軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

348話:錬金術科新入生3

五日で材料を集め、五日で作って改良までを済ませる。

その上で、僕は単体で的用の布の裁断や縫製を各学年に割り振って調整をした。

そこら辺の働きはヴラディル先生側からの加点って形で評価ももらってる。

そして懇親会当日、思ったより装備に違いができていた。

「へー、新入生は水槽にしたのか」

「水を汲む手間を考えるならそれもありよね」

目につく大きな木枠を見て、ネヴロフとイルメがそんなことを言い合う。

するとラトラスは僕の袖を引いて就活生のほうを指した。

「就活生のあの樽って、俺たちがやったやつだよね?」

「誰か見てたんだろうな。まぁ、真似されるくらいは想定内だろう」

「何より、アズの発想には勝てなかったのだから、問題ない」

想定内と頷くエフィの横で、ウー・ヤーが水槍の柄の先に取り付けた長い革製のホースを引っ張る。

ホースの先が行きつくのは、湖の中だ。

「うわ、ずる!? あははは!」

「やられた…………。確かに湖から直に取るのが早い」

気づいたステファノ先輩が大笑いすると、キリル先輩が呆れ半分に言う。

トリエラ先輩が揃って首を傾げると、ワンダ先輩が溜め息を吐いた。

「でも、あれはどうやって水を送るのかな?」

「魔法に決まっているでしょう。向こうは魔法使いばかりなのだし」

けど冷静なウルフ先輩とロクン先輩は、ちょっと疑わしげにこっちの作業を見てる。

「それでも向こうは水を扱えるのは三人だけだし、それほど利点か?」

「そこを潰せば他三人が残っても意味がないしね、まだもう一工夫ありそ」

こっちの弱みもわかってるけど、本命はそこじゃないし、たぶん読まれてもいない。

「それじゃ、総当たりです。三チームしかいないので一チームは連戦。その連戦の負荷は僕たちが負いましょう」

企画者として僕が言うと、オレスが不満げに声をあげた。

「そうしても負けない自信があるってことか。本当に優等生だな」

いつの間にそんな評価になったんだろう。

けっこう何かやらかす奴扱い受けてると思うんだけどな。

さらに新入生のウィーリャが、自信を誇示するように言った。

「ふん、水切れがないところで制限時間ありの的当て。大した優位でもありませんわ」

「上塗りに警戒して、確実にこちらも当てれば勝機はあるよね!」

十日で名前覚えたポーという金髪の少年が、楽しげに応じる。

テスタに問い合わせたら、やっぱり送り込んだ一人だった。

どうやら幼少に奇病にかかって親に売られ、テスタの下で回復して勉強し、今年入学したそうだ。

竜人の男の子のほうのアシュルが同じ経緯で、女の子の竜人のクーラはアシュルの実家から派遣された従者的な人物らしい。

審判は見物よろしく出て来たウィレンさん。

見物には他三人の教師もいるんだけどね。

人数の差があっても、それくらいのハンデはあげることに何処からも文句はない。

「その自信で負けたとしても受け入れてほしいものですね」

あまりやる気はないけど、舐められてるのは面白くないらしい帝国貴族のトリキス。

富裕層出身の男女は警戒ぎみってことは、自信の根拠になる種があることを疑ってそうだ。

「さて、この勝負。当てたら勝ちだ。やろう」

僕の声にクラスメイトが持ち場につく。

僕たちが用意した水槍は二つで、向こうは五つ。

こっちの砲手はイルメとエフィ。

向こうは好戦的になってるウィーリャとトリキス、竜人二人とショウシもいる。

これは射撃の腕ってところかな。

「それじゃ、準備はいいわね? …………始め!」

ウィレンさんの合図で同時に動く。

新入生は水を噴射するためのポンプを漕ぎ始めた。

けど砲手よりも大きく動いたのはネヴロフだ。

「おぉりゃっと!」

掛け声と共に、ネヴロフは巨大な板を持ち上げる。

それは砲手の後方に広げた的の布を、覆い隠すには十分な大きさだった。

「なんですのそれは!?」

「確かに、的を守ることに関しては、何も決めていません」

声を高くするウィーリャに、ショウシは呆気にとられながら違反じゃないという。

そしてどちらも喋りながら、果敢に水を撃ち始めた。

けど、ネヴロフの妨害板に遮られて的を捕らえられない。

その間にこっちのエフィとイルメは着実に新入生側の的の布に青い色をつける。

それを見た竜人二人が自陣の的に水槍を向けた。

「自陣の守りが色を上塗りするだけだと思い込まされていたのである」

「おおせのとおりです」

自分の持つ水槍で的を塗り替えて、失点を補おうというんだろう。

けど異変に気づいて、竜人二人は思わずと言った様子で動きを止める。

それに他の新入生も気づいて振り返った。

「色の上塗りが、できていない?」

「青の上から滑り落ちて行ってっぞ?」

富裕層の二人、レクサンデル大公国のイデスとヨウィーラン王国のタッド。

水槽から水を供給するポンプを漕ぐ手も止まってた。

「これは参ったなぁ。ともかくこっちも的を塗るしかないよ」

「これ以上塗らせないようにもしなくてはならないぞ」

終始楽しそうなポーに、さすがに劣勢を悟ったトリキスが応じる。

けど、ネヴロフを排除もできず、こっちの砲手の狙いを逸らす手もなく。

結果、僕らが圧勝。

それを見ていた就活生はようやく間違いに気づいた。

「これさぁ、アズにルール決めさせたのがそもそもの間違いだよー」

「絶対お前、攻撃側だけ決めるようこっちを誘導してただろう」

ステファノ先輩とキリル先輩に揃って言われる。

僕が否定しないと見て、ワンダ先輩とオレスが食って掛かった。

「せめてあの色を上塗りされない水の理由をお教えなさい!」

「そうだ、それがないとこっちは確定負けじゃないか!」

それを聞いてウルフ先輩とロクン先輩は肩を竦める。

「スティフの言うとおり、これは最初から負け確定だな」

「どうせなら、確実に勝てる手を晒して勝って見せてよ」

いっそこっちがどんな手を使うかという、情報を得るほうに興味を移したようだ。

それにウー・ヤーも頷く。

「自分もこれは一度限りの禁じ手だと思うからには、見せてもいいのではないか?」

「正直、それやられたら俺も文句言うと思うしな」

「けれど何も決まりには反しない抜け道を作っているのよね」

ラトラスとイルメも、何故かこの抜け道を考えた僕を責めるように見る。

しょうがないから就活生とは、最初から奥の手を晒すことになった。

そして水のことも教える。

「単純に的に色がすぐさま染みて取れないようにしました。そうなると、次の色が入る余地がないので流れ落ちたように見えるだけです」

「つまり色をつけられた時点で負けなので、先輩方は注意をしてください」

エフィの忠告に、新入生と違って、就活生は一応守りの手段を考えてはいた。

妨害要員が的の前で槍を振るんだ。

上手くいけば飛んで来た水を弾ける。

そしてその槍を使って敵砲手を陣内から妨害もできるという形。

槍の穂先も木製の籠にして、そこに錬金術で作った吸水材を詰めてはいる。

「それじゃ、ウー・ヤー。やっちゃって」

僕が言うと、ウー・ヤーは湖から水を操って大きな水球を作る。

樽一つを浮かべるような水量で、そこに砲手も妨害もせず給水要員してた僕が、色をつける薬を放り込む。

すると色付きの水の出来上がり。

それ見てウィレンさんが手を打った。

「あぁ、確かに的に色つければ勝ちで、水槍から放たれた水なんて要件ないわ」

「「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」

就活生からの驚きの声と同時に、樽いっぱいに等しい色水が魔法によって的をびっしゃりと濡らす。

一撃で的のほとんどを青に染めあげた。

つまりは、勝負は決したことになる。

「これはさすがに勝負にもならないんで、一度的を取り換えて仕切り直しましょう」

それでも結局、ネヴロフの守りを抜けられずに勝ててしまう。

そのうっぷんか、次の新入生対就活生の戦いは思いの外白熱したものになったのだった。