軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

313話:大公国での密会3

テリーと密会した翌日、エフィも戻って僕たちはまた観光に出ていた。

「結局家からの呼び出しなんだったの?」

お昼を露店で済ませつつ、僕はエフィに聞いた。

食べてるのはフランスパンのような硬いパンの輪切りに、うっすいハム、分厚いチーズ、そして果物のソースがかけられたもの。

パンの歯ごたえとハムとチーズの塩味、ソースの香りで結構いけるけど喉が渇く。

耐えがたくなったら、仕方なく酸っぱいぶどうジュースを飲むことになった。

僕の何気ない問いに、エフィもぶどうジュースをすすりつつ答える。

「錬金術で何したかの説明と、第一皇子との関係」

「関係も何もないでしょ?」

実際アズロスとして以外、会ってないし。

「そうだ、何もない。だからこそ、俺は第一皇子にいいように使われたという判断をされた。それなのに第二皇子が近づいてきて、また厄介ごとかと警戒されたんだ」

「第一皇子の件については、あなたのほうから絡んだんじゃなかった?」

当時を知らないイルメの言葉に、エフィ苦い表情で肯定する。

「そうだ。別に誘導されたようなことはない。完全に俺からふっかけた。だが、その後の対処があまりにも上手くやられたからな」

「家同士で何かあったのか?」

ウー・ヤーは学園関係では何も動きがないことから、大人の話だと理解したようだ。

「あくまで、俺の親というか、大抵の実態を知らない帝国貴族の考えはこうだ」

一度ウェアレルをチラ見して、エフィは前置きをする。

僕が止めないからウェアレルも聞かないふりで止めないようだ。

「喧嘩を売られて、これ幸いと錬金術と言って目くらましで俺を負かした。その上でそのことをネタに、ルキウサリア王室に譲歩を迫る。同時に監督できていなかった、帝都名家出の教員を理由に帝都で政治的に圧力。また、俺の家の派閥にも圧力をかけて優位を得る。結果として、ラクス城校入学の見込みのなかった第一皇子は、卒業相当の名目を手に入れて、留学を理由に立場のない宮殿を抜け出した」

「ごふっ」

ウェアレルがむせるのを見て、エフィは言いつくろうように続けた。

「ただのこじつけなのは、説明しました。第二皇子殿下の対応からも、不仲で立場がないなんて前提がそもそも違いますし」

「こほん、まぁ、あの方は誤解を恐れない方なので」

物は言いようだね。

というか、そう言う風に思われてたのか。

喧嘩を売られてこれ幸い、宮殿抜け出した辺りは合ってるね。

「錬金術で目くらましというのは悪意があるな」

「そうだよ、第一皇子はすごい錬金術師だぜ」

ウー・ヤーとネヴロフの抗議に、エフィが手を上げて止める。

「わかってる。その辺りの誤解も家では説明した。一年学んだ俺でも氷を作り、雷を作り、光を操れる。そのことでたぶん、父と兄は考えを改めたと思う」

「つまり、エフィは家に帰れるようになったの?」

ラトラスに、エフィは苦笑して肩を竦めた。

「それはまた違う問題だ。結局はレクサンデル大公に恥をかかせた。家も俺を卒業後に戻すことはできないとはっきり言われた」

どうやら今回の競技大会での結果があっても、一度ついたイメージが悪すぎる。

悪評しかない第一皇子に利用された、錬金術なんていう詐術に騙された、さらにはそれに頼って逃げた、派閥の長に恥をかかせた。

いいとこなしだ。

「俺がこの国に戻って上に立っても、誰もついて来ない。それはもう、学園でわかってたことだ。今回父と直接その辺りも話せた。きっと、準優勝という結果がなければ、話し合いの場さえもらえなかった」

エフィが僕らを見て一度言った言葉をもう一度言う。

「ありがとう。つき合ってくれて」

随分謙虚になったものだ。

それだけこの一年、いや、入学体験からの二年は相当辛い立場だったんだろう。

そんなところに歩み寄る人が現われた。

「まぁ、先日はどうも」

「これは、王女殿下」

エフィがかしこまるので、僕も同じように礼を執る。

話しかけてきたのはハドリアーヌ王国の第二王女ナーシャ。

実はここ、ナーシャのメモに書かれていた場所だ。

広場の名前があったから、広場の見える位置で食事をしてた。

「今日は競技の見学もなく? でしたら是非お話をお聞きしたいわ」

「いえ、その」

エフィが困るのは、大公国に立場がなくなってるとは言え、故郷に後ろ足で砂をかけるような真似はしたくないってところだろう。

何せナーシャの妹のユディ王女は、レクサンデル侯爵の孫娘で継承において争う相手だ。

ライバルのナーシャと仲良く話してるなんてことになったら、また家から叱られる。

ただナーシャは僕に目配せをしてきた。

これはエフィの立場わかってて困らせてるらしい。

じゃあ、やることは一つだ。

「お時間があるようでしたら、僕がお相手をさせていただきたい。ソーのこともお聞きになりたいことでしょう?」

「あら、嬉しいわ」

ユーラシオン公爵子息の名前にころりと標的変更したように見せかけるナーシャ。

僕は話し相手を務めるふりで、エフィに目配せ。

「みんなはわからない話もあるだろうから、観光を続けていて」

「そうですね、ここは私が付き添いをしましょう」

そしてウェアレルが残ることになった。

エフィは目顔で謝罪しつつ、案内を理由に観光のため広場を離れて行く。

しっかり離れたのを見て、ナーシャがウェアレルに聞いた。

「先日もいらしたわね。どなたかしら?」

「ご挨拶が遅れました。第一皇子殿下の家庭教師を務めさせていただいております」

元だけど戻る気満々だから僕も否定しない。

それを見て、ナーシャは頷く。

「では、お話はもう少し静かなところでいたしましょう」

移動する先はお高い喫茶店。

二階席があってバルコニーもある。

バルコニーには一席だけあって、姿は見えるけど外の喧騒で会話は近くにいないと聞けない場所だった。

それでナーシャはお付きを下げ、応じてウェアレルも下がってくれる。

僕だけがナーシャにお付き合いしてお茶をいただく風を装うことに。

「第一皇子殿下の家庭教師は、大変な魔法使いで九尾と呼ばれた方とお聞きしております。その腕はまだ健在でしょうか?」

「ウェアレルほど雷の魔法を気軽に扱うのは、錬金術科のヴラディル先生以外に知らないな」

双子なんだけどね。

軽く話すにはまず先日のことかな。

「ヒルデ王女の様子はどうかな? テリーの対応でまた荒れていたりは?」

「えぇ、王と王女の娘という血筋に誇りを持っていらっしゃる方ですから。兄よりも無礼だと周りに零したそうよ」

「ははは、離宮ではぼろが出なくて良かった」

実際は、ヒルデ王女のほうから僕を軽んじてほぼ接触なしだったんだけど。

「ですが、やはりユディ王女が焚きつけられたようですわ。レクサンデル侯爵としても今荒立てるのは得策ではありません。ユディ王女はこの競技大会の期間外出もままならないとか」

「それは残念だ。ずいぶん盛況なのに。ただそうなると、現状のレクサンデル侯爵の弱気は狙いどおりということかな」

ナーシャは微笑むことで肯定。

強気に帝国に屈さないと見せたヒルデ王女、柔和に争わないと見せたナーシャ。

どちらにも寄ることができなくて後手に回っているユディ王女というわけだ。

上手く立ち回るにはまだ幼いから、レクサンデル侯爵も大事な大会中は押し込めることにしたんだろう。

「ヒルデ王女はユディ王女が上手く動けないと見て、この競技大会にやってきたのかな?」

「いえ、それがどうも違うようなのです」

今回ナーシャが来たのはヒルデ王女の動きを警戒したからだ。

そこにちょうど僕と会える場所としても価値を見出した。

つまり、ヒルデ王女には独自の目的がある。

「以前、泊まっておられた宿に現れた、ニヴェール・ウィーギント卿を知っておいででしょうか?」

「…………ちょうど、ここへ来る前の町で見たよ」

「そうでしたか。どうやらその方とお会いするためにここへ。すでに何度となくお会いして何やら話し込んでいらっしゃる様子だとか」

僕がニヴェール・ウィーギントの名に警戒をしてしまうのは、ファーキン組の犯罪者を引き抜いた動きがあるから。

そして離宮でも、ヒルデ王女を使って問題を起こそうとしている前科のためだった。