軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

360話:音楽祭の出し物5

ウィーリャを取り込み、計画変更だ。

そのための話し合いを先生にもしなきゃいけなかったけど、ヴラディル先生はアイアンゴーレムのことで王城に行くことも多く不在。

結果、ウェアレルが代行して許可をもらって、色々動き出した。

その一環である薬作りは、実験室でまずは作り方のレクチャーからだ。

「で、こうしてできたのが一時的にしおれた花を復活させる薬。質問ある人ー?」

「はーい、アズ先輩はお花屋さん?」

金髪のポーは平民出身で礼儀もなってないけど、前世があるとこういう無邪気さは悪い気もしない。

「別にそういうわけじゃないけど。帝都に残ってたエッセンスの技術が、植物の方面に相性がいいんだよ。昔には大庭園の造営とか、あったからじゃないかな」

「エッセンスは一時的だけど、組み合わせで色々な効果を期待できる。けど基本的には性質に影響する。だから元の性質がはっきりしてるほうが、結果もわかりやすいんだ」

ディンク酒作りでも使ってたりするから、ラトラスは説明の側に回ってくれる。

それにロクン先輩が羽毛に覆われた手を挙げた。

「これ、食べ物に使えば売る時の見栄え良くなるんじゃないか?」

「あ、食用に適さないから駄目です」

僕より早くラトラスが止める。

「むぅ、エッセンスというものは魔法薬とも違うのであるか?」

「製法がそもそも違いますし、これに魔力は必要ではないようです」

竜人二人が新たな薬品を前に、縦に割れた瞳孔でエッセンスを見てた。

聞けば、火属性の魔法の中には成長促進や活力を与えるものなんかがあるらしい。

つまり、魔法を再現する薬っていう印象なんだそうだ。

そうやって手順を教えてたら、実験室の外からネヴロフが呼ぶ。

「アズー、なんかスティフ先輩が変なもん作ろうって言い出したぜ?」

「変なものって言われても困るよ。ラトラス、ここ任せていい?」

ラトラスが片手を上げて応じてくれるから、僕はネヴロフに呼ばれて行く。

「絵もいいけどさぁ、像に花着せるっていいんじゃないかってー」

「その像を作るところからになると、時間が足りないんだろ?」

就活生の教室に行くと、ステファノ先輩にウルフ先輩が突っ込んでた。

辺りには描き散らしたスケッチが散ってて、それを拾うトリエラ先輩もいる。

「あ、アズくん。スティフくんがね、アズくんが言った花で人形の服を作るっていうのをやりたいんだって。実際どんなものか教えてくれる?」

そう言って、拾っていたスケッチの中から、踊るような姿の男性像を見せてくれた。

僕が言ったのは菊人形で、頭だけなんだけど、これはがっつり彫刻だ。

「ショウシ、君張り子ってわかる? 骨組みに紙を張って色を塗るんだ」

「あ、はい。張り子の人形ですね。確かにそれであれば彫像よりも時間は短縮できます」

ニノホトにも同じ文化あってよかった。

僕が知ってるのは前世で、しかもテレビか何かの流し聞きだ。

詳しい材料がわからないんだよ。

「やり方わかる? 僕もまた聞きで詳しくはないんだ」

「あ、すみません。私も見ただけで。作るのは平民などでして」

「平民、ニノホトの…………?」

一人該当者がいるけど、知ってるかはちょっとわからないなぁ。

「こっちでも調べてみるよ。最悪頭だけ彫像で、体は全部骨組みに花さす形なら行けそうだし」

また打ち合わせをして、その上で実験室に戻ってまた指導。

そうして放課後を使った後は、屋敷に帰ってからイクトに聞いた。

「イクト、張り子の作り方って知ってる?」

「張り子ですか、どのような形でしょう? …………人形であれば、皆目」

「そっか、骨組みに紙を張って滑らかにできればいんだけど」

「あぁ、それでしたら提灯の補修をしたことがあるのでわかります」

おっと、お人形なんてものじゃなく、もっと実用的なほうだった。

確かに提灯も骨組みに和紙を皺なく貼り付けて作る、張り子と同じようなものか。

「やり方をウェアレルに説明してくれる? そこから錬金術科に教えるから」

「承知しました」

着替えの間に決めて、僕はすぐに執務室へ移動。

すでに部下と一緒に書類を抱えて、財務官のウォルドが待っていた。

「お待たせ。塩の件については、結果からの進展が必要になる。たぶん今のままの実験を続けても大きな結晶は作れない。だから塩に魔力が含まれる理由の解明から、大きな結晶にするための別の工程を模索していく必要があるんだ。これは時間と学識が必要だから、僕の手には余る。発表するか、研究会を組織するかは王城と話すことになるだろう」

僕は一番の懸案として渡された、錬金術の実験結果の扱いについてさっさと話す。

うん、小さい頃に気づいた魔石の作り方をね。

発表したら目立つし騒がれるし、錬金術やってないと無理だから放置して触らなかった。

けど研究所まで作ったテスタに投げてみたんだ。

そしたらルキウサリア国王に、そのまま報告するのも憚られるって言うんで、こうして改めて、今のままじゃ使い物にならないよと僕が助言する形で上に上げる。

「次に転輪馬の使用状況の報告を、共有してほしいとのことです」

「と言われても、馬車の利用に関して僕から言えることもないと思うけど。一応想定しうる事故や故障については上げておこう」

そこは前世の自転車事故を例にね。

その後もウォルドから出される書類を確認したり、サインしたり。

中には重要度を誤魔化すため、後に回されたハドリアーヌ王女のナーシャからの手紙もあった。

「うん、向こうも大変そうだ」

ウォルドの部下がいるから、あえて気にしていない風に言う。

その上で、内容はトライアンがヒルデ王女の身柄を取りに来た、ハドリアーヌでの政争について。

ナーシャは完全にトライアンが、帝国側とことを構える気だと忠告して来てる。

(その狙いはいくつか思いつくね。ファーキン組、ニヴェール・ウィーギントの利用、国内での帝国貴族の惨殺。低迷した国内にわかりやすく敵を作ることでの支持率維持)

(第二王女であれば、第一王女を他国に出すことで利益しかありません)

(そこは僕との兼ね合いかな。ここで帝都を騒がすトライアンに利する行動は、僕の不興を買う。そんなことしたら、王太子のためにやろうとしてることが無意味になる)

他人の感情が挟まる問題になると、セフィラは相変わらず合理性を優先するね。

「そう言えば、帝都からの学者たちは身内へ手紙とかは出してる?」

「特に聞いておりませんが。そもそも、ルキウサリアの研究施設に入りびたりですので。他との連絡を絶っているような状態かと思われます」

一年、僕はテスタに教示されているという形で留学してる。

そこに帝都からの学者も同行してるんだけど、現状は他所から見たらどうなるのか。

僕を放り出して自分たちが研究に没頭してるとか?

「じゃあ、帝都への報告は?」

「第一皇子殿下へのものを清書して帝国へ上げています」

つまり自分たちで清書もしてない走り書きを、屋敷に送りつけてたあれ?

それを屋敷の人員、つまりルキウサリア側の人が精査して、ウォルドたちが清書して僕に見せてたあれ?

そうして確認された清書が報告として帝都へ送られてるの?

「うん、次に会う時には私信について聞いておくよ。あと、報告書のことも伝える」

ちょっとした話から、王城経由やテスタ経由で来る学会からの参加や視察要請もある。

それらをさばいて、一区切りというところでノックの音がした。

音の様子からして急ぎらしい。

「失礼します、殿下。王城からの急報ですので、人払いを」

レーヴァンだ。

ウォルドに目を向ければ、応じて部下に指示を出して部屋の外へ出した。

残るのは警護して今まで黙ってたイクト、ウォルド、レーヴァンだ。

「他も呼んで聞かせるようなこと?」

「いえ、皇帝陛下からのお知らせなので、まずは殿下が聞いてください」

性急な上に緊張してるのが声に出てる。

レーヴァンの様子をいぶかしみつつメモを受け取った。

それは予想どおり伝声装置で聞き取った内容を書いたメモ。

ただ内容は予想外だ。

「…………帝都から退いたルカイオス公爵が、ルキウサリアへ来る?」

読み上げる僕に、イクトとウォルドが息を飲む。

ルカイオス公爵が政界を引退して、何か狙いがあるのはわかってた。

けどそれは敵の動きを誘うためで、本当に帝都を離れる必要ってあるの?

「名目は親類の子弟が出る音楽祭見物だそうですけど…………殿下へのご挨拶もと要請が来てます」

レーヴァンが緊張するのは、今まで僕にそうした接触をしたことがないと知ってるからだ。

僕だって、いきなりそんなことを計画されても困るし、どうしても疑いは湧いて、メモを握る手に力が入る。

ルカイオス公爵の突然の接近の動きに、警戒心が騒いでいた。