軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

187話:錬金術科の新入生2

錬金術科の五人で図書館へ行きたいと言ったら、テスタの助手であるノイアンを引率に、教会施設へ行くことになった。

「ここの閉館時間の他にも、街の門の開閉、そして寮住まいの学生には門限もあります。説明は静かに一度で済むよう聞いてください」

「「「「「はい」」」」」

天井の高い平屋という感じの図書館は、教会自体とは廊下で繋がってる。

内部の装飾も教会の一部であることがわかるもので、厳粛な雰囲気が漂っていた。

本棚が並んだ図書館の中を進むノイアンが案内したのは、書架や書見台から離れた小部屋。

中に入るとすでに書籍が積まれている。

(走査結果、錬金術関連の書籍です)

(早いって。説明聞こうよ)

セフィラがフライングする中、ノイアンが説明を始めた。

「帝国第一皇子殿下が留学にいらっしゃっていることは知っているでしょう。殿下は留学の上で図書館利用をご希望なさっています。それを期して国内では錬金術関連の書籍をこうして閲覧しやすいよう集めているんです」

どうやら他の利用者と離すように、小部屋へ集められているのは僕のためらしい。

誰も読まずにしまい込まれたり、行方不明だったりしており、保存状態が悪い本は優先で補修作業も行われているとか。

「第一皇子殿下はお忙しく、図書館を回ることも現状できておりません。そのため学生のためとなるならと、ご自身より先に閲覧を許可してくださいました」

「やっぱりあの皇子さますごいな」

ネヴロフの一言にノイアンが反応し、僕を見ようとして思いとどまる。

「ま、まるで知っているような言い方ですね?」

「うん、じゃなくて、はい。俺の村に滞在してて、話したことないけど皇子さまが残した錬金術触って勉強したんで」

ノイアンくん、何をメモしてるのかな?

あそこで作ったものはこっちで再現するの無理だからね。

そんなこと思ってたら、ウー・ヤーまで妙なことを言い出した。

「帝国の皇子、それがアズの伝手か?」

「え、いや、まさか。知り合いの知り合いに頼っただけだよ」

僕は下級貴族の設定だから、皇子となんてまさかまさか。

それに実際僕がどうこうじゃなくて、執事のほうに確認したら王城に上げられて、事情知ってるノイアンが派遣された形なんだよね。

うん、知り合いの知り合いで嘘はいってないはず!

「ノイアンさま、これらの貸し出しは可能なのでしょうか?」

イルメが立ち振る舞いから高位の者として扱うらしく丁寧に聞く。

「一度に三冊までなら、貸出期限を設けて持ち出しは可能です。汚損の場合は程度により賠償が課されます。…………保管に不安がある場合は通って読むほうが確実でしょう」

僕以外全員が渋い顔したせいでノイアンが付け加える。

僕が気にしないのは皇子だからじゃなく、手を触れずに内容を知ることができるからだけどね。

「爪切ってくればよかったぁ。だいぶ古そうで触るのも不安になるよ」

ラトラスが言うと、ネヴロフも不安そうに自分の手を見る。

なので僕は二人を呼んだ。

「ここにはイルメのついでできただけだし。今後来ることがあった時の練習と思ったら? 気になる本捲ってあげるから、どれがいい?」

「アズは読まなくていいのか? だったら本のタイトルだけでも読んでもらえないか?」

僕の言葉を聞いて、ウー・ヤーまで寄って来た。

古い本だとルキウサリアの古語も使われているし、字体も装飾重視で現在一般的に使われている文字とも違っているのが読みにくいみたいだ。

「図書館であるならば、辞書はございますか?」

「そちらの棚にありますのでどうぞ」

イルメは自力で読む気らしく、用意してあった辞書の場所をノイアンが答えた。

見た感じ帝国語への翻訳だからたぶん僕が読むためなんだろう。

「精霊、精霊…………」

イルメはさっそく目当ての単語を探し出したので、そっちは好きにしててもらおう。

僕はウー・ヤーたちにタイトルを読み上げた。

「でこっちが、あ、イルメ。これ、目次に精霊ってついてる」

「貸して、アズ!」

「早…………」

すぐさま手を伸ばすイルメに、ネヴロフが呆れる。

「正直、エルフってもっと神秘的な、こう…………知恵深くて禁欲的な…………」

「知識はある、欲深いわけでもない。そしてわかりやすく即物的だな」

何処情報かわからないことを言うラトラスに、ウー・ヤーがイルメを基準に頷く。

僕も知ってる純粋なエルフって軍人だから、神秘性は思い当たらない。

「錬金術にしても、俺が思ってたのと違うし。この三年くらい必死で覚えたのに」

「自分は錬金術自体帝国に入って学んで、ふわふわした話ばかりだったからようやく手応えを感じているな」

「俺はラトラスと同じくらいだな。っていうかウー・ヤーはそれでよく受かったよな」

これは思ったよりも、みんなの錬金術歴が短いな。

「イルメはいつから錬金術やってるの?」

「一年ほどです。そういうアズは?」

本を見ながら答えるイルメは端的に聞き返す。

「六歳くらいからだね。たまたま錬金術の道具をもらって玩具代わりにしてたよ」

「あー、やっぱりアズが一番長いよな。そんな気はしてた」

納得するラトラスとは対照的に、イルメはこっちを見て驚いた様子だ。

「道具から? 書籍は?」

「本読んで錬金術あるんだなぁってくらい? 道具で遊んで少しずつ詳しく本も読むようになったよ。やってみないとわからないこと多かったし、謎解きみたいで面白かったし」

「謎解き? 何それ?」

まず単語の意味がわからないネヴロフに説明しつつ、僕はセフィラに聞いた。

(暗号化されてるものある?)

(右手上から三冊目に)

僕は指示された本を手に取って確かめる。

ここにあるのはタイトルから錬金術とわかるものだ。

だからストレートに内容も錬金術的なものばかりで、ないかと思ったけどあったらしい。

捲ると、エメラルド板の内容を講釈している思想系の本。

その思想も難しく考えすぎてる風で、そこから神のいる別世界へ行くという不思議な話になっている。

「これとか幻覚剤っぽい薬の作り方が隠してあるよ」

言ったら全員寄って来た。

イルメはもちろん、ノイアンまで。

「全くわからない。自分が読み書きに不都合があるせいだけではないと思うが」

「いちおう習った内容だよ。ほら、天文学で星には数字があてはめられて、季節ごとに位置と方角が違うでしょう。出てくる単語を数字にして、季節から方角を考えるんだ。ここなんかは下から上に読んでみて」

解き方を教えると、四人は本にかぶりつきで謎解きを始める。

僕は解けてるから一度離れると、ノイアンが寄って来た。

「もしや、すでに全ての本の内容を把握されていますか?」

「この部屋にある分はね。全体はまた改めて来た時に調べるよ」

ノイアンは室内の本百冊ほどを眺める。

薄いものはノートくらいだし、手帳サイズの小さいものもある。

だから読みごたえとしてはほどほどの量だ。

そしてざっと見た感じ、帝室図書館に残されていたほど大掛かりな内容も見当たらない。

中には美味しい保存食の作り方が、科学的な理論で書かれた本もある。

前世でも液体窒素使うとかいう分子ガストロノミーってあったし、錬金術の分野と思っていいのかな?

「もしや、一歩踏み込むだけで?」

「さてね。深入りはしないほうがいいよ」

「は、失礼いたしました。師にはクラスメイトとは恙なくとだけ」

「そうだね、それがいい。ネヴロフの言ってた物は、地形ありきだから再現できないし」

「露見防止のため、接触は禁じられておりますので、本日のみご容赦を」

「案内役がいてちょうど良かったよ。一応取り繕うために本はいくつか借りて行くから」

ばれないよう小声でやりとりしてたんだけど、クラスメイトたちは全くきづく様子がない。

どころか、帰る時になって謎解き本として一冊を取り合うことになってしまった。

「もう、僕が代表で借りて、学校に持って行くから。全員いる中で謎解き。いい?」

そういう風に決めて、僕は言い争いを止めると、ノイアンがぽつりと呟く。

「やはりお一人振る舞いが違うような…………」

うん、もうちょっと子供らしく気をつけよう。

けどおもちゃを取り合うような喧嘩は止めないとね。