勘の良さなのかどうか。

「もちろん厳にそのようなことは許されないと言い聞かせるよう、学園の側には伝えた。しかしハリオラータの魔法理論を解析しようとする中に、九尾の賢人たちも関わっている。そちらから接触があるかもしれない」

「そちらは逃げる程度には巻き込まれることに警戒しているようなので、線引きは自らできるでしょう」

ルキウサリア国王も僕に頷く。

「学園都市での活動がほとんどだが、耳ざとい者は売込みに向かう。どれくらいの滞在かはまだ決めていないとのことだが、すぐさま錬金術に目をつけるかは五分だと思っていたが」

「いえ、錬金術科が潰れていることも想定して訪れたようです。それが今、青いアイアンゴーレムの研究に携わるほどになっている状況も知っている。腕のいい商人であるなら、必ずその理由を探ります」

僕が知る竜人は少なく、今語る参考にしてるのは海人とのハーフのモリーだ。

あのバイタリティはすごいし、放っておくわけがない。

そして竜人の血が混じってるモリーがあれだと、場合によっては九尾の貴人が上回る可能性すらある。

ルキウサリア国王も否定できない様子だ。

やっぱり商人としての勘というものがあり、ルキウサリア王国としても関わってきた経験だけでは予想しきれない人物なんだろう。

「なので、分断しようと思います」

「うん?」

「その後でルキウサリアからは一度離れてもらうように誘導する予定です」

「は?」

ルキウサリア国王が相槌というにはちょっと抜けた声を返す。

僕たちの話を聞いてた中には、伝声装置運搬要員として残したレーヴァンもいた。

「殿下、殿下。間教えてください。青いアイアンゴーレムとか錬金術科とかの間に、何を分断するんです? どう誘導するんです?」

「分断するのは九尾の貴人だよ。あの二人が揃ってると対処が二倍になる。だったら、片方を別のものに釘付けにしたらいい」

ちょうど分断されてくれそうなネタはある。

「で、誘導は、今だけってことを推して漫遊に出てもらう。ヘリオガバールのほうがどうかはわからないけど、たぶんあれだけ押しが強いなら興味さえ持てば行ってくれるだろうし。ついでに資金源になってくれるなら助かるなと」

「だから間教えてくださいって」

考えながら話してたら、レーヴァンが同じことを繰り返した。

「ようは学園側、錬金術科で対処できそうだって話だよ」

笑いかけるとレーヴァンの眉間に皺が寄る。

ルキウサリア国王も同じように顔を顰めるんだけど、なんだかその表情似てた。

もちろん対処のためにちょっと手を借りたいから説明はする。

その上で僕は、午後に錬金術科へ向かった。

「ワンダ先輩、いらっしゃいますか?」

「わたくし? どうしたのかしら、アズ」

就活生の教室に行くとちょうどワンダ先輩と目が合う。

だから昨日九尾の貴人と会ったことを話した。

一緒にいたテルーセラーナ先輩に関しては、街で偶然会ったことにする。

「美しいものが好きだそうで、身を飾ることもします。そして女性ものをあえて身に着けていらしたので、化粧品に関しても興味を持つかと。で、コーディネート? プロデュース? してほしいんです」

「なんでまたそんなことになってるんだ?」

聞いたのはテルーセラーナ先輩の名前に反応したエルフのウルフ先輩。

「青いアイアンゴーレムを買おうと乗り込んで来たらしくて。青い絵具として絵を描かせるとか言うので、素材として解体されそうな感じでした。お金で殴るタイプというか」

「えー、そんなことされるくらいなら僕が欲しいのにぃ」

「お前は黙ってろ、スティフ」

ステファノ先輩が言うのを、話の腰を折るなとキリル先輩が止めてくれた。

僕は改めてワンダ先輩に説明を続ける。

「お名前はトレビジィト・ソコルルオウルという方で…………」

「ヘリオガバールの皇帝一族じゃん!?」

反応したのは羽毛獣人のロクン先輩。

そう言えばヘリオガバールの出身だっけ。

「何か知ってます?」

「知らない知らない! うちは国境の山奥の一族だから、血の皇帝なんて末端すら知らない! っていうか、ヴィー先生そんな血筋の人と机並べてたの!?」

なんか新情報出て来た。

血って、やっぱり兄弟殺しで皇帝になるって話からかな?

「ともかく姿はクーラが見てるので、ワンダ先輩聞いておいてください。ロクン先輩も地元の常識とか禁忌とかあれば補助を。たぶん近い内に錬金術科に突撃してくると思うので、足止めが必要になると思います」

「ひぇー、竜人の皇帝一族? とんでもない人が来たみたいだね」

怯えるトリエラ先輩に、オレスが突っ込む。

「いや、一緒に化粧品のやってたんならお前もだろう」

オレスにびっくりするトリエラ先輩を、ワンダ先輩が腕を掴んで確保。

キリル先輩は止めず、僕に聞いて来た。

「貴人は二人のはずだ。もう一人の足止めはどうする?」

「先生がしてくれると思いたいですけど、一応僕のほうでも準備しておきます」

そう言って、色々騒ぎ始めた先輩たちの教室を後にする。

もう一人を足止めする方策を考えながら、僕は自分の教室に向かった。

「もう、おっそーい!」

「ようやく来たな!」

教室に陣取る紫色と紺色の竜人は、昨日と違う装飾品着けてるのにきらきらしいのは変わらない。

うん、すでにいたよ。

がっくりする僕に、教卓では同じようにがっくりしてるヴラディル先生が目に入った。

「あの、先生?」

「すまん、押し切られた。せめてウィーがいたら止められたんだが」

やっぱり二人同時に止めるのは無理らしい。

僕はしょうがなく、昨日もらった笛を取り出して吹く。

僕としては音が鳴らないと思ったんだけど、ヴラディル先生もラトラスもネヴロフも、揃って被毛のある耳を動かした。

ちなみにイルメとウー・ヤー、エフィは、すでに九尾の貴人の猛攻撃にさらされた後らしくぐったりしてる。

何があったんだろう?

「あ、ヨトシペ来るまで大人しくしていてくださると助かります」

僕の言葉に、じりじり寄って来てた九尾の貴人が止まる。

「ぐ、今吹いたそれは犬笛か」

「ヨッティ山に行ってないかしら?」

うん、残念ながら学園にいたようだ。

何処からきたのか、廊下の窓から入って来たヨトシペが見える。

疲れた様子のヴラディル先生と、苦笑いの貴人を見ても、ヨトシペは尻尾を振っていた。