軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

272話:マーケット準備2

ルキウサリアで学生をしてるから、帝都の流行に疎いのはわかる。

逆に、学生の中でも帝都出身なら知ってるし、身内から頼まれてこっちで購入してる人もいた。

ただ今の錬金術科に帝都出身は僕とラトラスだけ。

ラトラスと交流が薄い先輩は、錬金術を使った酒とは知らずにいたようだ。

「パトロンが欲しくはありませんこと?」

そうラトラスにいうのは貴族令嬢らしい上級生。

ただ流行おくれの先輩にウェアレルが釘を刺す。

「すでに帝都で皇帝のサロンに招かれるほど。今さらですよ」

「あら、違いましてよ。私はラトラスに言っているのです。あなたが技術供与で名を上げるなら、私がパトロンをして差し上げると言っているの」

つまり引き抜き、というか、ラトラスにモリーの商会抜けて技術盗んで持って来いってことだよね。

あまりな誘いにラトラスもげんなりした様子だ。

「そんな適当すぎる誘い、何も美味しいところないですよ」

「あら、資金も伝手もないあなたに私がそれらを提供して、ウォルシアンで錬金術師として名を上げるために諮ってあげようというのよ」

「いや、どうやって売るとか、どれくらいの設備費がかかるとか何もわかってないのに言われても。思いつきで言うにしても現実味なさ過ぎです。ワンダ先輩、商才ないですよ」

ラトラスにはっきり言われて、ワンダ先輩とやらは唇を噛んでそっぽを向く。

名前と縁深いと思われる国名で、入学前に貰った名簿で素性がわかる。

ワンダ先輩は西方の主要国であるウォルシアンの侯爵の娘。

ただし庶子で、ラクス城校卒業の名目が欲しかったタイプの学生だ。

入学してから錬金術にはまり、化粧品の開発をしているとか。

ただ商品になるほどのものは完成してないらしい。

「それにパトロン頼むなら、アズのほうがずっと…………」

ちょっとラトラス、僕ディンカーじゃないんだから。

ただ通じるのは僕とラトラスと事情を知ってるウェアレルだけだ。

そう思ったのに、ウー・ヤーが大きく頷く。

「あぁ、あの帝都の公爵のところの引っ張ってこられるアズのほうが確かだな」

「いや、皇帝が目をかけているならユーラシオン公爵家は。いくら嫡男の友人とは言え」

そして帝国の内情を知ってるエフィが訂正を入れる。

「「ユーラシオン公爵家の嫡男?」」

なのに喧嘩してた二人が反応してしまった。

「ひっこめ、オレス」

「黙れ、ジョー」

愛称から想像できる名前と仲の悪さでこっちも身元特定。

オレス先輩が上級生で、ヨウィーラン王国の男爵令息。

トリエラ先輩と同じ国、つまりは貴族が絶対という国の人だ。

「お前みたいな田舎貴族が欲を出すべきではないな」

「大して変わらないだろ盗人のくせに澄ましやがって」

ジョー先輩が盗人呼ばわりされるのは、国同士の争いから。

ナザリオン大公国出身で、ヨウィーラン王国に戦争をしかける側。

あと、王国を乗っ取ってできた大公国だからだったっけ?

学生同士は大人の事情とは別にいたいんだけどな。

「私が先だ。オレスが下がれ」

「俺が先だ。ジョーはお呼びじゃねぇ」

「ふん、君がユーラシオン公爵家に縁故もっても生かせやしないというのに」

「そんなのお前もだろ。碌なこと考えないくせに知ったかぶって」

「なんだと? 私のほうが伝手を上手く使って大成できるんだ」

「はん、上手くいった試しなんてないくせに良く言うぜ」

勝手に喧嘩するのはいい、うん、どうでもいい。

けど、勝手に僕どころかソティリオス巻き込むつもりなのはいただけない。

「なぁ、なんかアズの目据わってないか?」

「礼儀もなければ弁えもないようだから当然ね」

素直に疑問を口にするネヴロフに、呆れた様子でイルメが応じた。

一応先生たちのほう見ると、三人揃って何もする気はないと目顔で答える。

まぁ、揃って平民出身だしね。

貴族同士の面倒ごとに首突っ込んでもまず聞かない生徒っぽいし。

それじゃまず、ひと言。

「先輩方、今はマーケットの話し合いです。くだらない話は他所でやってください」

「くだらない? ユーラシオン公爵家のことをなんて言い草だ」

「肝が据わってると聞いていたがただの世間知らずか。しょうがない」

変な誤解をされたな。

しかも今のが紹介なんかするわけないだろって含意、当の本人たちが気づいてない。

ワンダ先輩でさえ気づいた様子で呆れた顔してるのに。

だったらもっとはっきり言わないと駄目か。

「これは失礼。最低限のマナーを知っている方と思いましたが、挨拶もできない子供にも劣る方々でしたか。それでは言っても詮ないことですね。まずは卒業できるかどうかに専心なさるべきでしょう」

にこやかに言って見せると、喧嘩を売られたのはわかったらしく気色ばむ。

けど、喧嘩を売って来たのはそっちなんだよねぇ。

まずは挨拶、そして次の約束。招かれるほどの関係性を築いてからが本番というもの。

貴族として繋がりが欲しいなら、まず僕にそうして接するべきなんだよ。

「何故僕が、礼儀も知らない、無礼なだけなあなた方を友人に紹介すると思い込んでいるのですか? それとも、僕が従うべきだと根拠もなく盲信なさっている?」

今後の関係を思うとこういう言い方は角しか立たない。

けどここで無視すると、勝手に僕の名前出したり、僕を訪ねて来たソティリオス捕まえたりしそうだし。

「家も財産も継げないなら継げないで、まず自分で身を立てる方法と作法を身につけてください。自立のためには自制も必要。そんな当たり前のこともできていないんですから、まずは目の前の問題を解決するくらいの実力もなしに、大言壮語も大概にしてくださいね」

相手に反論の隙を与えず言いたいことを言ったら、なんか拍手された。

見るとトリエラ先輩。

目が合った途端手を隠すけど遅いし、同じ国の貴族であるオレス…………でいいか。

先輩つける気もなくなったオレスに睨まれてる。

まぁ、自立で言えばトリエラ先輩のほうがしっかりしてるしね。

去年もマーケットの売り物作ったらしいし、ちゃんと考えて準備もしていたし。

「お前、大人しいふりして…………」

「別にふりじゃないよ、エフィ。今回は言わないとわからない人たちだなってだけで。言っても意味ない人もいるし」

宮殿貴族とかそのたぐいで、自分の利益のためにやってるからね。

端から僕を侮って利用して、直接会うこともないし、目的持って悪評流してるんだから道理を説いても意味がない。

だったらこっちも何も言わず利用するだけだけど、オレスとジョーはそれ以前だ。

「あらぁ、アズは気のえぇ子やのに怒らせて」

「こっちはお前たちのくだらない争いには慣れているが、新入生にまで迷惑をかけるな」

ヒノヒメ先輩に続いて、キリル先輩もオレスとジョーに苦言を向ける。

それまで黙ってたネクロン先生は、盛大に溜め息を吐いた。

「意見出させようと思ったが、どうも上の奴らにその気はないな。だったらいるだけ無駄だ。アズ、お前の案に必要な人員だけ選び出せ」

「あの、僕まだ何も案があるとか言ってないんですけど?」

「現状、授業を受けつつ、期末対策もしつつ、考えるだけの余裕があるのが何故かお前だ」

何故かって…………まぁ、前世からの積み立てと、宮殿での幽閉生活で勉強はいくらでもやってたんだけど。

初めて受ける錬金術の授業も、天文学とか前世で触れて来なかったこと以外ならけっこう理屈わかるし。

「あと、お前一応長子なせいか命令し慣れてるからな。指示役に立つのにちょうどいい」

やっぱり皇子らしいことしてないつもりでも、上から言うのが身についちゃってる?

僕ってそんなに偉そうかな?

ちょっと悩みそうな僕を気にせず、ネクロン先生は指を立てて続けた。

「目新しくて、今あるもので賄えて、低価格。これらができれば届く目標額だ。それで考えつくことはあるか?」

「…………ありますね」

「必要なのは誰だ?」

「トリエラ先輩とステファノ先輩です」

「え、何なに? 面白いこと?」

「わ、私?」

名指しすれば、今まで見向きもしなかったステファノ先輩が反応する。

そしてトリエラ先輩も予想外らしく慌て出した。

「あとは作業する人手と小雷ランプでなんとかできると思います」

「絵を描くのと、料理をするのと。大まかに作ったものを販売するのか?」

ネクロン先生に聞かれて、こっち風に表す言葉を考える。

「錬金術を使った見世物をやるつもりです。魔法でもできない錬金術ならではの見世物を」

その後、置いて行かれることになった先輩は、興味を持つ人、手伝いに否やはない人、そして慌てる人の三者に別れたのだった。