軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

481話:犯罪者組織の畳み方1

クトルには執着の矯正のため、手っ取り早く自分の中で解決してもらった。

まず自分の状態を客観視してもらって、そこから何が問題か、自分で納得してもらう。

そのために二人いるとか、本来の家族はもう一人の自分だとか、けっこう屁理屈言った。

その上で、多すぎる魔力の消費だ。

そもそも暴走するだけの魔力がない状態だったらひとまず安心だし。

実際魔法撃たせたら、カティみたいなことになるから、あくまでイマジナリーだけど。

想像でも魔力対消滅させるとか器用だよね。

まぁ、ただの抑圧だからそのうちぶり返すけど。

あと本当に殺すとか言う、とんでもない言葉で実行したのはやっぱりヤバい奴だなぁ。

前世の受験と家庭環境でストレスひどくてどうにかしたかった思春期に、ネットで調べた内容とはずいぶん違うんだけど。

過激なやり方をそそのかしたことは、効果もあったし一回棚上げしてしまおう。

「何処までが計算だ?」

バッソが警戒ぎみに聞いてくるけど、そこには答えを求める意思が宿ってる。

「その声に魔力を乗せるって、マギナの操る匂いの声バージョンだよね? つまり耳を傾けて、意味を考えるっていう反射的なコミュニケーションを利用して思考に入り込む」

「なんだこいつ?」

僕のほうが聞きたいです、自爆魔さん。

「どうやって対処してるか教えてもらえるか?」

クトルは普通に聞いてくるんだけど、なんかバッソが小柄な分お兄さん感が増した?

「あなたたちも対処はしてるでしょ。自分の内側に魔力を循環させて他人の魔力の影響を防ぐ。あと、そもそも知ってたら、無意識に操られようもないくらいの力だ」

言ったら、バッソが引き裂かれた口元を歪めるように笑った。

「くっくっく、それを操られて大慌てしたすまし顔の修道士どもに聞かせてやりたいものだ」

「まぁ、向き不向きはあると思うよ」

その修道士とやらの話はきっと虐待とかに繋がるだろうから、本題に戻る。

僕が求めるのはハリオラータの解体だ。

その上で譲れないことがある。

「アルタとイムがある程度重要そうな魔法と情報に関しては押さえてるけど、たいていが散らばって隠されてるそうだ」

「そうなのか?」

頭目であるクトルがバルコニーのアルタとイムに聞くと、二人は揃って僕を見る。

これは発言の許しを求めてるのかな。

(思ったけど、あの二人ってけっこう育ちがいいよね)

(富裕層と知識層の生まれです)

セフィラに聞きながら手を振って許可を出した。

「取引のために、ある程度ルキウサリアの近くにあるな。それでも距離はある」

「物品も含めると量は多い。だが、何処に何があるかは、調べ済み」

「目録はある?」

僕が聞くとイムが自分の頭を、枷のされた手で指差す。

「だったら、情報に関して、顧客情報と何を売ったかは目録か発注書の実物が欲しい。後はいらない」

「うん?」

僕の言葉にクトルが聞き返した。

「全部破棄して。使うんじゃなくて、破棄ね。あ、でも希少な素材とか使ってリサイクルできるなら解体してもらったほうがいいのかな? それに、歴史的な物も破棄するのは駄目か」

でもそれだと判別に時間かかるし、なんて考えてるとカティが声を上げる。

「えー!? 面倒なやつとか嫌な奴殺す手段いくらでもあるのに!」

つまり、ハリオラータとしてはそう言う依頼ばっかりだったわけ?

僕は自分の口角が下がるのがわかった。

「いらないよそんなもの。残すだけ害じゃないか」

「まぁ、自分に使われると思っているのね。大丈夫よ、賢くて可愛いもの」

マギナが笑顔で妙なことを言う。

何も大丈夫じゃないし、可愛いはさすがに十五の今返上したい。

なんで身長が小さいアジア人から、なんとなく西洋風な顔立ちに生まれ変わって、前世よりも身長低いんだろ?

栄養状態の違いなのかなぁ。

「そうだね、誰かが使うくらいなら最初からいらないよ。僕には必要ないものだ」

言ったら、クトルが口笛を吹いた。

行儀悪いと思ったのか謝る。

「はは、悪い。だが、どんなに高尚なふりしてる奴らでも、俺らが持ってる魔法見せると目の色変えて、自分だけの力にしたがるからな」

「自分で扱えない力を手に入れても自滅するだけだよ。後始末だって満足にできないんじゃない? だったら、処理できる人に処理してもらったほうが安全だ」

なんか前世のごみ捨てを思い出した。

前世で捨てちゃいけないもの捨てたせいで、焼却炉が数日停止とかニュースにもなって注意喚起してたな。

それで言えば、どんな危険な魔法も魔法の道具も、作った本人たちに壊して破棄してもらうのが被害はないだろう。

けど、本人たちだからこそ、何か思い入れもあったら壊したくないって言うかもしれない。

「それで、やるの?」

「そういう取引だからな。従うなら、俺の家族は無事なんだろう?」

「僕に他人を痛めつける趣味はないし、家族を無理やり引き離すなんてしたくもない」

思わず言ったらクトルが真顔になった。

(え、何?)

(理解できない生き物を見ているようです)

(失礼過ぎない?)

(経験上、自らに降りかかる不幸は可能な限り、それ以上に返さねば気が済まない者が多いため。また、主人の境遇も把握。そして主人のように他人に嫌な思いをさせないという前提で行動する者は少数です)

セフィラが言うならそうなんだろうけど、なんか世知辛い事実だ。

理想と現実の違いくらいはわかってるけど、嫌がらせは率先する人が多数なんて思いたくないよ。

「皇子の癖におかしなことを言うもんだ」

「いや、皇子じゃなくてもおかしなことは言ってないでしょ。何? 僕が皇子であることに興味があるの?」

常識的なことしか言ってないはずだから、皇子が引っかかった、わけでもないか。

「…………別に」

「だよね。君たちは帝室も帝国も何も気にしない。興味がないんだ。…………そこは僕も理解できる」

言ったら、なんか絶句された。

「言っておくけれど、僕は自分勝手だ。知らない人のことはどうでもいいし、身近な人には全力で贔屓をする。そんな個人の感情で動くには、国とか政治とかは邪魔なんだよ」

だから、取引受けつつ、こっちも丸のみはしない。

僕がやりたいことの一番厄介な部分を押しつけることをさせてもらう。

これは帝室や帝国なんて関係ない、僕の我儘だ。

「だから君たちには、ハリオラータを解体した後にも仕事をしてもらう」

これはアルタたちにも言ってない。

だからバルコニーのほうでも耳をそばだてたのがわかった。

「シャーイーを潰すためにセアッシュの鉱山潰してきて?」

「「「ちょっと待った!」」」

さすがに側近から待ったがかかる。

ヨトシペも、さすがに耳と尻尾立てて驚いてた。

「ルキウサリアが口ださない今しか言えないから」

聞かれることを予想して先回りすると、そうじゃないって感じに見られる。

「あー、つまり? 本気で犯罪者ギルド作った四家、全部潰すつもりなんだ?」

さすがにクトルも引きぎみだ。

僕が言ったシャーイーが四家の最後の一つで、傭兵稼業で争いを広める迷惑者。

そしてセアッシュは、シャーイーに武器を供与してる国家だ。

ちなみに、シャーイーの本拠地の国はまた別にある。

「半端にしたせいで、サイポール組に襲われたし、ファーキン組が皇太后と結んじゃったしね。だったら、危ない動きをする前に潰すのも、前科があるからいいかなって」

「ほーん、つまりあの話を知ってて言ってるわけじゃないのか?」

クトルが含みを持って揺さぶりかけるけど、そんなことしても無駄だよ。

「…………東の反乱にシャーイーが噛む。確定なの?」

セフィラが読んだ考えを口にすると、ただの世間話ような軽さでクトルが笑い返す。

若くてもハリオラータの頭目だから、他人の犯罪なんて微塵も気にかけないんだろうな。

ただそんなところから出た情報が、がせとは思えない。

「馬車に踏ませようとしたあれ、馬車がどれくらい壊れて中がどれくらい被害が出るか、確認できてたらシャーイーに回す予定だった」

「つ、ぶしておいて良かったぁ…………」

あの魔法の地雷は、先に気づいて撤去したから馬車には被害なしだった。

つまり魔法の地雷が、四年前にも小規模反乱を起こした東の地で実践投入される可能性があったわけだ。

そしてその魔法地雷はすでにネタが割れてる。

ここに製造側の頭目もいるし、畳む算段も今してるんだ。

だったら東の反乱は傭兵稼業のせいで被害拡大はしない、と思いたい。

なんにしても、シャーイーの足を止めるための動きをハリオラータを畳む中でしてもらうのは確定になったのだった。