軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

258話:ルキウサリアへ復学3

船と馬車で一カ月半かけてルキウサリアへと戻る。

道中、冬に向かう季節の変化を感じる余裕はあまりなかった。

行きでは魔物に襲われ、殺人現場を見つけ、さらには誘拐事件にまで巻き込まれた。

そのせいで帰りには、ルキウサリアから護衛隊が寄越されていたんだ。

ことがもう数カ国を巻き込む事件になってるし、ユーラシオン公爵はルキウサリア王国と足並み揃えて動いてる。

だから被害者でユーラシオン公爵子息で、ルキウサリアの学生というソティリオスのために、帰りには堅い守りが用意されてた。

(家庭教師ヘルコフの後ろに従う騎兵たちは主人のための護衛です)

(いや、うん。連絡するたびにレーヴァンが面倒ごと起こすなって返して来てたしね。予想はしてたけどさ)

小型伝声装置を使った時には電報なみに文字数少ないのに、必ずひと言送って来るんだよ。

主体ソティリオスで、情報源はイマム大公なのに。

運よく埋もれてた錬金術とか、歴史とか知れたのに。

まぁ、イマム大公とナーシャから問い合わせあるのは確定なんだけど。

(主人がファーキン組を潰すため動かないことを目的として、迅速にルキウサリアへ帰還させることを目的としています)

(あ、そっちか)

あれは向こうが勇み足で乱暴なことしたから、足元掬えるなって動いただけなんだけど。

それに他国で動いてる犯罪者組織だから、本当に潰すなら国動かしたほうがいいし。

僕はもうノータッチのつもりだったよ。

「それではユーラシオン公爵令息はこちらの馬車へ。ご学友も確かに寮へとお送りします」

「頼んだぞ」

ルキウサリアの学園がある街の前で、僕たちは馬車を移動する。

お互い別々の行先になるからだ。

「アズロス、今回は本当に助けられた」

「僕としては収穫あったし、いいもの食べられたし全然」

「現金なのだか無欲なのだか、お前はよくわからないな」

いやぁ、ロムルーシではけっこうな出費を肩代わりしてもらってると思うんだけど。

それに秘宝も見せてもらえたし、僕が目立たないための盾にもなってもらってたしね。

ソティリオスは意を決する様子で、僕とは別に目を向ける。

「…………貴殿にも世話になった」

言うのはヘルコフ。

僕を送って行く名目で、同じ方向だからと同乗する予定になっていた。

「それは殿下にお伝えしても?」

「違う。個人に対してであって、それ以上ではない」

すごい嫌そう。

どれだけ嫌われてるんだか。

いや、気づかれるのも困るから、悪い印象強くていいんだけどね。

考えてたらソティリオスが耳うちしてくる。

「あの者から皇子のオートマタというものについて聞きだせないか?」

「えー」

「興味あるだろう?」

「ないとは言わないけど、相手が相手だし無理だよ」

「それを、私を前に言うか」

「だって同じ学生でもないんだし」

「む、そうか。そうだな」

適当に誤魔化したら納得してくれた。

実際は皇子僕だから探るも何もないんだけどね。

ソティリオスならルキウサリア王室の伝手から探ったほうがいいとは思う。

言わないけどね。

ユーラシオン公爵が口挟んできたら面倒だし。

「そうだそれと」

「はいはい」

今度はなんだ?

「錬金術に興味がわいた。時間が取れた時に錬金術科に訪ねて行ってもいいか?」

「本気? 別にいいけど、僕より身分気にしない学生ばかりだよ?」

「…………それこそ本気か?」

「半年で学園の教養科目どれだけ身に着いたかによるけど。無礼打ちしないでいてくれるなら、教室には来てくれて構わないよ」

「教室限定か。他は何処が駄目なんだ?」

「実験室。錬金術科の共有だから、誰がどんな実験してるかわからないし」

セフィラのこともあるから軽く脅すと、ソティリオスは何かを思い出す顔になった。

もしかして情報技官たちが伝声装置隠した時のことでも思い出してる?

「それで構わない。ラクス城校に用事のある時には、アズロスも私を呼んでもくれていい」

「さすがにそこまでは…………」

「また魔法学科相手にやったような騒ぎを起こすつもりか」

「それは相手の出方次第かなぁ」

本気なのに、呆れた顔をされた。

「目立ちたがりでもないくせに、存外やることが派手なのはなんなんだ?」

「いやぁ、結果そうなるだけで、別に派手にしてるつもりないんだよ」

「結果派手になる範囲でことを解決するから派手にしかならないんだ」

「はい」

指差されてまで指摘された。

否定できないのは、思い出せるのが洞窟のガス溜や牛の魔物の対処に盛大に燃やしたから。

あれは確かに派手にしかならない。

もしかして一番地味な解決って、オートマタの電源落としたことかも。

「どうした、急に黙って」

「いや、イマム大公と関わった部分は、あちらの問題ってことで濁したけど、先生に留学中のこと突っ込まれたら、なんて言おうかと思って」

「イマム大公のお家のことは、何処まで口にしていいかはすり合わせをしただろう。他の部分は何も考えてなかったのか?」

「イマム大公のお家騒動のところは言わずに、やったことはそのまま言う気だったね」

「学習成果として、それはどうなんだ?」

「そもそも錬金術科ないところだから、錬金術で魔物を家畜化できる可能性があるってわかっただけでもいいと思うよ。あと、塔の給水システムとか」

使える所だけ伝える形を考えてた。

魔物の家畜化も個人でやって成功一歩手前まで行ったんだったら、ルキウサリアで国にも報告あげれば時間かけて安全に完成させられる可能性はある。

そこは封印図書館の錬金術師やってないんだよね。

水底に封印して、水耕栽培や魚の養殖はしてたけど、畜産はさすがにしてなかった。

「錬金術科の教師は、それを理解できるか?」

「できると思うよ」

「そうか、それほどか」

「引き抜きやめてよ。一人で手回らないって言ってたんだから」

言ってみたら、ソティリオスが肩を掴んで来た。

「なら、アズロスなら引き抜いてもいいのか?」

「へ?」

じっと待たれる。

これは、返事すべきかな?

「無理」

「少しは考えろ」

睨まれた。

考えても無理なものは無理なんだけど。

そもそもアズロスが卒業後は消える存在だ。

期限が決まってるからこそできる二重生活なんだし。

今回の留学もだいぶ無理を押し通したからできたことで、その後はない。

「やっぱり無理」

「嫌ではなく、無理か」

「うん」

ソティリオスは眉間に皺を寄せたまま手を離す。

「性急すぎた」

「だろうね」

肯定しただけでもう一度睨まれる。

けど本当に性急すぎると思うんだよ。

僕の身分を横においても、ソティリオスはユーラシオン公爵家を抜ける。

一からのスタートで、設備を準備する必要のある錬金術師を抱えるなんて無理だ。

「それはそれとして、錬金術科には行くからな」

「はいはい」

話を切り上げる雰囲気になって、僕はなんとなく片手を上げた。

「またね、ソー」

「あぁ、また」

ちょっと友達っぽい別れ方をして、偽りの身分上ソティリオスが発つのを見送る。

そうして僕たちが振り返ると、護衛隊の人が案内に立った。

けど行く先は見える場所に用意された馬車じゃない。

見えない所に隠された、お忍びの馬車へと連れて行かれた。

「お帰りなさいませ、ご主人さま」

そして開かれた馬車の中には、ノマリオラが待機してる。

うん、半年ぶりの満面の笑みだ。

扉を開けた護衛隊に扮してただろう兵士が、口開けて見惚れるレベル。

けど目立つからさっさと乗り込まきゃ。

「ノマリオラ、これ、行く先は王城で合ってる?」

何も言わずに走り出した馬車に揺られ、状況確認をする。

「はい、着いてからの段取りをご説明するために僭越ながら私が」

王城に用意された部屋で身支度整えるようにと言われてるそうだ。

髪を染めるための道具もノマリオラが持参してくれたらしい。

「すぐにご主人さまからお話が聞きたいとルキウサリア国王のお申し出です」

うーん、話す内容考え直さなきゃいけないと思ってたのに、こっちが先か。

どう説明したものか、そのまま話して一度様子見してもいいかな?

八百年前の天才から枝わかれした技術の伝播なんて、ルキウサリア国王も認知していないだろうしね。