軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

275話:マーケット準備5

何故かアクラー校の端にある錬金術科まで来たディオラ。

留学前に会ったけど、さらに成長して手足が目に見えて細く長くなってる。

成長期の繊細さがあって、儚げにも見える様子がお姫さま度を増していた。

そしてその姿に目が釘づけで動かなくなるソティリオス。

それはいつものことなんだろうけど。

問題は、ディオラもまた、僕を見て固まってること。

さっき喋ってたし、これってもしかして?

「貝焼いてた時の子だよな、アズ」

「お姫さまどうしたんだ、アズ?」

確認を含めて僕を偽名で呼ぶネヴロフとラトラス。

応じてディオラもはっとした表情。

あーうん、これはもう、ね?

「おい、こっちもおかしいぞ」

「そちらは触れるな、ウー・ヤー」

「アズは今回隠れないのかしら?」

ソティリオスに触れるウー・ヤーを止めるエフィ。

そして言っちゃうイルメ。

こっちの話も漏れ聞いたディオラは、もはや両手で口を覆って驚きを隠せないでいる。

ただ全員の視線を受けて、ディオラも来訪の理由をなんとか口にした。

「あ、あの、私は、ソーさんを呼びに、来たの…………ですけれど…………」

言いながら僕を見つめ続けるディオラ。

あと呼び方、さすがに同じ学年でずっとユーラシオン公爵令息呼びはしないか。

これは知らないふりしても問題があるな。

というか、すごく不思議そうに僕の髪見てるし、もう確実だ。

逆に黙ってるほうが問題出そうだし、ここは当たり障りなくいこう。

「久しぶり。入学のこと言ってなくてごめん」

声を出した途端、ディオラは花が開くように笑顔になった。

そして僕の前に駆け寄って来る。

「よ、良かった。入学できないのだとばかり!」

「うん、色々問題あったから、一部にしか知らせずにね」

「いいえ、そうですよね。そのほうがよろしいと思います。ですが、ひと言お聞かせくださっても」

「本当ごめん。後で改めて謝るからさ、今はソーのほうを」

「あ…………」

涙浮かべるほど喜んでくれるのが申し訳ない。

一度入学を誘われて断りもしたし、二度めは入学体験で問題になったし。

そして卒業相当と認められはしたけど入学はしないって言ってある。

つまりしっかりディオラを騙すことしてたんだよ。

本当に悪かったとは思うけど、今謝るにはソティリオスがね。

すごい驚愕の顔してこっち見てる。

僕と目が合うと、ずいっと距離を縮めて来た。

「…………アズロス、ディオラ姫と知り合いだったのか?」

「えっと、帝都で数える程度、顔を合わせただけで、知り合いって言っていいか」

「え、えぇ。帝都で幾度かお話をする機会がありまして」

「錬金術趣味にしてたから、学園目指してみないかって声かけてもらって。けどその時は行けそうになかったから断ったんだよ」

僕が本当のことを混ぜつつ言い訳をすると、ディオラも合わせてくれる。

「だから心配してくれてたみたい。けど、言ったとおりあまり公にしてなかったからね。言ってなかったし、あまり顔を合わせないようにもしてたし」

「あ、そう、ですよね。私がお側にいては、ご迷惑ですよね。せっかく入学なさったのに」

ディオラも気づいてしょんぼりしてしまった。

僕が第一皇子と知ってる人を避けてたのがわかったからだろう。

ただ、ちょっと不思議そうにソティリオスを見る。

「もしや、留学で親しくなったというのは?」

「あぁ、このアズロスだ」

「まぁ…………」

ちょっと困った顔のディオラだけど、そうなるよね。

一緒に馬車乗ってルキウサリアに行ったこともあるのに、完全に僕のこと眼中外だったんだから。

「なんか反応おかしくないか? 公爵令息を残念なもの見るような目してるぞ」

「もしかして、ソーもアズと会う機会があったのではない?」

率直にいうウー・ヤーに、イルメが正解を言い当てる。

けどそれで思い出されても困るんだよ。

「僕のほうからは目立つ公爵令息は見てわかるけど、ソーからしたら大量にいる中の一人だ。僕から声かける立場でもなかったし。覚えてなくてもおかしくないよ」

親同士が政敵だからね、嘘は言ってないけど有象無象として気にしないでほしい。

「何かやらかせば目立つが、アズもさすがに帝都ではしてなかったんだろうな」

ちょっと、エフィ酷くない?

「あぁ、帝都だと肩身狭かったみたいだもんな」

「こっちきていろいろできるの楽しいよな」

ディンカーとしての動きを知るラトラスと、ネヴロフは故郷とこっちでできることの幅が違うからこそかな。

そんな僕たちの様子を見て、ディオラは安心したように微笑んだ。

「仲がよろしいのですね。一緒に錬金術ができる方ができたのですね」

「うん、楽しい」

「良かった…………」

思ったより心配されてたようだ。

「そんなに家の状況が悪いのか、アズロス?」

ソティリオスが真面目な表情で聞いてくるけど、目がちらちらディオラに引き寄せられてる。

留学でロムルーシいってた僕が久しぶりなのは当たり前。

だけどソティリオスは同じ教養学科で同じ学年なんだから、毎日会ってるだろうに。

さすがに錬金術科の僕たちの視線を一身に受けて、自分の挙動不審を自覚したようだ。

ソティリオスは背筋を伸ばして立ち、ディオラを見ないようまっすぐ前を向く。

それはそれで挙動不審なんだけどね。

「今すぐどうこうって話じゃないから家のほうは大丈夫。それより、ソーを呼びに来たんじゃないの?」

「そうです。クラスの方が、マーケットで持ち込む品について相談したいと」

「それでお姫さま一人こんな所に?」

ラトラスが言うと、ディオラはあいまいな笑みを浮かべるだけ。

「…………浮気者もそれを唆す者も最低だわ」

「さすがに外野が言うことじゃないだろう」

察した様子で顔を険しくするイルメにウー・ヤーが釘を刺す。

半年いなかったのに、ソティリオス周辺の三角関係は聞こえてるらしい。

そしてさすがにそこまで言われるとソティリオスも慌てた。

「か、勘違いをするな! そんなことは何も!」

「そうです何もありません」

大いに頷くディオラに、少なからずショックを受けるソティリオス。

「その、こちらもマーケットのために、ダンジョンに向かう準備がありますので」

エフィが貴族らしく場を濁すように動いた。

もちろんディオラも乗って、ソティリオスとのあらぬ噂から話を変える。

「それはお邪魔をしてはいけませんね」

「元はと言えば入学伏せてたアズだがな」

「それは本当にごめん」

「いえ、理由があることはわかっています」

ウー・ヤーに言われて謝ると、ディオラが慌てた様子で首を横に振る。

けどやっぱり言ってほしかった雰囲気はある。

そんな様子にラトラスが呟きを漏らした。

「アズの人脈広いんだか狭いんだか」

「そういや、知り合いって言われてるのお姫さまが初めてだな」

「あら、言っていないだけで親類くらいはいるでしょう?」

ネヴロフに、イルメが貴族の血脈の広がりをわかっているからこその反応。

そんな詮索をエフィが手を打って止めた。

「事情はそれぞれだろう。ともかくまずはダンジョンの魔物の種類を調べないと」

「でしたら、現在確認されている種については私がお答えできます」

嬉しそうにやる気を出すディオラに、ソティリオスも知ってることを教えてくれる。

「私たちの学年では入場制限がある。より深層であれば上級生の同行が必要だ」

「細かいことはまだ知らないなぁ。トンボとか透明な翅を持つ虫の魔物っている?」

「でしたら、カゲロウや白いバッタの魔物が浅層にもおります。深層では翅がないものが多いと聞きますね」

ディオラはしっかり勉強していたらしくよどみなく答えてくれた。

なので他も色々聞き出すと、虫の翅以外にも透明でそこそこの素材があるようだ。

「透明でほどほどに丈夫という条件なら、大蛇の魔物の抜け殻でも使えるかもしれません。薬用として採取されますが、紙のように薄く、ガラスのように光を通し、そしてぴんと張った状態でなければ刃を通さない丈夫さがあるそうです」

素材としての特性もしっかり、さすがだ。

それにクラスメイトたちも感心する。

友人として誇らしく思って頷くと、横でソティリオスも同じことしていた。