軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

276話:虫捕りダンジョン1

翅をフィルム代わりにしようと決まった翌日、僕たちはダンジョンへ挑戦することになった。

学園を中心に発展した都市から北東、ちょっと山中にわけいる形でダンジョンはある。

道はきちんと舗装されていて一本道。

学園から専用の往復馬車も定期運行。

学習専用の施設はもちろん、宿泊、治療、素材加工に訓練場まで併設されている。

「…………お金かかってるなぁ」

僕の感想に、隣でラトラスも頷く。

「そこらの村よりずっと設備が揃ってるよね」

「なんか作ったって感じが強いな」

ネヴロフが言うのもわかる。

都市計画のような、配置が決まっていて建てたような印象を受けるんだよね。

妙に整っていて、人々の生活と共に広がった自然さがないっていうか。

だからこそ僕からすればレジャー施設にも見えた。

「道の突き当りの砦がダンジョンなのでしょう? 管理が行き届いてるのね」

「故郷にも霊堂と呼ばれるダンジョンはあったが、ずいぶんと雰囲気が違う」

イルメとウー・ヤーは、知ってる地元のダンジョンを比較してるみたい。

「兄から聞いたが、ここのダンジョンは内部も整えられている完全人工ダンジョンらしい」

エフィは卒業生情報を教えてくれた。

そしてさらに事前情報が別から入る。

「各階層に必ずセーフポイントと脱出機構が設けられていると聞くな」

「えぇ、ダンジョン内部には巡回もおりますので、助けを求めることもできます」

乗り掛かった舟とばかりに、ついて来てるソティリオスとディオラだ。

やる気満々でダンジョン用に装備も整えてここまで来てる。

さらには大人数だと邪魔だと言って、取り巻きは置いて来ているらしい。

「皆さん、離れないように。まずはダンジョン入場のための手続きをします。よく覚えておいてください。手続きをせずに入るようなことがあるとペナルティがありますから」

そして引率のウェアレルがいる。

なんか久しぶりにちゃんとした杖持ってるの見たなぁ。

僕たちもそれぞれ最低限の装備は整えてる。

軽くて丈夫な革の防具だけど、王侯貴族もダンジョン行くせいか、けっこうデザインが凝ってるのが貸し出されてた。

中には革を染色した物もあって、ダンジョン周辺の店でもディスプレイされてるのが見えるから、余計にレジャー施設っぽい。

「ソーは良かったの? マーケットあるし僕らにつき合うと時間取られるんじゃない」

目移りしてたらエフィに突かれ、確認を取ってくれと表情でお願いされた。

なので僕は一応ソティリオスに最終確認を行う。

「ディオラ姫が行かれるなら、守るためにも私が同行しないでどうする」

「私は言い出したことですし、ダンジョンでの自衛くらいはできるつもりですが」

この二人、自主的に同行してるんだよね。

学科が違うことは問題にならない。

そんな規定ないし、魔法学科や騎士科、平民出身者なんかは学科関係なく組んでダンジョンに入っている。

引率してくれるウェアレルは、自習扱いで錬金術科に関わらず同行してくれてた。

まぁ、実態は僕の護衛だけど、名目上は初めてのダンジョンに挑戦する学生を厚意から時間外に対応してくれてるって形だ。

あとセフィラ曰く登下校の見守りの人たちもついて来てるそうだけど、そっちはいない者として扱おう。

「手続きは八人分していますし、学内のことですから心配はいりませんよ、エフィくん」

ウェアレルがそんなフォローを入れている。

エフィとしては、学内だからと親の力関係を無視できない貴族社会知ってるのと、一度やらかしてる自覚もあるからだろう。

「それに、大丈夫なように備えることもダンジョン挑戦には必要な学びです。皆さん、事前に調べるよう申しつけた課題はできましたか?」

昨日引率をお願いした時に、ダンジョン挑戦に関する課題を出されてた。

同行するというからソティリオスとディオラも課題をするように言われてる。

僕はダンジョン浅層の環境について。

他は出現する魔物の特徴や、必要な防具や薬、武器と戦法から、地形や行程表の作成など。

全員に割り振って、課題を出されている。

「はい、全員ありますね。では、調べた上で備えを用意できましたか?」

急な課題で提出は紙一枚だけど、本題は調べた内容に対してどう対処したかだ。

「防具は学園での貸し出しから、適したものを選んでいます」

「武器も攻撃用は各自で用意し、解体用を学園から借り受けた」

落ち着いて応じるディオラに、ソティリオスも慣れた様子。

どうやら情報収集も対策もしっかりやっているようだ。

「え、俺…………魔物調べただけだ。何すれば良かったんだろ?」

「たぶん、すぐに確認できるメモでも用意すべきだったんじゃない?」

「えぇ、こうして提出してしまえば手元に残らないのでは、咄嗟に思い出せない時に困りますよ」

ネヴロフに言うと、ウェアレルが提出されたレポートを一旦返す。

地形はマップ化されていて、担当したイルメはきちんと貸し出しにあった物を用意していた。

矢を主武器とすることから天井の高さまでちゃんと調べてるのは、やっぱり実戦経験の違いかな。

「薬はこっちでも買えるため、一種類ずつまず用意しました」

「慎重さは必要なことです。ただ死ぬような毒持ちはいませんので、浅層では薬を用意するよりも怪我で動けなくなることを考慮して、手当の道具を準備するべきでしたね」

薬と言われて状態異常を警戒したウー・ヤーだけど、必要だったのは魔法の治癒に頼らない手当ての方法だったようだ。

「では、タイムテーブルについて。これは、はい。きちんと同行者と協議して決めたようですね」

ラトラスがまず地形を調べたイルメに相談し、魔物を調べてるネヴロフに相談しようとしたけど見つからず、僕の所に来て、結果ぞろぞろみんな集まっただけだったけど。

そうして話し合った結果、環境から蛇の魔物は冬眠する種類で今の時期脱皮しないとわかった。

カゲロウも時期じゃないから、バッタ狙い一択だということでタイムテーブルも組んである。

旅慣れた商人が親であるため、ラトラスは適宜休憩と探索を入れて帰りまでのルート設定もしていた。

「八人ですから、もう少し探索時間を取ってもいいですが、まずはこのタイムテーブルどおりにやるのでいいでしょう。必要と思った場合には、この休憩場所での時間で相談を」

そうして小一時間ウェアレルによるチェックが行われた。

本人も卒業生だからためになる話も多い。

そのせいか別学科らしい新入生たちが足を止めて聞いていたりもした。

入学式で挨拶もしたし、知ってる人はウェアレルが教員だと知ってるし。

あと、ユーラシオン公爵家のソティリオスやルキウサリア王女のディオラがいるのも足を止めるきっかけだったようだ。

ただ遠巻きにウェアレルの解説を聞いて、足りない装備を整えに行ったり、忘れないようにメモしたりしていて、こちらを邪魔する様子はない。

「これは、錬金術科だと思われてない?」

「いや、俺ら目立つしたぶん気づいてると思うぞ?」

ネヴロフの言い方に引っかかりを覚える。

「ねぇ、僕が留学行ってた間何したの?」

「うわ、ばれた。早いなぁ」

ラトラスが笑う様子から、どうやら何か隠し事があるらしい。

「大したことじゃないんだが、一度爆発事故を起こしたんだ」

「ネヴロフのいう蒸気の力というものを検証しようとしてのことよ」

ウー・ヤーとイルメもばれたら気にせず話し出す。

爆発という割に被害は軽微で怪我人もなかったそうだ。

「あのすごい音がしたやつか。しかも激臭がして騒ぎが起きたな」

まだその頃にはいなかったのかエフィが言う。

「臭いは別の薬品が漏れたせいでしたね。スティフくんが絵の具の調合をしながら眺めていたとか。屋外でしていたので臭いが滞留することもありませんでしたが。たまたま近くを通った生徒が爆発に驚いて騒ぎ噂が広がったようです」

ウェアレルが薬品での被害もないことを補足する。

ただどうやら刺激臭から毒物と勘違いされ、錬金術科が危険人物扱いされてるらしい。

実際絵の具の調合には劇物使うそうだけど、ステファノ先輩は爆発に驚いて保存瓶を破損させただけで、飛び散らずにいたため害もなかったそうだ。

「何をしてるんだ、錬金術科は?」

「他人ごとじゃないんだけどねぇ」

呆れるソティリオスにそっというのは、もっとやばい爆発物持ってるからだよ。

火をつける所が駄目なだけで、爆発自体はするものなんだから。

実はその部分取り換えれば使えるとか、危険すぎて言えてないだけでね。

「魔法も事故の報告は多いですし、錬金術も安全を確保する基準を設けなければいけないかもしれませんね」

ディオラのほうは運営側として受け止める。

今までなかったのはたぶん、安全考えて作られた昔からの道具使ってたから。

今回はやったこともない実験を、専用の道具もないままやって、蒸気圧を逃がす機構も作ってなかったことが爆発の原因だったそうだ。

そしてばれたからにはと、水蒸気で実験したことを嬉々として話してくるクラスメイト。

禁止されたらしいけど、危機管理もう少しどうにかしないといけなさそうだ。