軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

342話:二年目新学期2

春の初めからレクサンデル大公国を目指して、ルキウサリアに戻った今は初夏。

結局僕が学園に復帰したのは、新学期が始まって二カ月も過ぎてからだった。

「久しぶり、みんな元気?」

「「「「「アズ!」」」」」

午後の授業から顔を出すと、五人のクラスメイトが揃って声をあげた。

もちろん全員の関心ごとは、第二皇子のその後。

僕は無事に宮殿に帰ったことや、帝都で大々的に犯罪者ギルドの残党狩りが始まったことを話す。

後はウェアレルとイクトが宮殿で聞いたという態で質問に答えた。

「まだ捕まえた相手から情報は出てないらしくて、僕も詳しくはわからないんだけど」

「ルカイオス公爵の側を責める動きか。ユーラシオン公爵も責め立てるだろうな」

出身はレクサンデル大公国でも、帝都在住だったエフィが呟く。

それに同じく帝都在住だったラトラスが尻尾を揺らした。

「店のほう、皇帝派だから影響ないといいけど」

「あら、そうなの?」

ラトラスが皇帝派とは知らなかったイルメが反応する。

冬は抱え込んでたのに、今はそんなことなかったかのように離れてるなぁ。

イルメは帝国の政治情勢に興味ないし、そう言えば話したこともない。

「モリヤム酒店はルカイオス公爵派閥とは関係しないけど、傾いたとみて他派閥から誘いはあるかもね」

「なんだ? 公爵が責められて皇帝が悪くなるのか? あれ、ルカイオス公爵ってのは皇帝と組んでるほう?」

ネヴロフは一年学んでもあやふやなようだ。

それだけ興味もないのはわかる。

そこら辺は事前知識で知ってるウー・ヤーが教えた。

「ルカイオス公爵は皇帝を擁立した。今の皇帝はその公爵がいないと地位が危ういくらいに弱い。これでルカイオス公爵が倒れれば巻き込まれて廃位もあり得るかもしれないな」

やっぱりそう思うのか。

色々やってるからそこまでじゃないけど、まだまだだなぁ。

というか最初に他人の手を借りて即位っていうのが父のネックなんだろう。

「それで、今回の件は終わりそう? 狙われてるかもしれないというのは落ち着かないわ」

イルメが言うには、ファーキン組から報復があるかもしれないということで、学園のほうでも警戒態勢が取られているという。

留学で、ソティリオスもファーキン組に誘拐されたせいもあるだろう。

「僕たちが顔を見た人は全員、道中で捕まえたから、多分もう大丈夫だよ」

そう、こっちは大丈夫なんだよ。

だから心配は帝都だ。

ただそっちも残党狩りで足場を確実に潰す予定だから、ファーキン組の襲撃は大丈夫になるはず。

残る問題となると、黒幕の見当がつかないこと。

そこは言った本人捕まえてあるから、口封じを警戒してればいずれわかるだろう。

帝都滞在中に焦って襲ってくることがなかったなら、すぐさまの動きはないはずだ。

「それで不思議なのが第一皇子よね」

イルメが突然言い出すから見ると、他も頷いていた。

「いっそ不自然なほどに動きがないな」

「弟が狙われて、心配じゃないのか?」

「聞き取りあると思ったけど何もないんだよ」

ウー・ヤー、ネヴロフ、ラトラスが言い合うと、それにエフィが首を横に振る。

「ぼうっとしてるように見えて冷静だ。色違い先生が同行してることがわかってるんだから、確かな情報を待っていたんだろう」

一度やられた経験からの評価かな。

実際のところは、そのウェアレルと一緒に帰って来てるんだけど。

あと、名目上は守りを固めるってことで引きこもってる。

それも直接交流のないクラスメイトたちにとって、無反応に見えた理由かな。

「それで、こっちはどう? 何かあった?」

ぼろが出る前に話を変えるために聞いたら、ネヴロフが換毛しただろうボリュームの減った体で迫って来る。

「そうだ、聞いてくれよ! マーケットで投光器作ったじゃないか。けど、学園に映写機ってのがあってさ!」

「あぁ、修理されたんだ?」

「えー、アズ知ってたの? もしかして知ってたから投光器考えたとか?」

ラトラスに指摘されて、そういう話したのはルキウサリア国王だけだと思い出す。

学園でもどれだけ広まってるかわからないな。

「えっと、実は王家方面から漏れ聞いた、かな」

「あのお姫さまか。確かに映写機の発表を行った集まりにも出てたって話だったな」

納得してくれたウー・ヤーの言葉から、どうやら映写機は発表の場が設けられたらしい。

錬金術についても話してたとか、クラスメイトも聞いたようだ。

錬金術科にも一機映写機が設置されたという。

「へー、もう触った? どんな感じ?」

「私たちが作った投光器よりもずっと綺麗に絵が映し出されるわ」

イルメが端的に教えてくれるけど、不服そうだ。

頑張ったのに、上位互換があったと言われたらそれもそうか。

「じゃあ、今年のマーケットは今から考えないとね」

「いっそ映写機解体してみる?」

「そうだな、精度をあげるほうがいいか」

「絵を描く素材をもっと探して吟味すべきよ」

単刀直入なラトラスに、ウー・ヤーも応じる。

けどイルメは投光器の質を上げる方向に持って行きたいようだ。

ただエフィとネヴロフはもっと別のことを考えたいらしい。

「二番煎じになってしまった以上は去年以上の注目は無理だろう。それに前例があることを全く考えていなかったのがそもそもおかしい」

「新しく考えるほうが面白いって思うんだよな。どうせなら今度は魔法なんて言われないものにしようぜ」

確かに新しいものを作るとなるとそれはそれで楽しい。

ただその分難しさもあるし、上の学年になった今、学科内も人員が変わってる。

「そう言えば、新入生がいるんだよね。何人かな?」

「人間五人、竜人二人、獣人一人の計八人だ。男女比は半々。王侯貴族が五人、富裕層二人、平民一人だな」

エフィが聞く以上の情報を教えてくれた。

僕たちの学年はバラエティ豊かというか、入学時は人間が僕しかいなかった。

下の学年には人間がそれなりにいるけど、上の学年と似たような比率だ。

「なんか獣人の下級生はロムルーシのお貴族さまで、すっごい偉そうなんだよね」

ラトラスが不機嫌そうに尻尾を揺らすと、ネヴロフも大いに頷く。

「そうそう、アズに用があるとかで、一緒に帰ってこなかったこと怒っててさ」

「えー? たぶんイマム大公関係だろうけど、怒られても困るよ」

実はユーラシオン公爵に誘われて、お断りをした時に教えられた。

イマム大公が錬金術科に親族を送り込んだと。

それで僕あてに手紙を言づけてるらしいということを、ユーラシオン公爵側の人員が伝言されたとか。

この辺り、外交に強いとそう言う情報も自然と入るものらしい。

それはいいんだけど、面倒ごとはやだなぁ。

「あとは、ニノホトの令嬢という者がいるんだが、あまりしゃべらないが言葉遣いは普通だったな」

「そちらはレーゼン先輩を捜していたわね。帝都へ行ったと言ったら項垂れたわ」

ウー・ヤーとイルメが話すのも、厄介ごと?

知らないふりでいいかな?

「他の新入生の出身国聞いてもいい?」

「ロムルーシ、ニノホト、タロール、ヨウィーラン、ネロクスト、帝都、レクサンデル」

エフィが指折り数えるんだけど、答えに気負う様子はなし。

だったらレクサンデル大公国出身だろう人物は王侯貴族じゃないとかかな。

そんな話をしてたら教室の扉が開く。

「む、全員いるな。よし、アズ。お前はこれだ」

「ネクロン先生、お久しぶり、で…………す」

「ごめんねー。はい、追加の課題」

珍しく教室に来たと思ったら、ネクロン先生の指示でウィレンさんが僕の机に本の山を築く。

「追加の課題って、まさかこれ全部ですか?」

「読んでレポートで済ましてやる。実際に授業してやる時間はない。その上で来月には夏至の音楽祭だ。集団舞踏の教本も入っているから自主練をしていろ」

「えぇ!?」

「そしてちょうど今日はこの授業の後に、就活生が魔力による変成を果たす金属の実験をする。お前も加われ」

ネクロン先生は再会の言葉もなく、怒涛の勢いでそう言ったのだった。