軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

429話:錬金術と医術4

自転車のチェーンがパーンした後、僕は午後から学園へ向かった。

テスタは僕に聞いて理解したことを整えて、解答としてエフィに送るそうだ。

話してた時点でバリバリ何か書いてたし、ノイアン他の弟子たちにも僕の話した内容を共有して必要な資料集めろとかいろいろ言ってたけど、どうなることやら。

黒髪の皇子から、銀髪の学生姿に変えて、教室へ到着。

そこにはまた昨日と同じメンバーが顔を揃えていた。

「ウー・ヤー、今日は他のクラスメイトは?」

「あぁ、アズ。ラトラスは課題に必要な本を探しに図書室。ネヴロフは午後も鍛冶場。イルメは実験室で精霊実験。エフィはイルメと入れ替わりで実験室から戻って来る予定だ」

「で、同じ顔が集まってるのは、昨日と同じ理由?」

教室には就活生のキリル先輩、後輩のトリキス、ポー、アシュル、クーラがいる。

昨日アレルギーのことを相談されたけど、結局結論は出なかった。

だからテスタの反応待ちだったはずなんだけど。

さすがに今のさっきでテスタの返事が届いてるはずもないし。

「午前中にイルメにも話を聞いたんだ。そしたらリンゴを食べると口が腫れる者がいると言う。その一族は全員リンゴを食べられない一族として有名だとか」

キリル先輩がエルフのほうにあったアレルギーを教えてくれた。

(バラ科のアレルギーか。エルフにもアレルギーあるんだ)

(バラ科とは?)

(リンゴもそうだけど、桃とかイチゴとか。可食の果物に多いそうだよ。前世でも、身近な食物アレルギーってことで見た覚えがある)

牛乳、小麦粉なんかの成分表示に並んでた。

春先にアレルギーへの注意喚起で番組をやってのも覚えてる。

つまり、僕が言いたいアレルギーの顕著な例だ。

僕が驚いてると、さらにトリキスが続ける。

「しかもその一族もリンゴの精霊の呪いと言われる症状だそうです」

「あぁ、なるほど。理由はよくわからないけど、危険があるから後世に伝えるために呪いに仮託した感じか」

「あれ、本当に呪いがあるんじゃなくて?」

納得する僕に、ポーが首を捻る。

アシュルとクーラも、呪いだと思っていたと言った。

「実は病ではなく、呪いなのではないかと話していたのである」

「そうなると、次には誰が呪ったかという話だったのですが」

「それもまた第一皇子だって?」

いっそ笑うと、教室の扉が開いた。

イルメと入れ替わりで教室に来ると言っていたエフィだ。

「なんだ、第一皇子殿下がどうした? あ、アズ。ちょうどお客が」

「エフィ、久しぶり。で、お客?」

聞くと、エフィの後ろから一日ぶりでしかないソティリオスが顔を出した。

「あー、病気って聞いてたけど?」

「こちらも帝都で家族が危篤だと聞いてたが」

ちょっとお互い白々しいかな。

これは話を変えようと思ったら、ウー・ヤーがソティリオスに声をかける。

「長患いだと噂に聞こえたが、案外平気そうだな」

「少しこじらせた。完治した後も、元のとおりになるまで療養が必要だと言われて引き留められた結果だ」

どうやら命に関わることはないって説明するために、大半療養だったということにするらしい。

そこを掘られてもソティリオスも困るから、聞こえた単語を話題にする。

「それで、第一皇子が次は何をした?」

言い方に棘があるー、冤罪がすぎるよ。

聞かれて、去年から出入りしてるソティリオスに比較的慣れてるキリル先輩がことの経緯を話す。

帝国貴族のトリキスは恐縮して黙ってるようだ。

ポーたちはいっそ帝国の大貴族であるソティリオスと距離がありすぎて、あまり気にしてないように見える。

「あぁ、まぁ…………立場もあるのだろうが、それをあまり言い立てると、今度は第四皇子からも嫌悪される。わからないならわからないで、変に理由付けをするな」

ソティリオスはどうやら、僕が毒を盛ったとは思ってないらしい。

「何か、第一皇子を疑わない理由が?」

ただその姿勢が、逆にトリキスに疑念を抱かせた。

まぁ、政敵がここで退くの変だしね。

責めきれない要因知ってるなら知りたいよね。

そんなこと思って見てたら、一瞬だけ睨まれる。

他人事の顔してるのばれてたらしい。

「そもそも第一皇子がやったなら、第四皇子はもう死んでいる。し損ねるほど、錬金術は毒に種類がないのか?」

「ひど」

思わずつぶやくと、ソティリオスはいっそ笑った。

けど真面目な顔で続ける。

「少なくとも、事件当時第一皇子と第四皇子は初対面だ。どんな記録を調べても、常にいる左翼棟の見張りの証言をとっても、第一皇子の行動範囲と第四皇子の行動範囲が重なったのはその日だけだった」

「それ、つまりは調べたんだ? 第一皇子に瑕疵がないかどうか?」

呆れて聞くと、当たり前と言わんばかりに肩を竦められた。

なんか開き直って余計にいけ好かない貴族風になってるな。

いや、事件捜査と考えると妥当なんだけどさ。

さらっと僕が常に見張られて行動範囲も制限されてること言ってるよ。

「前から倒れてたから、第一皇子が直接毒を持ったのはないんだ。じゃあ、誰かに頼んだのは? あ、ですか?」

まだまだ礼儀作法がなってないポーに、キリル先輩が指導なのか指を差す。

それで雑な言い直しになったけど、変わってアシュルがソティリオスにお願いをした。

「悩む同輩の力になりたく。どうか、お教え願いたい」

「はぁ、錬金術科はどうしてこう極端な。いや、いいか。宮殿は区画ごとに立ち入りに制限がある。許可のない者が歩くだけで罰を受ける場所だ」

だから基本的に左翼棟の使用人なんかに頼んで、って言うのは無理。

そもそも顔の知らない相手を、皇子の食べ物には近づけない。

「使用人が無理となれば側近。だが、それぞれとても目立つ外見をしている。密かに毒を盛るという前提が、はまず無理だ」

「では、夜人目を避ければどうでしょう?」

クーラがもう、堂々と第一皇子とその周辺の犯行を疑ってる。

「記録されている限り第一皇子の本館への立ち入りも、事件前には一度だけ。それも随分と騒ぎになったと聞いている。まず本館の何処に何があるかを知らない。万が一上手く行っても、一度切り。その後続くわけもない想定だな」

ソティリオスはこれ、僕を擁護してるでいいのかな。

というかそれだけ出てくるって、隙あらばって考えてたユーラシオン公爵の狙いが透けて見えるな。

けどできないことを保証するのも、またユーラシオン公爵とルカイオス公爵が配置した人員だ。

僕を責めることはできないから、僕への疑惑を放置して、ことの真相を記録しなきゃいけない医療関係者たちが突き上げだけ食らって困ってるとかそういうことだったりする?

「まぁ、新しい症例も出たわけだし。こうして帝都を離れて調べれば手がかりも他にあるかもしれないよ」

僕は早計に結果を決めることがないよう、トリキスに言った。

「しかし、第一皇子はそれほど行動範囲が狭い中で知っていたように蟹の呪いなどという話を出して来ています。その話を持ち出すのも、おかしいという思いが強くありのです」

うーん、これは図星を指されたって言えるな。

確かに知ってたし、だからこそ説明も難しくて蟹の呪いなんて話を持ち出したんだ。

これは突拍子もない話で、何か隠してると疑われてるってところか。

けど前世に関する知識を隠すなんて想像もできないから、実は犯人なんじゃないかって疑いが晴れないとか?

「なんだ、錬金術科に入ったなら、あいつの異常性をわかっていたんじゃないのか」

「ソー、そろそろ言葉選ばないと、エフィがすっごい嫌そうな顔してるよ」

僕が言うと、それまで黙って聞かないふりしてたエフィがブンブン首を横に振る。

それにソティリオスはうんうん頷いた。

「鈍いふりして狡猾。関わらなければそのほうが安寧ではあるからな」

「そんなことは言っていません」

ちょっと一緒に行動しただけで、ソティリオスの僕に関する認知歪んでない?

僕は今までととくに行動変えてないのに、いや、だからこそまだ怒ってるのかな?

そう言えばハドリアーヌ一行の時、散々皇子らしくしろって言ってたし、左翼棟で会った時には皇子らしくしない宣言にも怒ってたし。

なんてまた他人ごと考えてたら、気づかれてソティリオスにこっそり睨まれる。

「そんな人物ならば、危険視されるのも納得である」

けど真剣に受け取って考える竜人のアシュルのせいで、ソティリオスは自分で言っておいて複雑そうな顔で目が泳ぐことになった。