軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

408話:巻き込む3

ユーラシオン公爵を呼んで、ファーキン組の対処をお願いした。

その対価として人工ゴーレムの情報と、活用方法の提供を持ちかけてる。

ユーラシオン公爵は半信半疑だけど、聞く姿勢にはなった。

聞いたら無視できないって知ってるストラテーグ侯爵は、もう情報を得ることを重視して僕のアシストを始める。

「簡単にでも、錬金術でなければいけない理由などを説明されては?」

ユーラシオン公爵の懐疑を解くべきって?

メイルキアン公爵家の秘宝知らないから、僕の錬金術の腕自体信用してないと思ったかな。

ただ、ソティリオスから理解できると伝わってるはずなんだよね。

「じゃあ、水車がわかりやすいかな。今の魔法だと水で水車を回すなら、直接水流を当てて回す。これが錬金術だと、水路を作って水が流れるように土魔法なんかで整える。結果の違いは、短期間で大きな出力か、長期間持続的に運用できるか」

僕の例に、ソティリオスが挑むような顔して意見を挙げた。

「魔法にも長期運用を可能にする術式がある。土魔法を使うなら同じこともできる」

「そうだね、錬金術でもそうした魔石を組み込むものもある。注目してほしいのは、同じ結果、同じ水と言う素材を使っての行動が、全く別のアプローチになることだ」

魔法使いのように、水を当てて水車を回すというのが見てわかる解決法。

こういう魔法の考え方で、長く自然に回るようにする錬金術の結果を求めると、またアプローチが変わる。

どれだけ水の噴射を長持ちさせるかみたいなものだ。

けどそんなことしても魔法使い自身が水を噴射するんだから、どうやっても無理が出る。

そもそもの前提が違うという話でさ。

「その違いとやらを、お聞きしましょう」

ユーラシオン公爵が興味を示したので、僕は紙とインクで図示することにした。

「例えば人工ゴーレムが歩くための術式はこうなってる」

プログラミングでも、前方という位置情報を入力、右足を前に、体重移動、立つ、そして左足をと順を追う。

これは今の呪文にも見られる形式だけど、ずっと回りくどい。

時代を思えば、現代の魔法のほうが錬金術の後。

昔のプログラミングより細かく正確に、今の魔法すっきりとしてるのは当たり前だ。

そして古いプログラミングである人工ゴーレムの、歩くためだけの術式は省略も短縮もなく、同じ術式を何度も何度も織り込まれていた。

まるで歯車のように組み合わせて、全体が動くように組まれてる。

「ふぅ、古い物だからこんな感じなんだけど。ただ、こうして長々と術式を込められたせいで、今も動いてる個体があるんだと思うんだよね」

座学ででも魔法を学んでれば、なんの捻りもない人工ゴーレムの術式は読み取れる。

ただソティリオスが出された書籍を指して聞いた。

「こんなものがこれだけの数の書籍に書かれているのか? 何故今まで発見されなかったんだ」

「暗号ってこともあるけど、そもそも時期が黒犬病の時代でね。その時に錬金術師も多くが亡くなってるようなんだ。そして一斉にゴーレムが制御不能に陥って問題化した」

言ったら引かれた。

まぁ、危険だしね。

禁止された、つまり人工ゴーレムって禁術なわけだから、気づいてもそうそう言わない。

「だからこそ、こういう動き回って危険になる術は組み込まない」

「しかし、大質量が動くことこそ、人工ゴーレムの利点であろう」

ユーラシオン公爵も、そこら辺の想像はつくらしい。

「僕としては、この歩く術式に組み込まれた此処を見てほしい」

書いた術式の中の一か所を指す。

そこには関節部を指定して、小規模の破壊をさせる術式があった。

その上で破壊した部分と、獲得した素材を使って、再構築を行うようさらに術式が連動してる。

そのことに気づいたソティリオスは、それでも首を捻る。

「あくまで小規模な破壊と再生だ。全体で見るとなんの役に立つかわからないな」

「これさ、歩く時にすり減る関節部分なんだよ。だから、動かせば常に小規模の破壊が起きる。そして最終的には大きく歪んで動けなくもなる。だから、大きく歪む前に回復すべくこうして小規模だけど歩くごとに壊しては直してを繰り返すんだ」

これが、未だに人工ゴーレムが稼働する一因だ。

すごくどうでもいいように見えて、未だに関節が回復し続けてるんだ。

最初の想定よりもずっと大型化、重量の増加があっても歪む度に自己修復する。

大きく崩れる前に修復してるから倒れないし、長距離も移動して回れてた。

「これをさ、坑道の支えに使ったら、どうなると思う?」

「まさか…………坑道が自ら修復を?」

ユーラシオン公爵がすぐさま気づいて息を呑む。

鉱山持ってるからこそ、わかるんだろう。

そしてストラテーグ侯爵も、説明を聞いて考え方を改めた。

「なるほど、人工ゴーレムと言っても錬金術で部材を作るようなもの。それであれば確かに歩かせる必要もない」

「うん、歩き回るから危ないんであって、壁や柱にしてしまえば歩行も自衛も必要なくなる」

ユーラシオン公爵は口元を覆って沈黙。

今までにない真剣さで、術式を見据える。

そして気づいたように並べた書籍を見て、僕を見た。

「術式を発動させる触媒もまた、暗号に?」

「僕はすでにすべて解いてる。これは帝室図書館の蔵書だし、閲覧はできるよ」

つまり早く取り掛かりたいなら僕を頼れと。

聞いてソティリオスがなんだか疑いの目を向けてきた。

「一つ見せてもらおう」

「どうぞ」

応じたんだけど手を伸ばさないで、僕に不満の目を突きつけた。

「つまり、見たところでわからない。わかるようであればこれだけの期間死蔵されるはずもない。…………その人工ゴーレムを部材にしようという考えはどうやって思いついた?」

「まぁ、お察しのとおりソティリオスに鉱山で起きた事故を聞いた時だね」

「ずいぶん早い内から利用方法を考えていたのか」

「そんな言い方…………。あ、だったらもう一つやってもらいたいことがあるんだけど」

「何がたったらだ。そういうことじゃない」

怒られた。

けど他に巻き込むのも面倒だし、これもストラテーグ侯爵への報いってことで提案をしてるし。

やれるだろうからやってもらいたいんだ。

僕はともかく聞いてもらうことにして、勝手に喋る。

「宮殿に使われてる魔法効果のある強化ガラスの再現してみない?」

「ごふ!? 第一皇子殿下、それは」

ストラテーグ侯爵は、強化ガラスの出所を知ってるから止める。

「やっぱりね、専用の炉が必要なんだよ。ルキウサリアじゃ燃料の問題で運用できない可能性が高い。だったら、技術提供とかで人手を出して経験を積ませ、名前と実績残すほうが現実的だ。s…………あと、これは宮殿の改修っていう一つの功績になる。名を連ねることは、全く損でもないと思うんだけど?」

後半はユーラシオン公爵を見て。

つまりは宮殿でやるからには父が陣頭指揮を執る。

けど宮殿っていう帝室の権威の象徴の改修に、帝室の正しい血筋を誇るユーラシオン公爵が手を貸さないのは損得の両面があった。

「名誉を与えると?」

言うユーラシオン公爵は、裏にその分金と人手を出せと言ってる僕の思惑もわかってて聞く。

どうせユーラシオン公爵がやらなくても、ルキウサリアがすでに噛んでる。

父単独では難しいこともわかってるんだ。

けれどそこにルキウサリアが噛めば、学術的な保証を感じて人を集めることはできる。

後は資金の問題で、宮殿の改修なら父の権限で予算は見込めた。

現状、ユーラシオン公爵がどうしても関わらなきゃいけない理由はない。

けど関わってくれれば、現場に引き摺り出されるストラテーグ侯爵の負担を軽減できる。

「正直まともにやっても何年もかかる。短く済むなら僕の卒業までには形にしたい」

「つまりルキウサリアが技術を保持しているのでしょう。それを殿下が勝手に進めて良いと?」

「ルキウサリアでも同じように難解な形で残ってたんだ。それを解いたのが僕だ」

ユーラシオン公爵がストラテーグ侯爵に目で確認をする。

ストラテーグ侯爵は眉間に皺寄せながら頷いた。

まぁ、封印図書館のことだからね。

強化ガラスは最初から再現考えてたけど、どうしても専用の炉を作るっていう建造が必要で、僕だけだと無理だった。

さらには一つ作るのに五日も火を焚いてないといけない炉の運用は、木材資源が限られたルキウサリアでは難しい。

で、宮殿にもあるし父に再現を、とは思ってたんだ。

そこにユーラシオン公爵が噛んでも問題はない。

占拠事件での対処の遅れのせいで、ユーラシオン公爵は攻めの姿勢には回れないから。

「…………どこを見据えてこんなことを」

ソティリオスが、国同士の話に発展してる状況に顔を顰めながら言う。

「国や世界なんて大きなことを考えるつもりはないさ。ただ錬金術が正しく評価されてくれたほうが、僕もこの趣味を続けるのが楽だっていう話だよ」

放り投げて発展させてくれるなら、危険がない限り僕はかまわないんだ。

そんな僕の言葉に、ユーラシオン公爵親子は余計懐疑的な顔をしてしまった。