軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

422話:心当たり2

王城に一泊した僕は、ルキウサリア風の木目温かな貴賓室で目覚める。

到着した日は、報告した後は疲れてるだろうってことですぐに休ませてもらえた。

馬車に乗ってただけの僕と違って、他の同行者たちは相当疲れてるだろう。

けど報告や帰還の挨拶なんかは全て僕たちの後で待機状態。

その人たちに順番を回すためにも、僕とソティリオスは昨日さっさと下がらせてもらった。

そして今日から、ソティリオスはまた密かに移動するっていう小細工が必要になる。

療養先に行かなきゃいけないんだけど、僕は普通に屋敷に戻る予定だったんだ。

なのに、午前から面会の予定が入った。

しかも皇子としての僕じゃなく、アズロスのほうに。

「いやぁ、災難だったねー」

「あいつら迷惑だもんねー」

王城の一室にいるのは、僕とソティリオス、ウェアレル。

そして面会希望でやって来た白黒のユキヒョウ獣人、エーレンコ両教諭こと、黒いイール先生と白いニール先生だ。

「あなた方、授業どうしたんですか? 今日は普通授業でしょうに」

ウェアレルが呆れると、ユキヒョウ二人は気にせず長い尻尾を振りふり。

「そりゃ、王城からの要請だ。可能な限り早く対処しなくちゃね」

「それにユーラシオンは移動しなきゃいけないし、今しかないでしょ」

「お手数、おかけします」

ソティリオスは一応下手に出る。

一応ってつくのは、引きぎみだから。

僕も前みたいに悠長に尻尾を見てられない。

だってユキヒョウの顔して、揃って不機嫌そうに牙見せてるんだよ。

「やめなさい。そんな興奮状態で登城するんじゃありません」

ウェアレルが慣れた様子で叱る。

元同級生でけっこう親しそうな雰囲気だし、これはウェアレル挟んだほうが良さそうだ。

「色、ウィー先生」

「はい、アズくん」

色違い先生って呼びそうになって、ウェアレルも警戒するように耳立てる。

けど言い直したら返事してくれた。

僕とウェアレルの関係知ってるソティリオスは、なんか変な顔してるけど、気にせず進めよう。

色違い先生っていうのは、その内錬金術科に顔出したら聞くかもしれないし、今説明する話でもないからね。

「ルキウサリアの国王陛下が、ハリオラータに与しないとおっしゃった理由を聞いても?」

「私もそれは初耳だった。何か以前に因縁があったのかもしれない」

ソティリオスが乗ってきたら、途端にユキヒョウの先生二人がいきり立つ。

「そうなんだよ、あの盗人ども!」

「本当ふざけたことして許すまじ!」

「王城で騒ぐな、馬鹿」

ウェアレルが強く叱りつけて、椅子から立つのを押し戻す。

なんか普段の丁寧さなくなると、本当ヴラディル先生に似た口調なんだな。

僕たちが見てるのに気づいて、ウェアレルは咳払いした。

「お耳汚しを、失礼」

その上で、ウェアレルから経緯の説明が続く。

「お察しのとおり、この二人はかつてハリオラータの被害に遭っていることから、敵対を明確にしています。すでに数度、学園から研究資料を盗もうとするハリオラータを阻止することもしているので、今さら仲間になることはありません」

どうやらすでに因縁があるからこそ、確白らしい。

「被害とは?」

ソティリオスがユキヒョウの先生たちを刺激しないように、小声でウェアレルに聞く。

「…………今回目撃された、二つの魔法術式を、触れ合わせることで発動する仕かけ。あれは、この二人が研究していたものを改造した兵器であると思われます」

「「はぁ!?」」

ユキヒョウの先生が二人揃って怒りの声を上げた。

「嘘だろ! あれで兵器作ってたの!? ふざけるなー! あれは寒い冬でも暖かいお湯作るために作ったのに!」

「一切合切盗んでいって、使いたかった俺たちが再現不可能で頭抱えてたのに、よりによって兵器なんて無駄なものにぃ!?」

ガオガオ吠えたてながら、ジタバタ悔しがる。

僕はその迫力ある地団駄から目を逸らして、ソティリオスに聞いてみた。

「えっと、普段からこんなにぎやかな先生?」

「いや、飄々とした落ち着きを崩さない方、だったんだが。こんなに感情を露わにしてるの初めて見た」

「基本的に、上から他人ごとで笑っているのが好きなのです。ですが、自分が巻き込まれると激しく反応します」

ウェアレルは昔馴染みなせいか、そんなことを言う。

それを聞いて僕に思い浮かぶのは、秋田犬の顔。

「えっと、ヨトシペに魔法の道具壊されたって聞いたけど」

「その時にもあのように七転八倒して悔しがったと聞いてますね」

ウェアレルの返答聞いたソティリオスが、荒ぶる教師二人にそっと目を向けた。

「なんというか、公私をわける方だったんだな」

一年学んで初めて知ったらしい。

なんて言ってたら、ユキヒョウの先生二人揃って額を突き合わせると、早口に話し出す。

「兵器ってことは時限装置かな? そうなると発動させてない内は魔力も発さない。仕掛けられたら起動してないそれを見つけるのは難しいぞ」

「くそ、一つの魔法陣に刻める内容が発動に関わる部分削除できるから、威力とか馬鹿なほうに振って兵器にしたんだな。発想だけは合理的か」

聞いてると、けっこうしっかりあの魔法の地雷を理解してるようだ。

ソティリオスも後悔するように呟いた。

「開発元がいるなら、回収したものはこちらに持ってきたほうが良かったかもしれないな」

「「回収!?」」

「うぉう…………!?」

詰められてソティリオスが変な声を漏らした。

それをウェアレルが手を差し込んで、ユキヒョウの先生二人を押し戻す。

「帝都からの情報提供があれば回しますから、落ち着きなさい。今あの兵器は関係ありません。あれは事前に、そして確実に、標的しか現れないとわかっていなければ意味がない罠でした」

「そう言えば、あの兵器の爆発による被害者はなし。最初はどうやって発見したのだ?」

ソティリオスは、馬車に乗ってて爆発したことしか知らない。

聞かれたウェアレルはしれっと誤魔化す。

「同行していた獣人が、人間が伏せていることに気づきました。通り過ぎても襲ってこないのであれば、行く先に確実な足止めがあるだろうと睨んで捜索を行った結果、発見に至っています」

「そうか、そう言えばずいぶんと勘が良かったな」

ソティリオスが思い浮かべるのはヘルコフで合ってる。

そして勘の良さを発揮したのロムルーシのもろもろっていうのもわかる。

その時もヘルコフは、色々危険に対処してたからね。

そして今回もロムルーシでも、その実気づいて警告してたのはセフィラだけど。

うん、結果としては合ってる。

…………ってことにしておこう。

「勘、勘ねぇ。それでハリオラータの仕かけ気づけるって、話に聞くとおり相当なんだね」

「手を借りれればいいけど、そっちは絶対皇子さまから離れないんだろうしなぁ」

ユキヒョウの先生二人は、ヘルコフの手を借りたいらしい。

これは完全にハリオラータと敵対するためだよね。

それは一つ安心材料になるんだけど、ソティリオス、ばれるから僕を横目に見るのやめて。

アズロスはヘルコフと関係ないっていう設定なんだから。

「いつまでも無駄口を続けるんです。本題に入りますよ」

ウェアレルが誤魔化した上で話を進めた。

「あなたたちはこちらのユーラシオン公爵家のご子息の守りを依頼されたのでしょう」

「そうそう、それでそっちの錬金術科のアズはどうするのー?」

「あ、そう言えばヨトシペと仲良しなんだっけ、そっちに頼む?」

思わぬ提案に、僕は愛想笑いを向ける。

「僕は会う人が限定的です。なので、ヨトシペも特には…………ソー、ヨトシペに守り頼む?」

「いらん!」

「たぶん勘ならぴか一なんだけど?」

「その分何かを破壊されるんだろう?」

僕が返答に困ると、ウェアレルとユキヒョウの先生二人が揃って頷く。

途端にソティリオスが断固拒否の構えだ。

まぁ、無理強いすることじゃないけど。

「やり口は調べていたでしょう。こちら二人に注意事項などあれば話してください」

ウェアレルの言葉に、ユキヒョウの先生二人はまた尻尾を揺らし始める。

それは何処か、獲物をどう狙うか身構える猫の仕草に似てた。