軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

482話:犯罪者組織の畳み方2

僕は数日ぶりに学園へと登校した。

扉を開けた途端、教室中の視線が集中する。

「アズ、すごい疲れた顔してるけど、どうしたの?」

猫の尻尾を立ててラトラスに驚かれても、疲れた笑いしか浮かばない。

「半月も休んで、そんなにお家のことが大変なの?」

心配そうに尖った耳を心持ち下げるイルメが言うのは、表向きの理由。

もちろん僕が疲れてるのは、ハリオラータ対策のせいなんだけど。

実はクトルたちを誘き寄せた庭やバルコニーの敷石、全部未起動のゴーレムに敷き直してあった。

もちろん作った人しか動かせないから、全部僕が核になる素体作って用意したんだ。

「ハリオラータの襲撃のあおりを受けた貴族は他にもいるらしいが」

貴族子弟のエフィが言うのは、僕もルキウサリア国王から聞いた、捕まえたことによる余波。

まぁ、言ってしまえば犯罪者と通じてた後ろ暗い人たちのことだよね。

さらにはそんな人たちの血縁や友人まで、実は、なんて疑いが向いている状況になる。

学園という他国の人間が集まる集団だからこそ、見える形でルキウサリアも派手に検挙してアピールしなきゃいけない。

その上で、ハリオラータの幹部たちからの情報提供で確実に黒を捕まえてもいる。

「寮の奴らもその話ばっかりだよな。幹部捕まえたのがどうこうって」

「あぁ、ハリオラータというのは相当重要な犯罪者のようだな」

同じ寮の獣人のネヴロフと海人のウー・ヤーも、学生間での噂を上げた。

すでにハリオラータ幹部の複数生け捕りは知られている。

そのためルキウサリアには、引き渡しや尋問に参加させてほしいという使者がひっきりなしに来ているそうだ。

その裏で、暴走状態のクトルが突貫してくる可能性があったから、王城の一部は僕のように疲れ切ってる。

その一番上で今も休みなく働いてるルキウサリア国王には、合掌したい気分だ。

「僕の所はハリオラータが使ってた商業路と被っていたみたいで、できる限り無実を訴えるために、過去の記録まとめたりしててね」

表向きの言い訳を伝えつつ、僕は自分の席につく。

実際そういう理由で調べを受けてる家もあるから、不自然ではない。

ただし黒はわかってるから、調べる本命は、その家と繋がりのある別の家だったりする。

ルキウサリアも逃げられないように色々とやってる最中なんだ。

「おーい、ちょっとお前ら集合。連絡事項がある」

教室にヴラディル先生が顔を出すと、疲れた様子の僕を見て眉を上げる。

「アズはようやく出て来れたのか。ってことは、無実が証明されたか?」

「え、もしかして僕以外に出て来れてない生徒がいるんですか?」

「魔法学科のほうがヤバいぞ」

思わず聞いたら、ヴラディル先生が真顔で応じた。

そしてクラスメイトたちも頷いてる。

確かにハリオラータは魔法使い御用達の犯罪者だけど、動く金額と破壊的な効果から顧客として学生は想像しにくい。

そう考えると、教師側でも後ろ暗い人がいたんだろう。

その辺りは他国絡んだ政治になるし、ルキウサリアに押しつけたから、僕もあやふやだ。

もちろん魔導伝声装置を使って、帝国側で引き受けたい相手のすり合わせはしてもらったけどね。

そしてその時に父にめちゃくちゃ怒られたのが、疲れる一因でもある。

(たぶんシャーイー狙ってることも、陛下にはばれたよね?)

(不明です)

あくまで伝声装置越しだったから、さすがにセフィラもわからないらしい。

けど派兵でサイポール組、ロムルーシ留学でファーキン組、そして今回のハリオラータ。

そうなると、残るはシャーイーだけだし、簡単に想像できるだろう。

僕自身が動くことを念頭に置いてることは、父も察してる。

だからこそ、父とは全く関わりないクトルたちを動かす方向で考えた。

人質と称してルキウサリアに四人おいてるから、実際に動くのはクトルとバッソ。

ただ能力に差があるから、本当にシャーイー狙うなら人員出したり、人の入れ替えしたいとは言われてる。

その辺りの扱いも、ルキウサリアとこれから話し合わないといけない。

「どうした、アズ?」

「なんか大変だったんだって?」

僕の顔を見たキリル先輩とトリエラ先輩が声をかけてくれた。

教室から移動して、ネクロン先生の研究室に錬金術科が集まってる。

助手のウィレンさんが机やいすを端に避けて、全員が入れるようにしていた。

「身に覚えがないとは言え、罪を疑われることと立証のための書類作成に疲れました」

僕の言い訳に、詳しくは知らなかったらしい人たちは驚いた顔だ。

まぁ、僕が抜けるのはもう錬金術科なら慣れてる。

今回が特殊だったってことで誰もそれ以上は聞かない。

何せ、後輩の一人は確黒で今もいないんだ。

それは新入生のイデス。

本人は無関係だし魔法に関係もしてないけど、実家のほうが黒だった。

チラ見した中に名前見つけた時には、もしかしてと思って確認したらやっぱりイデスの実家だったんだよね。

(娘を侯爵の妾に差し出して、ハリオラータのヤバい物品の輸送に関わって。イデスの母親の実家は欲深いんだろうな)

(家から逃げる形での錬金術科入学でした)

セフィラ、そういうのは良くない、良くないけど、どうやらイデスの事情はすでに把握済みらしい。

(どうして実家から逃げるの?)

(侯爵家の庶子として教育係を派遣され、貴族令嬢として恥ずかしくないよう育てられました。その上で祖父の行状を客観的に理解しています。母親のように売られる前に、学園で相手を探し、卒業と同時に実家には帰らないよう努めています)

なんか、聞いて後悔するくらい申し訳ないセンシティブさだなぁ。

錬金術科で在学を続けられるくらいには勉強してるし、社交も熱心だった。

そこには一生を左右する問題から逃れるための必死さがあったらしい。

「はい、こんにちは。説明は私からするよ」

錬金術科が集まる中にやって来たのは、卒業生でエルフのイア先輩。

ステファノ先輩と国に帰るはずが、その上司になる予定のステファノ先輩が研究目的でルキウサリア滞在を望んだせいで、さらにルキウサリアに腰を落ち着けそうな人。

今は錬金術関係の書籍の整理をしてる。

そんなイア先輩が来た理由を僕は知ってた。

他人ごとじゃないっていうか、ハリオラータ捕まえたらやろうと思ってたことだ。

「知らない人のためにまず説明すると、青いアイアンゴーレムを絵の具にしようとスティフが言いだしたのが発端。それをアズとラトラス、ネヴロフと私が捕獲。まぁ、とんでもなく高価だから、王城にもっていかれちゃってたの」

後輩たちは知らないけど、クラスメイトには話したから、驚きに差がある。

就活生は、どうやら知ってる様子だから、ステファノ先輩じゃなくキリル先輩が説明したんだろう。

「しかもこれがハリオラータに狙われてるかもって厳重保管されててね。お城が買い取るかどうかとか言う話で今まで保留にされてたの」

「えー、せっかく捕まえたのに! 買い取るってことは、俺ら触れないじゃん」

「いやぁ、値段考えると逆に持ってるほうが危ないって。犯罪者も狙ってたみたいだし」

不満の声を上げるネヴロフに、値段調べただろうラトラスが猫の顔で苦笑いだ。

「ま、今回ハリオラータ捕まったことで大丈夫だろうって返還の動きになったの。けどそれも買い取るとか、接収しろとか色々お偉いさんの間であったらしいんだ」

説明が雑なのはイア先輩も当事者じゃないからだろう。

「で、そこで帝国の第一皇子殿下が、さっさとゴーレムの再現をして見せて、錬金術科じゃないと無理って言ってくれたらしいのよ。だから、研究の優先度が錬金術科になったわけ」

ようは、売り買いできない巨額の財産が青いアイアンゴーレムだ。

その上で、錬金術科も保管が難しい巨体。

だったら、研究目的で一度国に寄贈して保管を受け負ってもらう形で落ち着いた。

その上でルキウサリアからは褒賞という形でお金を渡す、実質売買。

裏では、錬金術科の次に研究したい人たちが、青いアイアンゴーレムの保管のための費用を寄付するって形でお金を出して、ちょっとしたオークション形式だとか漏れ聞いた。

錬金術科への褒賞もそこから出るそうだ。

「一応、最初の所有権者である、私たち四人の半数が合意でことは進んでるわ。事後報告になって申し訳ないけど、ひとかけは研究名目で所持認められるから、我慢して」

イア先輩がラトラスとネヴロフに言う。

うん、所有権ある四人の内、合意したのは僕とイア先輩。

ラトラスもネヴロフも、ゴーレム丸々一体なんてどうしようもないから応じてくれる。

「研究って言うか、調べていいなら俺はいいぜ」

「ひとかけでも全然! 帝都に持っていけばどれくらいになるか」

ネヴロフは純粋だけど、ラトラスがちょっと欲に走ってるなぁ。

ただ、他の学生はほぼフリーズ状態だった。

「第一皇子が、関わってるのか?」

「つまり、魔法じゃなく錬金術だと?」

「今、ゴーレムを再現と言わなかった?」

エフィ、ウー・ヤー、イルメがなんとか声を絞り出して、あらかたの心境を代弁する。

事前に知ってた先生たちは苦笑いだ。

全く知らなかったのに、いきなりゴーレム解明を受け負わされたんだからそうだろう。

ちょっと申し訳ないけど、他からの口出し止めるためにしょうがなかったんだ。

あそこで口出して置かないと、錬金術科の学生が触れる機会なくなりそうで。

でもこれで青いアイアンゴーレムを調べられることになったんだし、いいよね?